表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/77

桜の話。

 桜の話。


 桜。

 薄紅色の小さな花の可憐さと散り際の儚さ。何故か日本人の心を鷲掴みにしている樹木。平安の御世から歌に詠まれてきたのです。愛され方も半端ありません。


 花を見に現地に赴いてしまうのは、恒例行事だからとしか言いようがないと思います。

 冬の厳しさからの解放と春の訪れを実感するのですから、浮かれても無理はないと思うのです。楽しまなきゃ損だとも。


 とある春。

 家に祖父と私しか居ない長閑なある日、桜の開花が発表されました。雪深く長き冬も終わりを告げつつあった頃です。肌寒さはあるものの、出掛けるのに何ら問題はありません。

 地元には桜の名所が彼方此方にありますから、ドライブには最適なのでした。何処に行くかと話し合い、高台にある公園に向かう事にしたのです。


 花見客で混雑しているかと思いきや、駐車場は閑散としていました。咲き始めだから人がいないのかと首をかしげつつ、祖父と私は坂道を登り、高台に植えてある桜の木々を見たのです。

 ……晴れているというのに、何故か薄暗い公園。青々とした若葉が風に揺らいでいました。


 えっ、花はどうしたの。何故見当たらないのかな?


「……場所、間違えた?」

「……いや、ここの筈だぞ」

 場所が間違っていないならば、この惨状はどうした事でしょうか。

 公園の売店の方に聞きました。

「鳥が花を全部落としてしまったので、この有り様なのですよ」

 ……犯行を行ったのは鳥でした。

 店員さんの顔色は青く、具合がわるそうに見えます。お団子の売上がた落ち。笑うに笑えないといった所でしょうか。

 私たちは、いたたまれなさから団子を購入し、車に戻り帰路についたのでした。



 次の休みの日。他の名所に向かいました。お昼過ぎなので焼きそばや団子を購入し、敷物を敷いて二人でのんびりと花見を楽しみました。

 と、強い風が吹き辺り一面が薄紅に染まります。桜の花びらが舞い散りました。『これぞ桜吹雪』という位の幻想的な光景が広がったのです。

 あまりの素晴らしさに私たちは言葉もなく魅せられたのでした。


 それはまさに、時よ止まれと願う程の美しい瞬間でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ