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地引き網の話。

 地引き網の話。


 我が小学校では、海が近い事もあり『地引き網』体験ができました。

 地元の漁師さんたちはさぞかし大変だったのではないかと、今なら思います。しかし小学生の私にはそんな大人の事情などわかる筈もなく、ただこれから行われる体験にわくわくしていたのでした。


 網は思っていたよりも長く、重いのです。これは思っていたよりも大変な作業でした。重さの分だけの魚が取れるといいなと、ひたすら引っ張り続けやがて終わりました。


 先生たちと漁師さんがどんな魚がいるのかを教えてくれた後、いつの間にか用意された焚き火で串に刺した魚が焼かれました。

 先生は、各班の代表を一人決めなさい、と言いました。

「班ごとに一匹渡すから。代表同士でジャンケンして、一番強い人から順に大きな魚を渡すぞ。頑張れ!」

 班の仲間と話した結果、私が選出されました。

「負けても文句は言わないけど、出来るだけ大きいのがいいな」

 という、物凄いプレッシャーをかけられつつ。私は先生のもとに赴いたのでした。


 手に入れた魚は三番目に大きな魚でした。口は長く尖っていて、体は細いものの白身で美味しいのです。誰一人として遠慮することはありませんでした。

「あれ?」

 食べ進めると、皆の手が止まりました。ついぞ見た事のない、パステルカラーの綺麗な緑色の骨が現れました。

 何だ、この色は。骨って白とか透けた白じゃないのか?

「今さらだけど、この魚は食べても大丈夫なのかな?」

「大人がくれたし、大丈夫だとは思うけど。……緑色だね」

「緑だね……。でも、美味しいよね。この魚は」

 暫し悩んではみたものの、躊躇いは取り敢えず放り投げる事にしました。空腹の前では、骨がパステルカラーである事など些事でしかありません。綺麗に平らげたのでした。


 夕食の時、父たちに食べた魚の骨の話をしました。残念ながら魚の名前は記憶しておらず、こんな感じの、とかいった実に曖昧な物言いしか出来ませんでしたが、骨がパステルカラーだったと言うと父は不思議そうな顔をしました。

「……それはわからない」

 と。もしかしたら私たちは、実に怪しげな魚を食べてしまったのでしょうか。まあ、美味しかったから問題はないかと疑問は封印したのです。大人がわからないのでは仕方がないと。



 最近、ダツという危険な魚の骨が緑色だと知りました。あの怖い魚が身近な海にいるという事実と、美味しかったという思い出に愕然としたのです。

 まあ何にせよ、これで長年の謎が一つ消えたのでした。

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