悪役令嬢、砦で司令官を探す
「お、俺たちはこれで、し、失礼します!!」
「え、でもちゃんと、わたくしを魔族領へ送り届けるのを確認しなくてはいけないのではありませんか?」
「いや、俺たちはこれで十分です。あとは砦の司令官にお任せします」
護送兵士たちは、降り注ぐ城壁のかけらをよけつつ馬車に飛び乗ると、脱兎のごとくその場を逃げ去っていった。
一人残されたエリシアは少し戸惑いながら空を見上げ、独り言を言う。
「まだ、魔族領に追放にもなっていないのに……
こんな間近でワイバーンを見れるなんて、なんて幸先の良いことでしょうか。
それにしても……
単独行動が基本のワイバーンがこんなに集まって……
それになんて統率がとれているのでしょう。あら、あの個体……」
ドン
砦から逃げ出した兵士と肩がぶつかり、エリシアは少しよろけた。それで我に返った。
「いけませんことよ。今はワイバーンより砦の司令官様を探さないと」
エリシアは大混乱の砦の中へしずしずと歩を進めた。
”しっかりしろぉ~ 傷は浅いぞぉ”
”だめだぁ、門がぁ、門がこじ開けられるぞぉ!”
”押さえろ、押さえろ! ここを突破されたらみんな殺されるぞぉ!!”
怒号、悲鳴が飛び交い、
兵士が走り、兵士が吹き飛び、兵士がすっころぶ。
その中をエリシアは一人、砦の司令官を探し進んでいった。
やがて、少し立派な鎧を着て、あれこれ仲間たちに指図をしている男を見つけた。
「もうし、そこのお方。砦の司令官様でありましょうか?」
「ああ、なんだって?」
突然声をかけられ、振り返ると妙ないでたちの女が立っていた。男は一瞬思考が停止する。
女、エリシアは、深々とお辞儀をする。
「これは大変失礼いたしました。わたくしエリシア・ハルデンブルクと申します。
この度、皇太子殿下から、魔族領へ追放を拝命いたしまして、こちらへまいりました。
つきましては司令官様には、砦の門をあけていただき、わたくしめを魔族領へ追放していただきたくおもっております」
「ちょっちょ、ちょと待て。あんた、なに言ってんだ。こんな状態で門が開けられるわけねぇだろう。
それに俺は司令官じゃねぇよ」
「あら、そうでしたか。ではお尋ね申します。砦の司令官様はどこにおられるのでしょうか?」
「いねぇよ」
「はい? いない?」
「ああ、あいつは、魔族が攻めてきたら速攻で逃げやがった!
俺は砦の副官だよ」
副官は忌々しそうに吐き捨てた。




