第二十九
翌日の昼。
私はお昼を食べようと日和ちゃんに声をかけようとする。
だが、日和ちゃんは机に突っ伏して「すぅ」と寝息をたてている。
私は「寝てる……」と言いながらため息をつく。
「……まぁたゲーム疲れか」
日和ちゃんは良く授業中も眠るくらいゲームによる疲れを引き起こしやすい。
それ程ゲームに集中しているのが分かるが、授業中眠るのは先生にも注意されている。
最近は授業中ではなく、休み時間に寝るようにしてるみたいだが、授業中もウトウトはしている。
「仕方ない。今日は一人で……いや待てよ」
私はハッと何か閃いた時。
クラスメイトの男の子が話しかけてきた。
「なぁ香織。後輩の子がお呼びだぜ?」
「あ、ありがとう! ──噂をすればだね」
私は扉から廊下に出ると、そこには守君の姿があった。
右手にはお弁当の包まれた袋を持っている。
「香織先輩! 一緒にお昼でも……って日和先輩は?」
「えっと……ぐっすりお眠り中」
「え? あぁ……ゲーム疲れですか?」
「うん。ごめんね」
つい謝ってしまうが、彼は気にする素振りを見せずに首を横に振る。
「大丈夫です。じゃあ僕一人でご飯食べます」
「あー! いやいや私も行くよ! 話したいこともあるし!」
「え、あ、はい! 分かりました!」
私達は二人で屋上へと向かい、弁当を広げる。
そしてしばらくして私は彼に気になっていた質問をする。
「ねね。守君。一つ聞きたいんだけどさ」
「何ですか?」
「守君ってさ……日和ちゃんが好きなの?」
「え……はい」
「え、随分あっさり認めたね?」
「は、はい……事実ではありますから」
顔を真っ赤にする守君を見て、私は微笑する。
「きっかけは?」
「え、えっと……先輩とは去年の文化祭で初めて会いまして」
「えっと……去年ってことは。え、まだ守君って入学してないよね?」
もしかしたらと思い尋ねる。
すると彼は頷く。
「僕が初めてこの学校に来て、興味があったアトラクションがあってですね……それが先輩達のクラスでした」
「私達のクラスは……謎解き脱出ゲームだったね」
去年の懐かしい記憶を私は掘り起こす。
私達のクラスは謎解きをしながら脱出するアトラクションをしていた。
当時、私も日和ちゃんも中で客の対応や謎解きの手助けをしたりしていた。
それを彼は、この高校に入る前──つまり中学生の時にやって来たのだ。
「初めて見た先輩は……なんというか凄く気だるげだったし。怖かったですね」
「こ、怖かったの?」
「はい。やる気も無さそうで、目つきも怖かったですから……だけど……このキーホルダーを見た時に。人が変わったように饒舌になって」
そう言って守君はキーホルダーを取り出した。
少し風化の影響かイラストが剥がれかけているが、何かゲームのキャラクターが描かれている。
「これ……何のキャラクターなの?」
「"リサーチャーデッド"っていうゲームのキャラクターです。だけど、早期購入特典の数量限定品なので。あまり手に入らないものなんです」
「へぇ。日和ちゃんも持ってるの?」
「はい。だからこれを見て同志だと思ったんでしょうね。謎解きの手助けそっちのけで話をしてしまって。それで、僕は誓ったんです」
守君はキーホルダーを大事そうに握りしめる。
「絶対にこの高校に入学して。先輩にもう一度会うって。だから、全然偏差値足りてなかった分、ゲームを封印して入試対策に励みました。進路の先生には驚かれましたね」
感慨深そうに言う彼に、私は笑顔になる。
「それで。今となっては一番弟子だもんね。その努力は本当に凄いよ」
「そ、そうですかね?」
「うん! きっと日和ちゃんも振り向いてくれるよ!」
「……はい!」
守君の満面の笑みでの返答に、私も笑顔で返した。
続く




