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今日も異世界ライフを満喫中  作者: ツヴァイ
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目を射す光が疎ましく、上掛けを引っ張りあげようとしたが、体が動かない事に気付いたユーリ。気のせいか花のような香りがすることも不思議に思いながらも、億劫そうに目蓋を持ち上げると目の前に紫色の瞳と薄く形の良い唇を嬉しそうに持ち上げるアンリがいた。


「おはようございます、ユーリ」


 微笑む美しい男性に一瞬分からなかったが、次の瞬間には昨日の事を思い出した。目の前の朝日に輝く銀色の髪を持つ美しい青年は成長したアンリで実は彼は精霊の王子であったのだと暴露した。そして、いつの間にかガンツとナンシーの許可を取り婚約した麗しの婚約者殿だ。


「………えっと…おはよう、アンリ」


「まだ早い時間ですよ。もう少し寝ていても良いですよ」


 どうやらユーリとアンリは一緒に寝ていて、アンリがユーリを抱き締めているようだとやっと気付いたユーリ。放して欲しくてもぞもぞと動くが、一向にアンリは拘束している腕を解かない。それどころか更に密着させようと動かす。ピッタリとくっついたアンリの胸からはいつもの花の匂いと規則正しい鼓動が聞こえる。まだ、寝ぼけ眼だったユーリはその心地好い音を聞きながら二度寝へと誘われていった。


 抵抗していたユーリだったが、直ぐにすぅすぅと規則正しい寝息が聞こえ始めたので、アンリは少し腕の力を緩める。そうしないとユーリのあどけない寝顔が見えないからだ。精霊であるアンリはあまり眠りを必要としない。だからユーリと同室になってからは夜な夜なユーリが眠りについたのを確認してから彼女の寝顔を見るのが、密かな楽しみだった。

 いつもキリッとした顔で生活するユーリだが、眠ると途端に幼くあどけない寝顔になる。それがなんとも守ってあげたくなるような気持ちにさせる。


 アンリはそんな顔をずっと見てきて、自分の物にしたならば、ぐずぐずに甘やかしアンリの事しか考えられないようにさせようと考えていた。


 最初からユーリはアンリの為だけの存在だ。ユーリはアンリの為だけに生まれ、アンリの孤独を埋める為に寄り添う存在になる筈だった。それは番とも魂の伴侶とも呼ばれる至高の存在。


 アンリはユーリが生まれるのを今か今かと

待ち望んでいたが、魔力嵐でユーリは手の届かない所まで流れていってしまった。それを知ったアンリは喪失感で気が狂いそうになった。だが、異世界を映す事のできる泉の存在を知り、毎日ユーリを眺めて過ごした。泉の畔でユーリの成長を眺めている時間が至福だったと同時にとても侘しくも感じた。家族となった者からは虐げられ、家政婦やまるで奴隷のような扱いに同級生などの同性から爪弾きにされ、異性からは過剰な好意を持たれ、苦労している姿に「何故、自分の傍らに居てくれないのか。居てくれたら、慰め、慈しむのだと言うのに」と何度思った事か。それでもユーリとアンリの間には抗いようのない壁が存在する。その存在を煩わしく思い、アンリは決意をする。


 世界を越える魔法の開発だ。魔力嵐で異世界に飛んでしまったのならば、故意に魔力嵐のような現象を起こし、ユーリを此方側へ引き戻そうと考えた。これには他の精霊達が諌めようとしたが、番と一時と離れていたくないと言う反論に黙る事しかできなかった。

 魔法開発は順調に進み、泉の畔に赴いては「もう少しの辛抱だよ」と言葉を交わす事のできないユーリと何より自分に言い聞かせる毎日を送った。それから程無くして魔法は完成した。早速、アンリは他の精霊が見守る中、ユーリを異世界からティエラへと移動させる事に成功した。


 但し、自分達のいる精霊界ではなく、人間界に送ってしまった。最初は焦ったが、親切そうなガンツとナンシーに拾われたのを見て、ほっと安堵の溜め息を漏らした。それからは異世界に来た最初は混乱しているだろうからと世界に馴染むのを待った。


 大分逞しくなったユーリに遂にアンリは自分が会いに行こうと決意した。だが、ユーリに警戒されない為に子供として会う事にした。番である事も大人である事も精霊である事も伏せて、ただのアンリとしてユーリと過ごした。その過ごす日々がとても楽しかった。勿論、ユーリと一緒に過ごす時間が愛しい事もあったが、なかなかどうしてユーリの周りの人々とも過ごしていて心地好かった。


 国の王太子や貴族連中の暴走がなければ、もう少し一緒に子供としていられたのに。彼等はユーリを精霊の寵児だと勘違いし、自分達の元に取り込もうとしていた。一度釘を刺したのにも拘わらず、それでもユーリへ手を伸ばして来た。これ以上汚れた手を伸ばすのを放置するわけにはいかなかった。


 自分の正体を明かす事で他への牽制とし、ユーリを自分の庇護下に置き、精霊の伴侶としての印も送った。これで名実ともにユーリは自分の物だ。


 健やかに眠るユーリの頬を一つ撫でる。自分が大人だと分かってもユーリはアンリへと態度はあまり変わっていない。それをとても嬉しく思った。他の男性のように拒否されない事、自分が彼女にとって特別だと感じる。それは自意識過剰かとふっと笑い、また抱き込んでアンリも一時の休息を取る為に紫色の瞳を閉じた。










読んでいただきありがとうございます。

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