運動会の話。
運動会の話。
運動会。
何をしても一番をとったことはありません。ですが小学校の運動会は楽しかったのです。地区運動会は特に。家族皆で地元の仲間と、わいわいと騒がしくすごすのは好きでした。
父は仕事が忙しく、学校行事に来てくれることはほとんどありませんでした。ですが運動会だけは必ず来てくれました。
私が一年生の時、父はそこで改めて気がついたのでしょう。娘の運動神経の無さに。
一位など雲の上。常に最下位から数えた方が早いのです。
父は何かを決意したようでした。
何故か父は親子二人で走る競技でやる気満々でした。
私はただ、父と運動会で走れるのが嬉しかったのです。
軽い障害物を乗り越え、二人で必死に走りました。
目の前には誰も走ってはおらず、これが一位の人が見る景色かと他人事のように思ったのです。
父が私の為に頑張ってくれた結果、そのまま一位でゴールしたのです。父と二人で喜びました。
と、先生が近づいてきました。先生はちょっと言いづらそうに話しかけてきました。
「あの、すみません。その、残念ながら失格になります。頑張っていただいたのですが、最後、二人三脚で走らなくてはならなかったんですよ。足を紐で結ぶの忘れてますので」
「は?」
「えー」
父と私はぜーぜーと息を吐きつつ、足下を確認し、ちょっと無言になりました。そしてお互いを見ました。二人してやってしまったともう笑うしかありません。
家族のもとに戻ると母も笑っていました。
「すごいすごいって応援してたのに。一位だと思ったら最下位って。残念だったね。……ん?残念賞貰ってきたの?」
「でもお父さんすごかったよ。楽しかった。残念だけどいいの」
そう私が言うと父はちょっと困り顔をして、照れたように笑いました。
運動会という言葉で私が連想するのはいつもこの、『残念な幻の一位の話』なのですよ。




