2品目
仕事はブラック企業、ほとんど毎日、日が変わる頃に帰宅、もしくは面倒くさくなって会社に泊まる時もある。同期はだんだん減っていき、キツい上司ばかりが残る。
新入社員は入っても三日で来なくなり、その分の後始末が吉田へ押し寄せる。
取引先へは頭を下げ、上司にも頭を下げ、疲れ切った毎日。
酒を飲む仲間もいないし、休みの日に会社関係の人間に会いたくもない。
「あ~あ」
カップラーメンとスナック菓子を食ってビールを飲みながらゲームをするのが、吉田の人生で一番楽しい、そてを自覚した瞬間にむなしくて落ち込んしまう。しかしゲームをしている間にそんな事は忘れてしまう。焦りも、不安も、全てゲーム脳に持って行かれてしまうのだった。
これがよくないのは薄々分かっていた。
しかしゲームをしながらビールでも飲まないと明日、仕事へ行けるかどうか分からない。
一度休んでしまうと二度と行けないんじゃないか、そうしたら二度と外へ出られないんじゃないか、吉田はそれが怖かった。
吉田が大学卒業後に入った最初の会社は上手くいかなかった。
そう聞くと我慢が足りないとか、頑張ればなんとかなる、とか思う人間がこの世の大半で、実際、やりようもあったかもしれない。
しかし実際、頑張っても頑張ってもうまくいかない人間はいて、周囲にも誤解され、その人間関係を上手に解けるほど器用でもなかった。
実際、人間関係を器用にこなせるならもう少し出世した。
そして吉田は追われるように辞めて、今のブラックな会社に拾われたのだった。
もし今度辞めたら、きっと二度と就活なんて出来ない、と吉田は思いつめていた。
どやされてもいじられても、今の会社にしがみつくしかない、30歳目前で無職になどなれない、生真面目な吉田は本気でそう思っていた。
だから毎晩、酒を飲んでインスタント食品と菓子を食うので体重は90キロを超えていた。
痩せていても普通以下の顔は太って吹き出物だらけ。
当然、恋愛にも縁遠い。
「あ! 思い出した! あれは同級生の広永浩二だ!」
つい声に出して言ってしまい、吉田は周囲を見渡した。
高校時代の同級生だった。別に仲が良かったわけではない。
広永浩二は虐めに遭い、高校を中退した。
そもそもの原因は広永のアイドル風な可愛い顔が仇になり、不良に目をつけられていた。
不良が好意を寄せていた娘が広永に振られたと、下らない事が始まりだったと聞いていた。
虐めは酷く、広永は高校三年から学校へ来なくなっていた。
なんだこんな近所で働いてたのか。
お互い気が付かないもんだな、今度スーパーに行ったら声をかけてみようと吉田は思った。




