表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/77

煎餅釣りの話。

 煎餅釣りの話。


 人を虜にして堕落させ、その場から動こうとする意思を奪い去るという、恐るべき『魔物』と称される冬の偉大なる家電。

 その名も高き『炬燵』が茶の間に据え置かれ、当たり前のようにみかんを設置し、家族が皆まったりとした時間を過ごす頃。

 毎年必ず行うイベントがあります。


 煎餅釣りです。


 ニコニコと笑みを絶やさない母が、

「やる?」

 と言って差し出してくれるその煎餅の山を見ると、何故か皆、勝負師のような雰囲気になります。

 そう、真剣勝負の始まりなのです。


 駄菓子屋で売られていることが多い、赤、緑、黄、桃、青などに色付けされた薄い煎餅(最低でも三十枚は用意する)を重ねて机の中央に置きます。

 三十センチ位の糸を通して玉結びにした縫い針で刺し、そっと糸を持ち上げ、煎餅を釣り上げる遊びです。

 釣った枚数で勝敗が決まり、手にした煎餅は一人で食べてよいという、子供にとっては夢のような話なのです。


 これが中々難しいのです。手首のスナップを利かせ、勢いよく針を投げ付けないと煎餅には刺さらず、釣り上げることは叶いません。

 そう、私は一枚も釣り上げたことがないのです。

 毎年一度はチャレンジしますが無理な為、祖父におんぶに抱っこを実行に移します。

 弟たちの『狡いぞ姉ちゃん!』という、声にならない抗議を無視して祖父に声援を送るのです。


 サクッ!と皆が真剣に見つめる中、煎餅に突き刺さる小気味良い音が響きます。ゆっくり持ち上げられた糸に連動して針と先に突き刺さる煎餅が三、四枚フワリとついてきます。

「すげー!」

「流石はじいちゃんだね」

「あっ!父ちゃんも凄いぞ」

 年期の差か、単なる力の入れ方か。祖父と父はかなりの量を釣り上げるのでした。


 祖父や父の手の動きを観察した弟たちが試します。上手くいけば同じ位とれますが、大概二枚程度です。

 大人たちの完勝でいつも終わります。祖父は戦利品の半分を私にくれ、父と母も弟たちに少しずつあげるのです。

 私たちは手にした、ちょっぴり甘い煎餅を食べるのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ