第三話
謎の男の子とすれ違い、私達は暫く歩き続けていた。
そして深い霧のかかった洞窟の入口にやって来た。
洞窟の中が全く見えない。
日和ちゃんが顎に指を添える。
「うーん。これは確かにあの人の言う通りだね」
「うん。これじゃあ入れないの?」
「入れないことはないけど……ちょっと大変そう?」
日和ちゃんが何かを調べながら言う。
画面を見つめながら難しそうに唸る。
「どうやらこれは"霧状態"っていう、ステージ変化状態だね。見た目以上に厄介なものみたい。見ての通り視認性が悪くなるのもあるし、霧状態下にいる全てのプレイヤーとモンスターの被ダメージが上がってるらしい」
「え、被ダメージってことは……攻撃が痛いってこと?」
「そう。しかも防御ステータスが無視されるから普通に痛い。まぁそもそもこのレベルだと全然見えないし入らないに限るね」
そう言うと日和ちゃんはクルッと回れ右をする。
「ということだから、適正スキルを見つけるまではお預けかな。一旦戻ろー」
「う、うん!」
私達は霧の洞窟を後にした。
街へと戻り、最初に入手したステータスポイントを振り分けた。
魔力と知力に多めに振っておいた。
私は満足して頷く。
「ふふん。私、こういうゲームは何だか新鮮かも」
「まぁ。普通のRPGとは違って、自分のことを育成するゲームだからね」
彼女はそう言うと、ステータス画面を静かに閉じる。
「さて。私はそろそろログアウトしようかな。カオリはどうする?」
「私もやめとこうかな。また明日やろうよ!」
「そうだね。明日は金曜日だし心置き無くやれそう」
私達は互いに約束を交わすと、ゲームからログアウトする。
視界がポリゴン片に包まれ、輝いた。
目を開くと、そこは暗闇だった。
「あれ? あ、そうか! VR」
私は手をこめかみに添え、VRの機材を取り外す。
自分の部屋へと戻ってくる。
機材を置いて、ベッドに飛びつく。
「楽しかったぁ。やっぱりゲームは楽しいな。日和ちゃんも私の為に色々と調べてくれてたし」
明日何しよーと考えながら学校の支度をする。
教科書を鞄に詰めながら、私は先程のことを思い出す。
日和ちゃんは私がゲームを楽しくやる為に調べたりしてくれてる。
嬉しいし楽しいけど、甘えてばかりも良くない。
現実でも結構頼ってばかりだし。
「……よし」
私はスマホを手に取り、ゲームの攻略サイトを開いて眺め始める。
翌日。
放課後、私は日和ちゃんに駆け寄り声をかける。
「日和ちゃん! 今日もルミフロやろ!」
「あぁ……えっと今日はちょっと遅れて参加するかも。課題に追われてるもので」
日和ちゃんが「あはは」と苦笑いする。
日和ちゃんはゲームはとても上手で詳しいけど、それ以外は少し苦手な印象がある。
テストの点数はちょっと低くて、居残り勉強も良くやっている。
私はしょんぼりとしてしまう。
「そっか。なら私が先に帰ってやってるね! 課題頑張って!」
「へへ。ありがとう!」
私は彼女に激励を送り、家へと帰宅した。
着替えやら何やらを済ませて、私はVRを起動する。
そして電脳世界に入り、街中を歩き始める。
「確か、最初の街に。霧を対処できるスキルが買える場所があるって……」
私は周りをキョロキョロと見回す。
先日、事前に攻略情報を調べて、街に霧状態を解除するスキルがあるらしい。
公式も公認してる攻略情報サイトだから、たまにあるガセネタでは無いはずだ。
しばらく街をウロウロすると、"スキル店"と書かれた建物を見つけた。
店員と思われるNPCに話しかける。
すると様々なスキルが表示された。
「…………あ! あった!」
私はスキル名をズラっと眺めると、該当するスキルを見つけた。
『霧祓い』
効果は『ステージ変化"霧"を無効化することができる+対象のスキルを保持している場合、スキル成功時に自身の敏捷が上がる』
私は効果を一瞥すると、声を上げる。
「おぉー! これならあの霧が晴らせる! これください!」
私はNPCの店員に思わず呼びかけてスキルを入手した。
「よし! これであの洞窟を攻略できるかも知れない! だけど……レベル上げとかしておこうかな」
私はそのまま、昨日来たイノシシの平原にたどり着く。
やっぱり遠目から見ても分かるが、イノシシは平原を真っ直ぐ駆け抜けていくだけで、こちらには見向きもしない。
「よーし! 行っくぞー!」
私は初期装備の杖を持って駆け出す。
今更だがこの装備にもステータス加算がされるらしい。
魔力と知力が+5と、実に控えめなものだ。
「よし! やるぞぉ……『ウィンド』!」
私はイノシシに向けてスキルを唱える。
緑色に輝く小さな風刃が、イノシシの体を切り裂く。
ポリゴン粒子となって飛散したイノシシを見て、私はよしとガッツポーズをする。
同時にレベルアップの通知も入り、ステータスポイントも渡された。
ステータス画面を見つめてうーんと唸る。
「……とりあえず知力に振っておこう」
知力ステータスに全て振り分け、私はイノシシ狩りを続ける。
あっという間にレベル5まで上がった。
ステータスポイントは知力と魔力に均等に振り分けといた。
「……ていうか、やり過ぎたかな」
思いの外イノシシ狩りだけでも楽しくて、熱中していたらレベルが結構上がっていた。
日和ちゃんと3レベルも差ができている。
「まぁそれでも平気かな! ……ん?」
イノシシ狩りを再開しようとした時、ステータス画面に通知が入る。
新たなスキルを習得しました。
という通知が入り、私は即座にスキルを確認する。
『風使い』
効果は『風属性のスキルや魔法の攻撃力がアップ+魔力消費量減少』
「入手条件は"風属性のスキルや魔法を一定回数使用"か……うわぁ! かっこいい!」
私の胸がときめいた。
風属性を相棒に選んだ証のようなスキルでとてもかっこいい。
これを機に、私は決意した。
「──よし! 私は今日から私は"そよ風のカオリ"だぁー!」
自分で何故か二つ名を考えながら、風属性を強くすることを決意した。
続く




