1品目
吉田耕平は腹が減ったので深夜のコンビニに行こうと思って部屋を出た。少し歩いたところでその先に24時間スーパーが出来た事を思い出してそちらへむかった。
田舎の県だが、その中では県庁所在地の繁華街の隅っこに吉田は住んでいる。
都会ほど煌びやかなネオンに囲まれて、とはいかない。
不景気のせいで最近は夜の街も以前ほどは勢いがない。
その通りにはコンビニが二件ほどあるが繁華街だけあって値段が高い。それでも仕方なく買い物に行っていたが、24時間のスーパーが出来たと聞いていた。
値上がり値上がりの世の中だから少しでも安価で買いたい。
運動がてら歩くのも丁度いい。
夜中のカップ麺も疚しさを感じずに食えるような気がする。
そう思って吉田はそちらへ足を進めた。
繁華街のスーパーは駐車場も数台しかなく、店内もそう広くなかった。
中に入っても節約の為か薄暗く、そして所狭しと品を積みあげているので、通路も狭い。
しかしスーパーだけあって、野菜から肉、卵、インスタント食品、トイレットペーパー仏壇用の花まであった。もちろんスナック菓子もあるし、要冷蔵のロールケーキや、飲み物も豊富、日本酒も洋酒も豊富だった。
他所のスーパーよりは高いかもしれないが、コンビニよりは確実に安い。
カップ麺とおやつ、飲み物をカゴに入れてレジに並ぶ。
深夜といっても日付が変わるくらいの時間帯だから、客もそこそこいる。
レジを待つわずかな時間でも携帯を見ている人間が多いし、吉田もそうだ。
カゴを片手に携帯を見ていると、レジが進んだ。
「どうぞー」
抑揚のない男の声だった。
自分の番だったので、吉田がそちらへ動こうとした瞬間、レジに並んでもいないおっさんが別方向からすっとレジにカゴを置いた。
「ちょ!」
レジの店員を見たが何も言わない。
こういう時は「次にお待ちのお客様どうぞ、」って店員が言うのが普通だろ!
「ちょっと!」
と吉田は声に出したが、おっさんは缶ビール一本で小銭を投げ出すように払ってすぐに消えた。
「どうぞー。袋どうしますかー」
くぐもった抑揚のない声が吉田にかかってきた。
レジ台にカゴを置いて「入れてください」と不機嫌そうに吉田は答えた。
金を払って袋を受け取りバイトの顔を見る。
若い男だが、身体は小さく、整った顔をしていた。
しかしうつむき加減でじっとしている。
あまりテキパキと動くようにも見えない。
吉田は袋をぶら下げて店を出た。
「あいつ、見た事あるぞ」
しかし思い出せなかった。
そう思いながら考えながらぶらぶらと夜道を歩くが、先程の事を思い出して、
あんな接客じゃダメだろ! とまた腹がたった。
スーパーやコンビニは時給が安いわりに激務らしいので、仕方ないのもしれない会社からの教育がなっていない! そこまで思って、吉田はまた店員に意識が戻った。
どこかで見たのは確かだが思い出せない。
思い出せないくらいだから、それほど親しくもない人間なんだろう、そもそも友人と呼べる人間も少ないしな、と吉田は思って肩をすくめた。




