第三十話
数日後──。
私達は運営から次のイベントの通知を受け取り、それについて会議をしていた。
ヒヨリンが指を顎に添えて「なるほど」と呟く。
「次のイベントは……ギルド対抗みたいだね」
「うん……そうみたい」
次のイベントのルールは、簡単に言えば"陣取り合戦"だ。
各ギルドごとに決められた拠点に置かれた"クリスタル"を破壊することで得点となる。
その得点を多く獲得したギルドの勝利である。
ギルドメンバーが倒されると拠点近くに戻され、ギルド得点が減る。
ただし、キルしたプレイヤーのギルドには得点は入らない。
"クリスタル"は破壊されるとゲーム時間で五分後に再生成される。
「──と言った感じかな。シンプルな陣取り合戦だね」
「うん。攻めも守りもかなり大変そう……」
「そうだねぇ……今のうちに役割決めておくか」
ヒヨリンの提案に、メンバー全員が頷く。
ゲームにおける戦略立案は、ヒヨリンが適任である事を、私は知っている。
「まず。一番の任務であろう"クリスタル"の防衛担当。個人的にはスニークさんとマモルは確定だと思ってる。ボマーであるスニークさんは攻撃というよりは妨害に長けてるからね。やれそうですか?」
ヒヨリンの問いかけにスニークさんは体を伸ばしながら答える。
「いーよー。任しといて動き回るよりも楽しそうだ」
「助かります……そいでマモル」
「は、はい!」
「マモルは盾使い……だから勿論防衛に向いてる。ただ、初めての大舞台だけど、やれそう?」
「……大丈夫です! 先輩に鍛えて貰いましたから! 全力を尽くします!」
「……期待してるけど。無理と張り切りすぎは禁物だからね」
「はい!」
二人の会話を聞いたスニークさんが私に耳打ちする。
何やらちょっと楽しそうだ。
「良いコンビだね。二人」
「……そうですね」
私も思わず笑ってしまう。
ヒヨリンは話を続ける。
「それで。攻撃担当なんですが。二種類に分けようと思ってるんだ」
「二種類? どういう事だ?」
カケルが不思議そうに尋ねる。
それにヒヨリンは答える。
「簡単に言うなら"遠征型"と"近場型"かな。遠くのギルドを狙う人と近くを狙う人ってところ。それで。カケルさんとカオリには"近場型"をお願いしたい」
「……あんたは?」
カケルが尋ねると、ヒヨリンは自分の胸に手を置いて言う。
「"遠征型"は──私がやる」
私を含む全員がその言葉に目を丸くする。
「た、単独でですか!? 大丈夫なんですか先輩!?」
マモル君が驚きながら言う。
するとヒヨリンが微妙そうな顔で唸る。
「ぶっちゃけ始まってみないと分からないけど……計画とかは大体練ってるつもりだから。無策に行動するつもりも無いよ」
彼女は冷静に言った。
ヒヨリンが無策に単独行動をするとは思えない。
何か作戦はあるのだろう。
私もマモル君も理解して頷いた。
「さて。イベント始まる前に色々各々で準備しましょう!」
ヒヨリンが叫ぶと、メンバー全員が「おー!」と口にする。
すると彼女はカケルに声をかけた。
「あのさカケルさん。ちょっと良い?」
「おう」
カケルが端的に返答する。
私も思わずついて行く。
彼女は「さて」と口にする。
「カケルさん。話はカオリから聞いたんだけど。体力極振りなんですね」
「堅苦しいからカケルで良い。そうだ。体力極振りだ」
「分かった──なら頼みがあるの」
続く




