小魚の佃煮の話。
小魚の佃煮の話。
風も涼しくなってきた秋。
いつものメンバーで芋煮会をしました。
芋煮が出来上がるまでの間。
祖父は釣竿を片手に持ち、杖を使いゆっくりと歩いて岸に近い防波堤に腰を下ろしました。
皆が危ないから遠くに行くなよと祖父に言っていました。私も祖父に寄り添いつつ、本でも読もうと座りました。
祖父自身も防波堤は危険だと思っていたらしいです。なので父たちが向かった大物が釣れそうな防波堤の、先にある灯台近辺まで行くつもりはないのでした。
大物は釣れなくても釣りを楽しもうと餌も何もつけず糸を垂らします。不思議に思い聞きました。
「じいちゃん、餌いらないの?」
「いらん。釣る気は無い」
うお、気分だけ味わうのですね、と私は納得し側で本を読み始めました。それも良いでしょう。祖父は危ないからと、家族からバイクの運転を禁止させられていました。ですから海で魚釣りをするのも久しぶりでした。海を堪能するのもいいですよね。
「ん」
「へ?」
祖父はリールを回します。と、針には十センチ以下の小魚がピチピチぶら下がっていました。
それから一時間弱、祖父はひたすら小魚を釣り上げました。私は唖然としながらそれを眺めていました。
「今日の夜はあれだね。小魚の佃煮かな。これだけあれば沢山食べられるよね」
「だな」
天ぷらにするには小さすぎたのでした。というよりも佃煮しか料理が浮かびませんでした。
私たちはにんまりと笑い、
「芋煮が出来たよー」
と呼ぶ母たちの元に向かったのです。
祖父が釣り上げた小魚の山を見た母と祖母は一瞬戸惑い、ただ一言、
「釣ったねぇ」
と呟きました。私は、
「佃煮がいいな。鱗とはらわた取るの手伝うからさ、佃煮作って」
と母にお願いしたのです。せっかくの小魚。美味しく食べたいではないですか。
大変でした。祖父と祖母、母と私の四人でひたすら小魚の処理におわれました。頭は取らず鱗とはらわたを取るだけといっても数が半端ありませんでした。
処理し終わった魚を油で二度素揚して、それから佃煮にしました。
美味しかったですよ。とっても。




