家庭菜園と蛇の話。
家庭菜園と蛇の話。
雪も無くなり、草木が芽吹く春。いつも祖父とホームセンターで、黄色い花と野菜の種や苗を買うのが恒例行事でした。
家の裏には川があり、その近くに小さな畑を作っていました。
トマト、ミニトマトにきゅうりや茄子、その他。
祖父はそれらを一人で植えていた為、私が休みの日に手伝うことにしました。
祖父の指示のもと、鍬で土を掘り、うねを作ります。
鍬を振り上げた時、傍らを『太めのロープ』がするすると波打って動いていました。
何だろう、とその体勢のまま私はそれをよく見ました。
蛇でした。
てっきり祖父がロープを引っ張っているのだと思っていただけに、私は蛇から目が離せませんでした。
そして、鍬という武器を振り上げ己を凝視する人間を、蛇も鎌首をもたげてチロチロと舌を出しながら見上げてきました。
春うららかで気温も高く、蝶も飛びかう長閑な午後。
私と蛇は顔を背けることもせず、ただ互いを見続けたのでした。
どのくらいそうしていたでしょうか。妙な緊張感が場を支配する中、ぷいっと顔を背けたのは蛇でした。
蛇は何事もなかったように、悠々と草むらに入っていきました。
私は深くため息をつき、鍬を下ろしました。
蛇をよく見るとは聞いていたものの、流石に蛇と見つめあうことになろうとは。
家庭菜園恐るべし、であります。
おまけ。
ある日、祖父が畑にて休憩している時です。
一羽のトンビAが蛇を両足で掴み飛んでいたそうです。
蛇は必死に逃げようと体をくねらせていたとか。
そこにもう一羽(トンビB)がやって来て、空中での蛇の奪いあいが始まったのです。
トンビAはひたすら逃げていたけれど。かなり大きな蛇を持っていた為か、結局追い付かれてしまったそうです。
くるくる回りながら後からきたトンビBは蛇を掴もうとします。
ふざけんなとばかりに翼をバタつかせて振りきろうとしたトンビAは、とうとう蛇を落としたのです。
大きく旋回したトンビBはすかさず蛇をキャッチし、どこかに飛んでいったそうです。
「迫力ある戦いだった」
と祖父は語りました。とんでもないのを見たな、と私は思ったのでした。




