第二話
私と日和ちゃんは街から離れた位置にある広い草原に来た。
初めの街から一番近いモンスター出現地点はここらしい。
日和ちゃんは事前情報をちゃんと調べるところが流石である。
ここは本当に単純な動きしかしないイノシシのモンスターが出るという話だ。
「猪突猛進って言葉に恥じないモンスターだから。安心して」
「そ、それなら大丈夫かな?」
正直、こうやって体を動かす戦いをするのは初めてかもしれないから、不安であった。
「お。来た来た」
「んぇ?」
私は日和ちゃんの視線の先を見てみる。
そこにいたのは、ものすごいスピードでこちらに突撃してくるイノシシの姿だ。
「え? えっ!? わわわっ!?」
私は慌ててそのイノシシの車線から逸れる。
すると、イノシシはそのままどこかへと走り去ってしまった。
「ほらね? 殴らずに避けちゃえば怖くないよ。それにレベル上げとか、技の試し打ちにも最適だよ」
「へぇー! 流石だね日和ちゃ……ヒヨリン! でも、なんでヒヨリンってそんな詳しい情報を知ってるの?」
単純な疑問を投げかけると、日和ちゃんは「あー」と声を上げる。
「ネットとかに攻略組が最適なレベル上げモンスターとか。ダンジョンのボスの攻略情報とかが載ってたのを色々調べてきたの」
「あぁ……攻略サイトみたいな? やっぱりヒヨリンってガチ勢だよね!」
そう言うと、日和ちゃんは首を横に振る。
「ううん。私は全然ガチ勢じゃないよ──ただ、カオリが楽しくゲームして欲しいから」
日和ちゃんはニコリと笑う。
私が楽しくプレイできるように、色々と調べてくれていたんだ。
私は確かにゲームは得意では無い。
それを知っているからこそ、日和ちゃんは動きやすいように事前準備をしてくれたんだ。
「ありがとうヒヨリン!」
「良いってこと。さて。じゃあ、次はカオリがスキルを何か使ってみ」
日和ちゃんがそう言うと、再びイノシシがこちらに突撃してきた。
私は初期装備の杖を構えて深呼吸する。
「『ウィンド』!」
大きな声で唱えると、杖の先から勢いよく風が巻き起こり、イノシシに直撃した。
イノシシは悲鳴を上げてポリゴン状の粒子となって空中に飛散し溶けた。
今のは『基礎属性魔法(小)』というスキルだ。
普通の役職だとレベル上げで覚えられるスキルだが、魔法使いだと初期段階で習得している。
火、水、風、岩、雷、氷の六つの属性が存在する。
今の私が放ったのは風属性だ。
「お見事! 風属性チョイスとは分かってますなぁ」
日和ちゃんが私の顔をグリグリと触る。
どうやら日和ちゃんのお気に入り属性も風らしい。
やっぱり波長が合うなぁ。
「さて。それでこの後はどうする? もっと奥に行きたいなら付き合うよ?」
日和ちゃんが提案する。
私は勿論満面の笑みで頷く。
「うん! 目指せ未開の大地へ!」
私は日和ちゃんと共に平原を歩き始める。
道中、日和ちゃんは私に色んなことを教えてくれた。
「そいやさっき。イノシシ倒した時レベル上がったでしょ? その時に何か貰えなかった?」
「え? そ、そうなの?」
私はメニュー画面を開いてみる。
するとステータス画面の項目に「!」のマークがついている。
開いてみると、『ステータスポイント+15』と記されている。
それを日和ちゃんに見せてみると、驚いたのか目を見開いた。
「お。お客さん運が良いみたいですねぇ」
ニヤニヤしながら言うが、私にはさっぱり分からない。
彼女は嬉しそうに解説する。
「さっきのイノシシがそうなんだけど。低級モンスターは50%の確率で、ステータスポイントを5くれるらしいの。中級とか上級、所謂"ボス"の枠組みのモンスターは、確定で15ポイントくれるんだ」
「へぇ……でも、さっきのモンスターは低級何でしょ? 何で15あるの?」
「それはレベルアップの恩恵だよ。レベルアップするとステータスポイントを必ず10貰えるから」
「あ! そう言うことなんだ!」
つまり私は、初めてのモンスターで運良くステータスポイントを貰えて、初めてのレベルアップを経たってことなのか。
「そうなんだ……じゃあポイントさっそく振り分けようかな」
私はステータス画面を確認する……と。
「……待ってカオリ。画面閉じて」
日和ちゃんがそう急かしてくる。
私は慌ててステータス画面を閉じると、前から誰かがやって来た。
背丈は私達と同じくらいの男の子だ。
背中には日和ちゃんと同じく初期装備の剣を背負っている。
体には鎧なども特についていない。
私達と同じレベル帯の人なのだろうか。
男の子と目が合った。
「──」
お互いに特に何も言わずにすれ違う、と思いきや。
「この先を攻略するなら。特定のスキルを持ってないと進めないぞ」
男の子が唐突に私達に言った。
日和ちゃんがそれを聞いて尋ねる。
「貴方は攻略したの?」
「いやまだだ。そのスキルが無かったんでね」
「だったら何でその情報を教えちゃうの? 自分だけ知っておけば初見攻略できるんだよ?」
「別に俺はそこまでガチじゃない。攻略班もたどり着いて無い未開のダンジョンに、無策に突っ込むつもりは無いのでね」
男の子は「じゃ」と手をひらひら振りながら去って行く。
私は日和ちゃんを見つめる。
「ど、どうする? そんな私達特別なスキル持って無さそうだけど……」
「うーん……まぁ行くだけ行ってみようか。無理そうなら引き返そう」
日和ちゃんはそう言うと構わずに歩き始める。
私もその後に着いて行った。
続く




