第二十六話
カケルの体力が減ったのを確認し、私は尋ねる。
「それ……もしかして、強化スキル?」
「あぁ。残り体力の半分を消費する代わりに一定時間自分の攻撃力を2倍、敏捷力を2.5倍するというスキルだ」
「凄い……!」
「だけど長くは続かねぇし。耐久しづらくなっちまうのも事実だ」
彼はそう言って猫竜を鋭く見つめる。
カケルのバフは長くは続かない。
そして相手は攻撃スキルをコピーしてくる。
ここまで来たら短期決戦に持ち込む他無い。
カケルは猫竜に剣を構えて突撃する。
先程より素早くなった身のこなしで、猫竜に剣を振るう。
体力ゲージは大きくは削れなかったが、上昇した敏捷力をふんだんに活かした連撃により、みるみる減っていく。
すると、猫竜が咆哮を上げて高く飛び上がる。
目が真っ赤に光り、天に向けて鳴いた。
猫竜の頭上に大きな魔法陣のようなものが現れる。
恐らく大技だ。
「……嘘、ですよね?」
我が目を疑ってしまう。
猫竜が私達に放って来たスキルは、まるで隕石の様な巨大な岩だ。
魔法陣からゆっくりと落下してくる様は、まさに"流星"だった。
カケルが目を丸くする。
「おいおい嘘だろ……範囲外まで走れー!」
カケルの叫び声で正気に戻り、範囲外まで急いで走る。
だが"エアロスキン"込みでもギリギリだ。
当たってしまう……と私が目を閉じた時。
「くっそっ……"飛び蹴り"ッ!」
「うぇっ!?」
突然カケルが私に攻撃スキルを当ててきた。
何事かと思ったが、すぐに狙いを理解した。
攻撃スキル被弾時のノックバックを利用して、私をスキルの範囲外に無理やり追い出したのだろう。
フレンド登録をしているプレイヤーには直接攻撃のダメージは受けないが、ノックバックは受ける。
カケルの機転で私はスキルを避けられた。
だが、そのカケル本人は攻撃を受けてしまった。
「カケル!?」
私が叫ぶと、隕石の砂埃の中から人影が現れる。
カケルだった。
すぐさま駆け寄って体力ゲージを見る。
残り一割分だけ体力が残っていた。
あれだけの攻撃を受けてまだ耐えられたことと、ここまで彼の体力が一瞬で削られたことに同時に驚いてしまう。
「……ちょっと危なかったな……カオリ無事か?」
「う、うん! 私は大丈夫! カケル……凄いね」
「あぁ。これくらいしか誇れるもんはゲームにねぇんだよ」
彼はにへらと笑う。
それを見て私はほっとする。
そして私は、すぐさま杖を構える。
「……今度は私が頑張らないと!」
「コピー攻撃はどうする?」
「…………気合いで頑張ろう!」
「……りょーかい」
カケルは苦笑いしつつも剣を構える。
"ライフパージ"は効果が切れており、カケルの体力は少ない。
私の耐久力だと、彼とは違い一、二発で倒される可能性が高い。
コピー攻撃をされようとも、魔力が枯れるまでスキルを撃ち続けるしか無い。
私は杖を構えてスキルを唱える。
「"ダブルウィンド"!」
二重の風の刃が猫竜に直撃する。
その直後、コピー攻撃により相手から二重の風が放たれた。
私達は辛うじて攻撃を避ける。
相手の残りの体力は……一割だ。
「あと……私のスキル二、三発とかかな」
「そうだな……あと俺の体力も回復してきたし」
「え? いつの間に!?」
いつの間にか体力は半分くらい回復していた。
「そいや説明してなかったな。えーっと……」
「待って! 知ってる! "バトルヒーリングスキル"でしょ!?」
「……お、おお。合ってるぜ。まぁ有名だもんな」
彼は驚きながらも一応解説してくれた。
スキルの効果は『十秒で最大HPの1%を回復できる』というスキル。
シンプルながらも王道なスキルである。
そして耐久の高いカケルとは相性が良いスキルだ。
「さて……そろそろケリをつけようぜ」
「……うん! ラストスパートだね!」
私達は猫竜へと駆け出す。
続く




