第二十四話
私は猫缶を食べ終えた猫竜を肩に乗せていた。
リアルでは私は猫を飼っていないため、なんだか非常に幸せな気分だ。
すると。
「……ミャーゴン!」
猫竜が当然肩から飛び立った。
そして私達の方を見てもう一度鳴いた。
「……着いて来てってことかな」
「そうかもな。行くか」
「うん!」
私達は二人で猫竜を追いかける。
猫竜は森の奥へと進み、茂みの中に消えていった。
その茂みをかき分けて、目の前に見えたのは──。
「……うっそ」
言葉を失っていると隣からのっそりとカケルが現れる。
「どうしたんだカオ……リ」
目の前の光景を見て彼も戦慄する。
そこにいたのは先程まで肩に乗っていた猫竜の二倍以上の大きさの猫竜が寝ていた。
ぐごぉと大きな寝息をたてている。
二人は揃って苦笑いする。
「……お、お母さんかな」
「お父さんの可能性も……てかそれどころじゃねぇよ」
カケルがツッコミを入れる。
すると子供猫竜が親猫竜を起こす。
片目に大きな傷跡がついている。
親が私達二人を交互に一瞥する。
「……グルゥ」
親猫竜は踵を返す。
その後子供が喜んだように鳴き、クエスト完了のウィンドウが現れる。
私はそれに驚く。
「え、終わ……ん? また何か出た」
再びクエストのメッセージウィンドウが現れる。
タイトルは『猫竜と共に』。
説明文を読むと『助けた猫竜の親と対面。どうやら親は力を試したいようだ』。
そんな文面を見た私達は、揃って息を飲む。
恐らくこの目の前の大きな猫竜と戦うことになる。
最初の霧のダンジョンで戦ったボスとは比べ物にならない気配を感じる。
あの時よりは成長したとは言え、戦えるのだろうか。
「……大丈夫。私はやれる」
「……ちゃんと回復アイテム買ったか?」
「かっ、買ったよ!」
カケルに茶化され、私は思わずカッとなる。
だけど毒気を抜かれ、思わず笑ってしまう。
そして私はクエストの了承ボタンを押した。
それに呼応し、親猫竜は「グォォオ」と叫ぶ。
大きな翼を力強く広げ、大きな咆哮を上げながら空中に飛び上がる。
直後──猫竜の周りにエネルギー弾の様なものが複数浮かぶ。
その弾が一斉に私達に迫る。
「ちょっ!?」
私は咄嗟に弾を避けるが、カケルは攻撃を受けた。
思わず叫ぶ。
「カ、カケル! 大丈夫!?」
彼は水を浴びた犬のように顔をブルブル振り、右手でグッジョブのジェスチャーをする。
「無問題これなら余裕がありそうだ」
「えぇ……凄いね。頼りにしてるよ! あの高火力技もあるもんね!」
「高火力技……あー"ブラッドスラッシュ"か。あれなんだが……」
カケルが少し気まづそうに頬を搔く。
「あれ実は……前のメンテナンスと同時に下方修正食らっちまって……」
「え。下方修正ってどんな……?」
「あぁ。威力が"自分の体力の半分の数値"を参照するように変わっちまって。デメリットの体力半分消費は変わって無いって感じ」
そう説明する。
私はちょっと理解し切れずにポカンとする。
それに彼は補足をいれてくれる。
「今の俺の体力の数値は700なんだが、その状態でこれを放つと350ダメージの技になるってことだ。これに相手の防御力の引き算も発生するから、ちょっとボス戦だとダメージが出しずらい」
「あー……対人戦用になったんだね」
「だな。多分これだと俺程では無いだろうが体力にかなり振ってる人には、ボス攻略が簡単になっちまうんだろうな。さて、それはさておき」
改めて二人で親猫竜に向き合う。
かなりの形相で私達を見つめ、「グルル」と威嚇する。
戦いの始まりだ──。
続く




