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世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


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第十話 存在しないレベル

アルトの街へ戻ったのは、日が沈む直前だった。


ゴブリン十五体。


その中には群れを率いていた上位個体も含まれている。


討伐証明となる魔石を受付へ並べると、ミリアは言葉を失った。


「……全部、三人で?」


「はい。」


レインが答える。


「怪我人は?」


「いません。」


「……本当に?」


ミリアは三人を順番に見る。


リリア。


ガルド。


そしてレイン。


確かに大きな怪我はない。


「信じられない……。」


周囲の冒険者も集まってきた。


「十五匹?」


「攻撃役、あの魔法使いだけだろ?」


「どうやったんだよ。」


さらに。


ガルドの冒険者証を確認したミリアの手が止まった。


「ガルドさん。」


「職業が……変わっています。」


「何?」


鑑定板へ冒険者証を置く。


光が走った。


【名前】


ガルド・バルガス


【職業】


守護騎士


酒場が静まり返った。


「守護騎士?」


「嘘だろ……。」


「上位職じゃないか。」


ガルド自身も、まだ信じられない様子だった。


昨日まで。


攻撃できない無能な重戦士。


今日。


希少職《守護騎士》。


一日で評価が逆転した。


「ガルド!」


早速、一人の冒険者が近付いてくる。


「うちのパーティーに来ないか?」


別の男も立ち上がる。


「待て。俺たちなら報酬を二倍出す。」


「Bランク昇格を狙ってるんだ。守護騎士なら歓迎する!」


昨日まで笑っていた者たちだった。


ガルドは彼らを見る。


そして。


「断る。」


一言だった。


「俺の居場所は、ここだ。」


レインとリリアの隣へ立つ。


誰も何も言えなくなった。


◇◇◇


その夜。


宿屋。


レインは一人、自分のステータスを見つめていた。


【名前】


レイン・アーク


【職業】


後衛


【表示レベル】


30


【ランク】


D


【攻撃】


E


【防御】


D


【支援】


D


何度確認しても同じ。


だが。


意識を集中すると、その奥に別の情報が現れる。


【内部情報】


実レベル:31


次レベル必要経験値:通常値


「実レベル……。」


聞いたことがない。


レベルとは、神々が人間へ与えた成長の尺度。


そしてこの世界では、五十が絶対的な上限とされている。


レベル50。


Aランク。


歴史に名を残す英雄たちの領域。


それより上など存在しない。


レインは考える。


(いや。)


(今問題なのはそこじゃない。)


自分の表示は三十。


昨日も三十。


今日も三十。


なのに内部では三十一になっている。


「壊れてるのか……?」


その可能性を疑った。


翌朝。


レインは一人でギルドへ向かった。


「レベル鑑定をお願いできますか?」


ミリアは不思議そうにする。


「昨日確認したばかりですよ?」


「念のため。」


鑑定石へ手を置く。


光が走る。


【レベル30】


やはり三十。


「変わってませんね。」


「そうですね。」


レインは苦笑して手を離した。


だが本人にだけ見える文字は違った。


【外部鑑定干渉を確認】


【偽装正常】


レインの顔から笑みが消える。


(偽装?)


自分で隠しているわけではない。


そんなスキルを覚えた記憶もない。


なのに。


世界そのものが、レインの本当のレベルを隠している。


◇◇◇


ギルドを出ようとした時だった。


入口付近で騒ぎが起きた。


「だから、もう来るなって言ってるだろ!」


若い男の怒鳴り声。


見ると、一人の少女が立っていた。


背中に弓。


しかし、その弓は古く、弦も傷んでいる。


「お願いします!」


「もう一度だけ!」


「絶対に当てますから!」


「何回言わせるんだ。」


男は吐き捨てる。


「弓使いのくせに、矢が当たらない。」


「お前なんか連れて行ったら、こっちが死ぬ。」


少女の顔が青ざめる。


周囲から笑い声が聞こえた。


「命中率最低の弓使いだ。」


「まだ冒険者やってたのか。」


「諦めればいいのに。」


レインは立ち止まった。


昨日までなら。


ただ通り過ぎていたかもしれない。


だが今は違う。


少女を見る。


青い文字が現れる。


【名前】


セラ・フィーネ


【職業】


弓使い


【現在レベル】


19


【命中適性】


F


ここまでは、周囲の評価通り。


しかし。


その下に表示された文字を見た瞬間。


レインは息を呑んだ。


【潜在才能】


★★★★★


【真の適職】


《天眼射手》


【固有能力】


《未来視》


【特殊特性】


現在の標的を狙う能力:F


未来の標的を狙う能力:EX


レインは数秒、意味を考えた。


そして気付く。


(そういうことか。)


彼女は。


今いる場所を狙っているから、外すのだ。


動いている敵の現在位置ではない。


敵が次に移動する場所。


未来を射抜く弓使い。


レインは少女へ歩み寄った。


「君。」


少女が振り向く。


「はい?」


レインは尋ねた。


「矢を放つ時。」


「敵が動く前に、次にどこへ行くのか分かることはないか?」


少女の顔色が変わった。


「……どうして。」


震える声。


「どうして、それを知ってるんですか?」


レインは確信した。


三人目。


いや――。


自分を含めれば四人目。


世界から才能を見落とされた者。


「セラ。」


レインは手を差し出す。


「俺たちのパーティーに来ないか?」


少女は呆然と、その手を見つめる。


昨日までなら。


レイン自身も彼女を「矢を当てられない弓使い」としか見なかっただろう。


だが今は違う。


無能なのではない。


才能がないのでもない。


ただ――。


才能の使い方を、誰も教えてくれなかっただけだ。


そしてレインは初めて思った。


自分が三度追放されたことにも。


もしかすると意味があったのかもしれない、と。

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