大当たりの話。
大当たりの話。
寒さ厳しい冬に、街中で行われたイベントに行きました。露店を冷やかしつつ、我々一家とおばあちゃん一家は目的の場所に向かいました。くじ引きをする為です。
まだ幼い下の弟がくじを引きました。すると商店街のスタッフさんが勢いよくベルを振り、響く声で言いました。
「おーあたーりー!おめでとうございます!」
「おおっ!すごいな。良く当てたな!」
「良かったねぇ」
何が当たったのか知らぬまま、えへへと笑う弟を皆で誉めました。
スタッフさんは後ろを向き、何やら大きな発泡スチロールの箱の蓋を取り、箱の中身を私たちに見せてくれました。そして賞品名を告げたのです。
「賞品は寒鱈一匹です!」
スタッフさんはすごいでしょう!とばかりに満面の笑みを浮かべていたのでした。
しーん。
私たちは絶句しました。
皆さんは知っているでしょうか。寒鱈という魚を。要は真鱈なのですが、冬の寒い時期に日本海沖でとれる大きな魚です。この魚はどこも余すところはなく、美味しく食べられるのです。
地元では寒鱈汁として食卓に上がり、イベントでも提供されます。体がとても温まります。
私たちは実に微妙な顔をしていたのでしょう。
当てた弟はその魚のサイズに驚き、ぽかんと口を開けていました。
そして母と私はこの時同じことを考えていたと後に知りました。
『こんなデカイ魚をそのまま貰ってどうしろと?せめて切り身にしてくれ。一匹丸々なんて一体いくらするんだろ?』と。
私は半ば現実逃避しかけました。
スタッフさんはその反応に戸惑いを見せました。
はっ、と現実に立ち返り、何はともあれ大当たりには違いないと、父が魚を箱ごと受け取り帰路に着きました。
「運が良いよね。こんなにでっかい魚当てちゃうんだもの。でもきっと弟は今年の運を使いきっちゃったかもね」
なんて冗談を言いながら。
流石に量がありすぎます。祖母にもお裾分けするからと母は言いました。
家に帰り、床に新聞紙を広げその上に大きなナイロンの風呂敷を敷き、まな板を設置します。そして祖母と母は二人がかりで寒鱈を置きました。まな板から完全にはみ出しています。
いかに捌けるとはいえ、私は思いました。なぜ魚屋に持っていこうと誰も言わないのだろう。いくらなんでも無理だろう、これ。と。
祖母と母は二人で交代しながら捌いていきました。無理なら祖父や父もかわるつもりでいたのですが、流石は親子。息があっています。
せっせせっせと、さくさくと作業を進めていくのを見て、大人ってすごいなと思ったのです。
切り終えた二人は笑顔を浮かべ、下の弟を改めて誉めました。妙にテンションが高かったのは、やり遂げた満足感があったからでしょう。
「こんなに立派な寒鱈を当てるなんて本当に偉いわ。今日は寒鱈汁よ!」
「ありがとうね。家でも寒鱈汁にして食べるよ」
そうして祖母は魚を持ち帰りました。
寒鱈汁の具材は鱈と豆腐、ネギ。そして味噌に和風だしと酒粕を溶かし入れます。ご飯との相性は抜群です。美味しいですよ。




