第十七話
私は剣を構えてシャインさんをじっと見据える。
シャインさんはそれを見てクスリと笑う。
「やっぱり貴方は強い人なのね。でもそこまで身構えなくても大丈夫よ。肩慣らしだから最初は」
「……そうですね」
「でも……そっちが全力をご所望なら──別に構わないわよ?」
シャインさんは挑発するように二ヘラと笑う。
私はそれに釣られて笑う。
「……じゃあ……こっちはお言葉に甘えて──」
私は剣を両手にキュッと握りしめ、スキルを唱える。
「──"ブレイズアクセル"」
両脚に炎が灯り、敏捷力が上がる。
その瞬間、私は彼女へと距離を詰める。
続けてスキルを発動する。
「"火炎斬"っ!」
炎を纏った剣を振る。
だがそれをシャインさんは剣で受ける。
剣の刃越しに顔を合わせ、見つめ合う。
シャインさんは余裕の笑みを崩さない。
「……ふふ。楽しいわね。ちょっとこっちからも行くわよ!」
シャインさんは私を剣で弾き、距離を取る。
そして剣先をこちらに向けてながら後ろに引いた。
「"ブレードエッジ"!」
そのまま彼女は勢いよく私へと接近し、剣先を突き刺そうとする。
その速度と勢いは、まるで蜂のようだった。
「ッッ!? "跳躍"っ!」
私はギリギリで反応して空中へと撤退する。
シャインさんの突き出した剣は、先程まで私の立っていた地面へと突き刺された。
ドォンと大きな音を立てて抉られていた、ゲームでも現実でも、もし受けてしまえば終わりなのを物語っている。
空中へと逃げ去った私を見てシャインさんは感心したように笑う。
「あっはは! 良い反射神経! でも……空中でこれは躱せるのかな!?」
シャインさんは先程と同じスキル名を唱え、剣先を私に向けて突く。
するとそこから半透明な針のようなものが飛来した。
飛び道具技であることは予想してなかった。
針状の飛来物が迫り、私の腹部を貫き……。
「……ふんっ!」
私はギリギリで攻撃を剣で受けて起動を逸らした。
その勢いのあまり、地面に背中を打ち付けてしまう。
体力ゲージがごっそりと削られる。
「ぐっ……」
体が少し痺れる感覚を堪えながら立ち上がる。
シャインさんはそれを見て少し恍惚とした笑みを浮かべる。
「……ふふん。やっぱり楽しいね」
「……強いですね。シャインさん」
私も楽しくて笑ってしまう。
ここまで強い人と戦えること、そして肩を並べて渡り合えていることへの喜びが凄かった。
「……私も本気出して構いませんか?」
「っ! ふふ。良いわよ。ならこっちもそれに答えないとね!」
シャインさんの手から剣が消え、新たに武器が現れる。
それは持ち手がとても長い戦斧だった。
戦斧は戦士だと攻撃ステータスがとんでもなく高くなる代償として器用ステータスが下がる能力変化となる。
器用ステータスは武器の振りやすさに影響する。
つまり、"攻撃の間が長くなる代わりに一撃がとても重くなる"。
という状況になる。
私はさっきの落下ダメージで体力が半分くらい削られている。
私も一撃で決めに行くしかない。
「……やるしかないか──"ブレイズソウル"」
私の体に黄昏色の炎が灯る。
かつて私が戦った、炎の勇者と同じ炎だ。
"ブレイズソウル"は私が勇者のクエストで手に入れたスキルの1つだ。
効果は"一定時間自身の全ての攻撃を炎属性にする+炎属性の攻撃力を二倍にする代わりに被ダメージが二倍になる"というもの。
絶大な力の代償に自身の耐久が大幅に削られるという、ロマン砲という名に恥じない極端なスキルだ。
それを見たシャインさんは目を大きく見開く。
そして子供のように大はしゃぎした。
「あははっ! 最っ高だよヒヨリンちゃん! 」
シャインさんは戦斧を両手に持ったまま、私に突撃してくる。
戦斧の攻撃速度は遅い。
一発剣で受けて……"あれ"を決めれれば……!
シャインさんの振り下ろした戦斧を、私は剣で受ける。
彼女を思い切り睨み、剣に力を込める。
重なった剣と戦斧がジリジリと火花と金属音をあげる。
「──"ブレイズッ……」
私がスキルを唱えかけると、シャインさんはそれにいち早く反応し、私から距離を取った。
だけど──私の狙いはそれだった。
戦斧のような攻撃速度が遅いものは、どうしても攻撃を防がれた際に次攻撃に繋げるまでの"ラグ"が存在する。
それを嫌う人は離れるし、そうでない人は諦めてスキル等で受けに来る。
その場合のどちらにも最低限対応可能で、離れられた場合は意表が付ける──。
「……カリバー"!」
極太の炎のレーザーが、剣先からシャインさんへと放たれた。
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