表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/77

キノコの話。

 キノコの話。


 祖父は常々言いました。

「キノコはとるな」

 と。これは前にも書きましたね。

 秋になると茸の話題をよく聞きます。

 収穫した茸が毒キノコで散々なめにあったとか、美味しい茸のご飯を食べて幸せだとか。

 美味しいは正義だけど、命懸けは勘弁して貰いたいものです。


 さてそんな訳で、道の駅などの産直に置かれている、見たことのない茸等に手を出すことはありません。農家さんは信用してはいるけれど、それはそれ、なのです。しいたけやなめこ等の知っている茸ならば悩んだ挙げ句買うことはあっても、稀な事に変わりはないのです。買うならばお店のをと決めています。


 ある日、友人の所に遊びに行った祖父が、眉間にシワを寄せて帰って来ました。

 無言でナイロン袋を渡されました。よくわからない違和感を覚えつつ、中を覗きます。


 黄色い茸、でした。


 思わず母を呼び、三人で話し合いが始まりました。

 ちょっと成長しすぎななめこかなと思ったのは、その茸の名前をうっかり忘れたと祖父が言ったからでした。この一言で危険度がアップしたのは言うまでもありません。

「……これ、食えるの?」

「……多分」

 祖父はそっと目を反らしました。あれだけ毎年茸はとるなと言ってきた祖父が、怪しい茸を持ってくるとは。しかも、何故目を反らすのだろうと思わずジトーと見つめました。

「……食える……と、言われた。美味しい、と」

 祖父自身も複雑な思いを抱いているらしい。とは思いました。

 祖父が言うには、友人がキノコ採りに行った。美味しいから持ってけと言われ、いらんと断ったが押し付けられた。……要約するとそういうことでした。

「……」

「……多分、きっと、大丈夫だと思う。奴はもう食ったらしいから」

 存外鬼畜な発言ですが、安心するには程遠い言い回しでした。私は更に鬼畜な質問をしました。

「そのおじいさんは、ピンピンしてたのね?」

「いたって元気だった」

「じゃあ、……食べようか」

 三人揃って頷きました。


 お汁にしました。作ってる最中に、

「おじいさんの家から病院送りになったとか連絡きたらどうする?」

 と私が言うと母が困ったように呟きました。

「仮にそうなってたら、昨日のうちに事件になってると思うのよ。だから、大丈夫なんじゃない?」


 夕御飯のとき、皆は疑心暗鬼になりつつも美味しい茸のお汁をいただきました。

 何事もありませんでした。

 ですが、それ以来『怪しい茸には絶対手を出さない』が我が家の決まりとなったのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ