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本編と見せ掛けて語りだけ。
―――――――ずっと昔の話。
ある特別な子供が生まれた。子供は生まれ落ちた瞬間から子供に祝福し、色とりどりの精霊がお祝いの花を咲き誇らせた。
子供がぐずったりした時などはあやしたり、母親を呼んだりと甲斐甲斐しく世話をし、危ないものに近付いた時などは精霊が守り、惜しみ無い愛情を注ぎ、慈しんだ。子供の両親は最初こそ驚いていたが、子供を守ってくれている精霊に畏敬の念を持ち、それからは特に気にする事もなく子供を愛し、精霊と共に見守った。
時が過ぎ、子供が少年になる頃になると精霊が少年といつも一緒で自分達には聞こえない筈の精霊の言葉を少年は聞いていた。それを妬んだ村の子供達は少年を無視した。
更にその話が、子供達の親に伝わり、精霊を信奉する神殿へと伝わった。神殿にいる神官達は精霊の声を聞く少年の力を欲し、村に少年を連れに来た。
神官は精霊に愛された存在がいる場所は精霊の力の恩寵を受けて潤い、栄えると知っていた。その場所は精霊を崇める神官達が集う神殿でなくてはならないと考えたからだ。
少年と少年の両親と神官は話し合ったが、両親は少年と離れたくはないし、少年を取り上げようとする神官に最初は、精霊を信仰する神官に好意的だったが、神官の話を聞いているうちに不信感を抱くようになった。
神官は少年の両親の心境の変化を敏感に感じとり、その場は取り繕いはしたが、このままでは平行線が続くと考えた神官が痺れを切らせ、両親が見ていない隙に無理矢理少年を連れ去った。
事態に気付いた両親は少年を取り戻そうとしたが神官達が手を回し、両親を暗殺した。
そうとは知らない少年は神殿に閉じ込められ、毎日のように両親の元に返して欲しいと嘆いた。その様子に精霊達は少年を慰めていたが、少年が精霊達に神殿を出たいのだとお願いすると精霊達は少年を脱出させる為の手助けをした。
無事に神殿から脱出した少年だったが、神官服を纏った少年を不審に思った兵士に捕まった。
その情報はすぐさまに王まで伝わり、少年が『精霊の寵児』だと察した。王の命令で少年は迅速に王の前へと連れてこられた。
怯える少年を王は保護という名目で王宮の一角に監禁した。
少年は村に帰る事も両親の元に帰る事も出来ず、ただ毎日毎日泣き続け、食事も取らずに徐々に痩せ細っていった。
それでもいつかは、両親が迎えに来てくれるのではないかと必死に思い込み、それに槌り付いて生きていた。
そんな少年の様子に王は非情にも両親は殺されて、もうこの世にはいないのだから諦めろと言った。
少年の中での最後の希望が絶たれ、少年は死を選んだ。
少年が死んでしまった事を精霊は嘆き悲しんだ。王は少年の遺体を使えば、精霊をこの地に縛る事が出来るのではないかと考え、少年が暮らしていた王宮の片隅に放置し、それを餌に精霊を集めた。集まった精霊達の漏れ出た力によって国は栄えた。
暫く放置されていた少年の遺体は精霊の力によって生前の姿のまま時を止めていた。それを気味悪がったある王族が今度は少年の遺体を勝手に燃やしてしまった。すると途端に精霊の力がなくなり、長く栄えていた国は衰退していった。
同じ国に次の年にも特別な子供が生まれた今度は少女だった。その少女もまた、精霊と言葉を交わし、精霊と両親によって守られ、毎日平穏に笑顔で過ごしてした。
そんなある日、王家から少女を貰い受けるという書状が届き、両親から少女を取り上げた。王宮に連れてこられた少女は王族の一人である王子と対面し、一目で見目麗しい王子に恋をした。毎日のように愛を囁かれ、贈り物をされて、すっかり王子の虜となった少女は王子からの求婚に快諾した。盛大な結婚式を挙げる事は無かったが、少女は幸せを感じていた。
そんな少女はある日、王侯貴族達の話を聞いてしまった事から王子の態度は急変し、子供を産む事を強要された。
王侯貴族達の話は、衰退の勢いが止まらない国は、藁にも縋る思いで新たな『精霊の寵児』を探した。
国をあげての捜索に少女の存在を知った王家が少女を使って『精霊の寵児』を量産できないかと考えた。
『精霊の寵児』の子供が同じく『精霊の寵児』になるわけではないが、彼等は確率が高いかもしれないと言う理由だけで少女を縛りつけた、と言うものだった。
王子の熱烈な求婚も全てが『精霊の寵児』を量産する為にした事。少女は、その話を聞き、そう言えば結婚式を挙げていないという事実を思い出した。幸せの絶頂で特に気にしていなかったが、子供を産むだけの存在なら妻でなくても構わない。妾だって構わないのだ。
愛していた王子に裏切られ、彼等の思惑道理に子供を身籠った少女は泣き、精霊は慰めた。
精霊には見ている事しか出来なかった。迂闊に人の世界に干渉してはならないと精霊の王によって定められていた為だ。それでもなんとかしてあげようと少女に何か願う事は無いか、と問うと少女はこんな世界に生きていたくないと言った。
日に日に大きくなるお腹に比例して、少女の心は壊れ、狂っていった。
精霊はこれを聞き届け、少女と国を滅ぼした。精霊の王は定めを破ってしまった精霊に問うた。何故、こんな事をしたのかと。精霊は答えます。私達の愛した少女が望んだ事、私達が最初から少女を守ってあげていれば、こんな事にはならなかったのでは無いのかと。
悩んだ精霊の王は私達が愛した人間を守るようにと定めを変えた。
それからは一層愛し子の力が強くなり、また国に与える影響も強まった。だが、愛し子を狙う者は後を絶たず、時には売り買いされ、時には虐げられ命を絶つ者まで現れ、それに伴い毎年のように生まれていた寵児が間隔を空けるようになった。
数年に一人、数十年に一人、数世代に一人になり、やっと事の重大性に気付いた各国が寵児を見付けたらその国が保護をするように、そして、丁重に扱うようにと。
精霊の関心が薄まれば、ティエラが危うくなる。そうなってしまっては世界の均衡が保てなくなってしまう。だが、その考えた事も遅く、精霊が出した答えは「人は結局、自分達の事しか頭に無いのだ」と精霊は人と関わるのを極端にやめてしまい、ほとんど姿を見せる事はなくなってしまった。
それにともない精霊の寵児が現れる事はなかった。人々の気付きと決断が遅すぎたのだ。
そんな精霊が数百年ぶりに『精霊の寵児』を選んだ。それがユーリだった。今までの無関心が嘘のように精霊達はユーリを過保護に守り、溺愛した。
次の話に続きます。
読んでいただきありがとうございました。




