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短いです(ヽ´ω`)
「強行突破か…」
「それ位しか思い浮かびませんが…」
ガンツとゴンザレスは真剣にナンシーの言った強行突破という案を検討し始めた。それをナンシーはニコニコしながら見守り、アンリだけがあまりの極論に思考を放棄し呆然としている。
「ふむ。冒険者から手練れを集い…」
「民衆を煽動しましょうか」
事態を大きくさせようとしているとしか考えられない彼等の思考に、そろそろ止めた方がいいかとアンリが口を開きかけた。
「話は聞かせて貰った!!」
自分達以外の声に振り向くと顔を凶悪にまで凄ませた王太子であるアーサーがお馴染みのウィルとフィーを伴ってリビングに現れた。ウィルとフィーは何故連れて来られたのか、未だに理解していないと顔に書いてある。
「なんで王太子が来るんだ?」
「暇なんじゃないですか?」
舌打ちしそうな表情のガンツと毒づくアンリに
「あらあら、お茶を用意しなくちゃ」
何故か嬉しそうにキッチンへと立ち上がるナンシー、
「面倒なのが来ましたね」
苦り切ったような表情を浮かべ、溜め息を漏らすゴンザレス。
「私の扱いが酷くないか?」
泣きそうな表情で項垂れる王太子アーサーにフィーが止めを刺す。
「ユーリの敵認定されているからじゃないのか」
ナンシーが追加でお茶を淹れ、アーサー達をテーブルへと誘うが、手狭そうだったので、近くにあるソファへと座る。
「それでユーリが拐われたという報告があったが、本当なんだな」
表情を引き締めたアーサーがガンツ達に問う。問う形になったが、実際は諜報員からの報告で真実であると知ってはいるが、念を押したに過ぎない。
「本当ですよ。ただ、自分達庶民では手の出しようのない相手、貴族様が相手とあっては取れる手段が限られる」
ガンツが腕を組んで椅子の背凭れに凭れる。
「ふむ。では、私も絡むとしようか」
「はい?」
アーサーが何気無く放った言葉にその場の全員が言葉を失う。それを気にする風もなくアーサーは自分で言った言葉に満足そうな表情で固まった皆を見る。
「そうだろう?このままでは精霊の怒りを買う。そうなっては、今のこの場だけの問題ではない。この国全体の問題なのだ」
アーサーの言葉に確かにそう通りだと思った。ユーリが貴族に拐われたが精霊からの宣戦布告がない今、この時間は事件が解決するまでの猶予と考えるべきか、こユーリ誘拐事件の対応の仕方を観察しているのか。
「そうね。この国の問題と言われても大きすぎて分からないけど、ユーリが無事に戻って来てくれるならなんでも良いわ」
ニコニコしながらナンシーがお茶を飲みながらのんびりと発言する。その姿はどう見てもリラックスしているのだが、誰からも何も言われない。
しんと静まった室内にユーリのお気に入りのお茶の馥郁たる香りだけが漂う。
痛いほどの静寂を破ったのはやはりナンシーだった。
「王子様も巻き込んじゃったし、やっぱり夜襲でもかけましょう。あ、私お弁当作るわね」
あまりの発言にぎょっとする一同を置き去りにナンシーは鼻唄混じりにキッチンでお弁当に作り出した。
「ここで論じているだけではどうにもならないだろう。とにかくその…」
なんて名前?とフィーがゴンザレスに視線だけで問う。それを汲み取ったゴンザレスがミディアス子爵だと教える。
「あそこか…」
今まで無言でアーサーの背後で立っているだけだったウィルが初めて口を開いた。一気にウィルに視線が集まり、ウィルが少したじろぐ。
「あそこの息子…ジョンと会った事があるが、あれは騎士には向かないですね。性根からして駄目です。怠惰の一言ですね」
ミディアス子爵の意向で息子であるジョンは騎士団へと入れられた。自分から率先して入団したわけではないので、甘やかされて育ったジョンは何事にもやる気がなく、入団して一週間で退団してしまった。しかもその退団するまでの間に色々とやらかしてしまっているのをウィルは知っている。大半が花街での不祥事だ。更に酒で騒ぎを起こして同僚と喧嘩。同僚に騎士として致命的な程の大怪我をさせた。そのどれもが親の力で揉み消した。愚息の対応をする親の気が知れない。
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