悪役令嬢、家族会議する
「なんということだ。話は聞いたぞ。全く、とんでもないことをしてくれたものだ!
婚約破棄はともかく、魔族領への追放とは!
いったい何をやらかしたというのだ」
エリシアがパーティから家に戻ると、両親が蒼白な顔色で出迎えた。
ロゼリオン・ハルデンブルク伯爵は、落ち着かない様子で居間を行ったり来たりしながらエリシアを問い詰めた。しかし、当のエリシアはソファーにちょこんと座ったまま、落ち着いた様子で答えた。
「それが……、わたくしにもよく分からず」
「フェルミア男爵令嬢を脅かしていたというではないか」
「確かに、フェルミアさんにいろいろと学園を案内したことはあるのですが、その時は、学園の由来とか面白い話とかをして差し上げて、でも、不思議ですのよ。
デュラハーンのお話とか、ガーゴイルとか井戸の真実とかのお話をしただけですの。
その時は、フェルミアさん泣くほど喜んでくれていましたの」
「それは、泣いて怖がっていたんだ!!
それから、呪いのアイテムをもって他の学生を追い回したとか。本当なのか?」
「それもあまり記憶がなくて。思い当たるのは、ようやく手に入れましたコカトリスのしっぽの抜け殻を皆さんにお見せしたことぐらいでしょうか」
「どこの世界にそんなものを学友に見せるやつがいるか!」
「え? でもコカトリスのしっぽの抜け殻はすごく学術的な価値がありますのよ。
そんな幸運をわたくしだけが享受するなんて、できませんとも!
皆さんとこの幸運を分かち合おうとしたのです。
ですが皆さん、その時お忙しかったみたいでなかなかお見せするのが大変でした。
でもわたくし、がんばりましたわ」
「それは、みんな、気味悪がって逃げておったのだ!!
ああ、つまりみんな真実なのだな……
終わった。我が伯爵家はこれで終わりだ」
「ああ、あなた。気を確かにしてくださいまし。
あの子には罪はありませんわ。
ただ、ちょっと魔物のことになると人が変わってしまうだけで、悪気なんて少しもないのです」
伯爵夫人が伯爵の両手をとって懸命に慰めた。
「ねぇ、貴方、この子を魔族領へ追放なんて、そんな酷いことはさせないでくださいまし」
「ああ、もちろんだとも愛する妻よ、
由緒正しきハルデンブルク家が私の代でついえるのは御先祖様には申し訳ないことだが、これも私たちの愛しい娘を助けるためだ。こうなってしまったら、皇太子閣下が言うように伯爵家の領地を返上するしかあるまい」
「ああ、貴方。愛していますわ」
「私もだよ、ハニー」
伯爵と夫人はひしっと抱き合うと涙を流し始めた。それを眺めるエリシアは少し戸惑いながら、言った。
「あのぉ~、お父様とお母様は先ほどから何をおっしゃっているのですか。領地をどうするとかこうするとか」
「何を言っているのだ、お前を魔族領へ追放させないための算段をしているのではないか!」
「え?! わたくしを魔族領へ行かせない算段ですか?
なんで、そんなことをするのですか! お仕置きですか? わたくしが婚約破棄されたからって、そんな酷いことをするのですか?」
「……、なにか話がさっきからかみ合っていないようなのだが。お前、分かっているのか? 魔族領に追放だよ?」
「分かっていますわ。魔族領へ追放なんて、なんとありがたいことでしょうか。魔族領への現地調査はずっとお願いしていたのに許してもらえなかったのです。
ようやく夢がかないましたわ。
ああ、魔族領。なんと甘美な響き」
「……、いや、だから、なんで? 魔族領ってすごいとこだよ。流刑地だよ、いや事実上の処刑だよ。なんでそんなうっとりした表情なの?」




