第六話
「おし。俺の剣も新しくなったし、良かったかな」
私は洞窟を攻略した後、男の子の隣を歩いていた。
何だか何を話せば良いか分からない。
初対面だからというのもあるけど、色々とよく分からないことが多すぎて。
こういうのって質問しても良いものなのだろうか。
「あの……さっきのスキルって」
「カケル」
「へ?」
「俺のプレイヤーネームだ。まぁ実質本名みたいなもんだけど」
「え、は、はい。私はカオリって言います。私もほとんど本名です」
「おう。よろしくカオリ、あとタメでも良いぞ。任せるけど」
カケルの話に私は「うん」と頷く。
「んで。スキルの話ね。あれはねぇ、体力ステータスで計算してダメージを与えるスキルなんだよ」
「た、体力ステータス?」
「おう。例えば、体力が100ある時にそのスキルを使うと相手には100ダメージ入るってこと。防御力とかで軽減されはするけど、それでも振り方に寄っては破格なダメージにもなるぜ」
「な、なるほど……!」
「だけどその反面、体力が半分減っちまうっていうデメリットもあるから、あまり連発は出来ねぇってのもある」
カケルの説明に、私は頷く。
つまり、明らかに体力や防御力にステータスを振って無さそうな相手には絶大なリターンがあるけど、その分デメリットや体力の多い人には刺さりにくいというものだ。
中々駆け引きになりそうなスキルだけど、ボスを一撃で倒せるのは凄い。
「カケルさん……強いんですね」
「そうか? 相手が噛み合ってただけだぜ。それに剣士なのにこんなスキル博打にも程があるけどな、普通こういうのは盾使いとかのタンクが持つもんだし」
彼は妙に自信満々に答え、目の前を指差す。
「ほら。はじまりの街が見えてきたぞ。初ダンジョンからの生還だ」
「は、初だったんですか?」
「おう。基本的に雑魚敵とか、ちょっと遠くの敵を倒してレベル上げてたし、そもそもあそこは霧で入れなかったしな」
会話をしながら街に入る。
窮地に立たされたからだろうか、ゲームなのに疲労感を感じる。
その時。
「あ! カオリー!」
聞き覚えのある声が聞こえ、私は視線を向ける。
そこにはヒヨリンの姿があった。
「ヒヨリンやっほー!」
「カオリー! 結構レベル上がってたね! 楽しんでて何より……だけど、この人は?」
ヒヨリンがカケルに気づいて尋ねる。
「えっとね、実はかくかくしかじかで──」
私が事の顛末を説明する。
ヒヨリンは納得した様子で片手で顔を隠した。
「なるほど……カオリ、多分魔力回復のポーション買ってなかったんじゃないかな?」
「へ? 魔力って自然に回復するんじゃ?」
「まぁ……間違っては無いけど、自然回復自体はとんでもなく遅くて、12時間で魔力の2/3が回復する計算らしいから」
「えぇ……でも私結構長時間魔法打てたよ?」
「多分……レベルアップとかの回復なんじゃない? このゲームレベルアップすると、状態異常以外は全回復する設定なの、ステータスポイントを割り振りやすくする為にね」
「あぁ……それで凌いでたのか」
真実を知った途端恥ずかしくなってきた。
魔法を放ったりしたことにテンションが上がって、そう言った細かいところを忘れてしまっていたのだ。
思えばあの時カケルに貰った回復ポーション自体初めて見た代物だったし。
隣でカケルがクスクス笑っている。
「なるほどな。何で帰り道に魔力を回復しねぇんだろうなって思ったら」
「あはは……お恥ずかしい」
私がそう言うと、隣でヒヨリンが彼を見つめていた。
「私の友達がお世話になりました。剣士なんですね」
「おう。まぁタンクとか言われても不思議じゃあ無いけどな」
「?……まぁいいや、カオリはこの人とフレンドなの?」
「え? あ、いや違うけど……なります?」
私はカケルに尋ねる。
カケルはキョトンとした顔で頷く。
「別にカオリが良いってんならなるぜ」
「あ、じゃあなりましょう!」
私はフレンドコードをカケルに見せて、申請を貰って登録した。
「んじゃ。お互いなんかあったら連絡とかしてくれ。タイマンとかでもな」
「た、タイマンなんて出来るんですね……」
「出来るぜ。まぁ無理にとは言わねぇけど」
「是非! 強くなったらお願いします!」
私がそう力強く言うと、カケルは軽く微笑んだ。
それを聞いて日和ちゃんが「ふーん」と呟く。
「まぁ、悪い人では無さそうかな。それにしても、よくそんなダンジョンを単独攻略できましたね」
「……まぁ。普通なら無理だったろうな。それに、"霧"有りきだったらイマイチ分かんなかったしな」
少し考えた素振りを見せて、彼は答えた。
「いずれにしても。ありがとうございました! また会えたら話しましょう!」
「おうよ。またな」
そう言ってカケルはその場を離れた。
隣で日和ちゃんが、顎に指を置いて考え事をしている。
「どうしたの?」
「……カオリ。あの人ってボスをどうやって倒したの?」
「え? スキルで一撃で倒してたよ」
「……うーん。体力を参照にして攻撃するスキルで一撃……それに初期装備だったし……」
日和ちゃんがブツブツ何か呟いている。
カケルの何かが気になっているのだろうか。
「……考え過ぎか。やめよやめよ」
頭を横に振り、日和ちゃんは私に顔を向ける。
その輝かしい瞳と、私のそれが合う。
「ね、カオリは結構この辺のモンスターとか分かるし、あの霧のダンジョンも道中なら攻略できるでしょ?」
「え、う、うん!」
「私のレベリングに付き合ってよ。離れ過ぎてるとなんかムズムズするし」
「──うん! 行こう!」
私達は笑顔で向き合い、レベリングの旅へと向かった。
続く




