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第十六話


私は最初のプレイヤーを倒したところからトコトコと移動している。

森のようなエリアに出たが、人の気配がそこまでしない。

さっきまでの活気というか、そう言ったものを感じない。


「……んー。みんな他の場所にいるのかな?」


この大会の会場範囲はかなり広いことは知っているが……さっきから一人も見かけてはいない。


「んー……ポイント稼げないよぉ」


そう思いとぼとぼ歩いていた時、足元でカチッと音が聞こえる。

何かと思い足元を見た瞬間、魔法陣のような物が現れる。

直後、魔法陣が眩く発光した。

突然の出来事で私は目を覆った。


「うぎゃぁぁあ!? 目がっ! 目がぁぁ!」


痛みの余り悲鳴を上げる。

するとどこからか声が聞こえる。


「……おんや? 誰かと思えばカオリちゃんか」


「……ぬぇ?」


私は戻りかけた視力で、声の主を探す。

そして目に映ったのは、ボサボサ髪の気怠そうな男性だった。


「……あれ? スニークさん?」


「そだよー。あー、目潰しに置いておいた罠踏んじゃったんやね……ごめんねぇまさかいるとは思わなくて」


ヘラヘラと苦笑いしながら謝る。


「そ、それは平気なんですけど……その」


私は少し警戒してしまう。

スニークさんとは今は敵同士。

それにこの罠も、敵を仕留める為のもの。

杖を握る手に、じんわりと手汗が滲む。

それを察したのか、スニークさんは微笑んだ。


「あぁそっか。安心してよ、カオリちゃんを倒そーだなんて思ってないよ。それにその気ならわざわざ目潰しした子に声をかけないよ」


「あ……確かに」


警戒したのが途端に恥ずかしくなる。

あははっと彼は笑う。


「僕はポイントとかそんなのどうでもいいからねぇ。罠を適当に撒いて性能を試したいだけだし……まぁ相手からしたらはた迷惑なやつだけどね」


「あはは……ですね」


私は苦笑いする。

その時だ。

後方で大爆発が起こった。


「んえ!?」


「おやおや? 早速引っかかって……ん?」


スニークさんが首を傾げる。

何か予想外なことが起こっているみたいだ。

私は彼に尋ねる。


「あの……どうかしたんですか?」


「……いや。今のはちゃんとした高火力罠なんだけど……ポイントもキルログも出てこないんだよねぇ」


「へ? それって……」


「……嫌なよかーん」


不穏な表情で彼は爆心地の方向を見る。

すると爆煙の中から人が出てきた。

ただ、その姿には見覚えがあった。


「あれ……カケルさん!?」


「……よう。奇遇だな」


意外だったと言わんばかりの顔になる。

スニークさんが何もピンと来てない様子だ。


「あ、スニークさん。この人は私のフレンドのカケルさんです」


「……そうなの? 随分凄いお友達だね」


「へ?」


「いやだって、彼の体力見てみてよ」


言われて私はカケルの体力ゲージを見る。

体力の減りは三分の一くらいだ。

私は思わず体をビクリと震わせる。

あれだけ派手な爆発を、三分の一の減りしか見せず、余裕のある雰囲気だ。


「君……見た感じ盾じゃなさそうだし、相当耐久力にポイントを割いてるみたいだね。普通の剣士ならもう瀕死なはずだし」


「……ま、そっすね。耐久力には多少の自信がありましてね」


何ともない口調で彼は言い、私の方を見る。

私は杖を構える。

するとカケルさんは鼻で笑う。


「ま、この大会ならバトるのが自然か」


カケルも剣を抜いて臨戦態勢となる。

前に私と攻略したダンジョンの剣だ。


「……ふぅ」


私は彼の異質な雰囲気に冷や汗をかいた。

後ろで「うーん」と唸ったスニークさんは。


「……僕は後方支援にはちょっと不向きだし、隠れておこうかな」


そう言って素早く去っていった。

私は怯える自分を奮い立たせる為に小さく口ずさむ。


「大丈夫……私はやれる! "ウィンド"っ!」


そう叫び、私はスキルを唱える。

風の刃がカケルにクリーンヒットする。

だが彼の体力ゲージは僅かしか削れない。

硬すぎる。

下手なボスモンスターより硬い気がしてきた。

それに加えて、彼には"あの技"がある。

霧のダンジョンにて、ボスモンスターを一撃で消し飛ばしたあのスキルが──。

あの時教えてくれたスキルの詳細が本当なら、ほとんど耐久にポイントを振ってない私は、下手したら一撃で倒される。

それ以外にもどんなスキルを持っているか分からない。

さっきまでの楽しかった感情が嘘のように緊張感へと豹変した。


「…………」


それを見たカケルは、ため息をついて剣をしまった。


「え?」


「やめだ……お前には恩義があるのに本気になるのも違う気がするしな」


「……えぇっと」


突然の反応に私は困惑してしまう。

後ろで隠れていたスニークさんが笑いながら出てくる。


「あはは。中立なフレンドが多いんだねぇカオリちゃん」


「……そうですね」


思わず苦笑いしてしまう。


「まぁ。シャイン相手だとここまで融通は効かないと思うけど」


「……そ、そうなんですか?」


「うん。シャインは本当にバトルが大好きだし。本気で相手を倒しに行くからね。相対したら──」


スニークさんが虚空を見つめて、噛み締めるように言う。


「多分よっぽどの実力者じゃないと厳しいんじゃないかなぁ?」




その頃──。


私はシャインさんに剣を向け、出方を伺う。

シャインさんは私を見て笑顔になり、右掌を突き出す。

そこから少し派手な剣が現れる。


「……まずは肩慣らしかな」


シャインさんが不敵に笑った。


続く

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