表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/77

男の見栄と女の意地、の話。

 男の見栄と女の意地、の話。


 男は見栄を張り、女は意地を張ると何処かで聞いた事があります。どちらにしても時と場合が大事で、往々にして失敗すると大惨事に繋がるような気がします。


 後に旦那様となる彼と二人で食事に行き、支払いをするかとなった時。この人にどう切り出そうかと思いました。

 先を行く彼は何というか、ここは僕が出しますよ、とか言いそうな雰囲気があったからです。私は自分の分くらいは自分で支払いたいなと思っていました。

 ですが、男の人のプライドとやらを拳で殴るような暴挙をしては駄目です。ですから彼の出方を伺う事にしました。


 彼の選択は[割り勘]でした。


 男の見栄なぞ全く関係なく、それを選んだ彼に対して私は好感をもちました。

 当然の如く奢って貰おう等とは、考えていなかったのですから。だからこそ、支払う時に[割り勘]と言った彼に幻滅はしませんでした。

 これを友人に話すと何故か皆、少々「えー?」と眉を潜めます。そんなに変でしょうか?

 働いていないのなら奢って貰うというのもありでしょう。が、懐に多少の余裕があるならば、その選択肢はないと私は考えます。女の意地とでもいいましょうか。奢って貰うのは申し訳ない気分になるのです。


 因みに彼が割り勘を選択した理由は、これから先もずっと会うたび奢るのは無理だ。ならば最初から割り勘にしよう。といったものでした。


 さて、これには一つだけ弊害がでました。

 何処かに食べに行くにせよ、思わず「高っ!」と叫びそうになるようなお店を選択する事ができません。そうなると美味しくお手頃な店を選ぶのは当然ではないでしょうか。


 ある夏の日、彼が鰻を食いたいと言った事がありました。が、割り勘である以上、自分の支払いは自分でする事になります。ですが給料日前の寂しいお財布の中身と相談した結果、鰻様は無理、と判断せざるをえませんでした。軽く「奢ってくれるなら」なんて言える筈もなく。結果、「他のがいいな」と言うしかありません。


 それから数年がたちました。

 彼は夏期休暇中に、後輩君と食事に出掛けました。で、帰宅後に何を食べたのかという話になりました。

「後輩に鰻を奢った」

 と旦那様が言ったのです。それを聞いた私は思わず、

「後輩君に鰻を奢るなら、私に奢るのが先じゃないの?」

 と、愚痴が口をついてでてしまったのです。何故後輩君になのでしょう。太っ腹だなと感心するのではなく、言い様の無い苛立ちに苛まれました。要は、なんだかんだと格好つけたとて羨ましいのです。旦那様の奢りで鰻を食べたという事実が。何故私にではないのでしょうか。

「だって鰻嫌いでしょう?嫁さんは」

「好きだよ。何で嫌いだなんて思うの」

 と言っても信じてくれません。旦那様の見解は至ってシンプルでした。


 前に誘った時に他のがいいと言った。つまり鰻が嫌いなのだろう。


 ……どうしたらよいのでしょうか。[割り勘]の弊害がこんなふうに現れるのだと、誰がわかるものですか。女の意地なぞ、風に舞う木葉のように何処かへと飛ばすことも時には大事なのだと、理解したのです。



 おまけ。


「因みにあの時奢ってって言ったら奢ってくれたの?」

 と聞いたら、彼は即答しました。

「うん。僕は食べたい時に食べたい物を食う。勿論奢ったに決まってるじゃないか」

 私の絶望感が、伝わりますか?皆さん。時には意地を張らずに素直になった方が良いようですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ