猫の話。2
猫の話。2
昔。記憶も確かでない程幼い頃。
我が家の近くには小さなお寺がありました。そこにはかなりでかい野良猫さんが居座り、まるでお寺の主のような威厳があったそうです。
もう何年も町内をぶらついていたその野良猫さんは、誰もが、
「昔からいたな。何時からいたっけ?」
と首をかしげる程その土地に馴染んでいたとか。
ある日母は家事を終え、まだ赤ちゃんな弟の様子を見に行きました。おとなしく寝てるかな?と。
弟は、庭に面した茶の間に敷かれた小さな布団ですやすや眠っていました。そこにはいつの間に入ってきたのか、野良猫さんが弟の側に座り込み尻尾をパタパタ揺らしていたのです。
窓は開いていました。
母は慌てて野良猫さんを追い払いました。野良猫さんはというと、ゆっくり庭に出ていったそうです。
野良猫さんと弟がほぼ同じくらいのサイズであったことを思えば、母が危険だと感じるのも無理はなかろうと思います。
「どこか怪我してないかと心配になったわ。あの時は」
今でも母は眉間に皺をよせ、そう言います。
しかし母が心配するようなことは無く、弟に怪我は無かったので母は安堵したのです。
それから暫く。母の目を盗んでは野良猫さんが熟睡する弟の側で日向ぼっこをしているのを、度々目撃することになるのです。
最初の頃は必死に追い払っていたものの、弟に何かするわけでもない為に母は根負けしてしまったそうです。
かくして、野良猫さんは弟の側で日向ぼっこをしつつ昼寝する場所を手にいれたのでした。
それは野良猫さんが飽きるまで続いたそうです。
おまけ。
父曰く、
「あの猫は日向ぼっこしつつ、『何か』から弟を守っていたんだよ。きっと。じゃなければあんなに弟にまとわりついていた理由がわからない」
だそうです。母は、
「赤ん坊特有の甘い匂いが気に入っていたのよ」
と言います。
……騎士な猫さんとか、格好いいですね。




