SS16 サクラとシンティの出会い(2)
本日2回目の投稿です。
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相変わらすの呆れた工房だ。
カルコスは、いくつかある作業机の上に無造作に置かれたままの希少素材を目にとめた。
別の工房なら、盗難が怖くて金庫に厳重にしまっておくだろう。そんな素材が、この工房では至る所に放置されたままになっている。
「はぁー」
ため息をひとつはいて、ナツメとパルトがいる場所にゆっくりと歩きだす。
歩きながら、ふと、ひとつの素材が目に入った。
(珍しいな、精霊玉か。だが残念だ。かなりバラバラになっている)
透き通った色の欠片が数十個散らばったままになっている。
(それなりの球体なら、愛好家がかなりの高額で買い取るだろう。しかし、いつも思うが貴重な素材ではある。ちゃんとしまっておけよ)
今に始まったことではない。パルトは根っからの職人なのだ。素材は使う物でしまっておく物ではない。いつもそう言って、「がはは」と笑っていた。
ナツメとパルトは、机上に置かれた一本の角を前にして難しい顔をしている。
カルコスもその角をまじまじと見ながら、異様な魔力が渦巻いていることに気がついた。
「おいパルト、変な魔力が洩れてるぞ。だいじょぶなのか」
「心配ない。角の周りには結界が張ってある」
マジか!
カルコスは呆れたようにパルトを見た。
透明で存在も感じない結界はかなり高度な魔法陣を施した巻物を使わないと張れないはずだ。そして、そう言う巻物は目が飛び出るほど高額だ。
「カルコス、結界の外からこの魔力を感じ取るとは、さすがだな」
ナツメがニヤリと笑いながら、カルコスを手招きした。
「依頼者がいたからな、本格的な戦闘は避けたんだ。それに、まだらの活動停止条件も分からないからな。ただ霧散させてしまうのはもったいない」
(S級魔物だぞ。霧散させるだけでも伝説になる)
カルコスは心の中で悪態をつく。
「雷属性か」
「ああ、風の道の加護がなければ、おれは黒焦げだったな」
『風の道』それは、エルフ系だけが授かる加護だ。
風の道の中では、重さも魔法属性も無効化される。まだらの雷が届かなかったのもうなずける。
「で、何が問題なんだ」
「おれの樹魔車両にこの角を付けたい」
そう言って、ナツメは作業場の一画に乗り入れた自分の樹魔車両を見た。
「は、できる訳ないだろう。ずっと、結界を張ってなきゃならないんだぞ」
カルコスが呆れるのも無理がない。それほど、このまだらの角から洩れている魔力は危険だ。
「手はある。パーソンがもう直ぐ到着する」
「次元箱のパーソンか。確か今は魔術学院の研究室にいるんだよな」
「ああ、シオン教授の下で学んでいる。そして、もう直ぐ帰るという知らせが伝書魔鳥で昨日届いた」
ナツメの説明を聞いたカルコスは大きくうなずいた。疑問に思っていた謎が全て繋がったからだ。
「シンティか」
「ああ、エルも一緒に来るそうだ」
「あの手紙か」
「ああ、マルコス公爵からの親書だった。エルを頼むと書いてあった」
「マルコス様からは、おれの所にも来ている。シンティを頼むと書いてあった」
「アルエパ公国で何かが起きているな」
「多分だが、魔動機関貴族が動いている」
「やっかいだな」
「まったくだ。油断はできねえ」
しばらく無言が続く。
「まあ、ここで心配していてもその問題は解決しない。常に気に掛け情報交換をしようじゃないか」
3人が顔を見合わせうなずいた。
しばらく工房は、難しい専門用語が飛び交う場となっていた。
どの位時間が過ぎただろうか、しばしの沈黙が流れる部屋に、
トントン
扉を叩く音が聞こえた。
「ナツメ兄様、サクラです。今、工房を見学することはできますか」
カルコスと2人の男が顔を見合わせた。
「だいぶ時間が経っている。さすがに待っているのも飽きたのだろう」
ナツメがそう言うと、
「シンティちゃんもおまえの工場で働くんだろ。なら、ここも見ておいた方がいいな」
パルトも賛成した。
「すまんな、シンティは『大樹の愛し子』だ。サクラの嬢ちゃんと一緒だ。まあ、しばらく工場の者には秘密にするがな」
直ぐばれるだろう。そんな顔をしている2人に苦笑いで答えるカルコス。
「サクラ、あぶない素材を保管するから少し待っていてくれ」
「わかりました」
ナツメは結界を張ったままのまだらの角を特別な次元箱の中に保管した。そして、それを倉庫に持っていった。
パルトは、散らかっている机上の物を別の作業机に移動する。
カルコスは、新たに小さい椅子を2脚用意した。
姫達を迎える準備は整った。
「待たせたな、サクラ、今ドアを開ける」
ナツメが扉を開けると、ニコニコ顔の2人の少女が目をキラキラさせて立っていた。
次話投稿は、本日17時10分です。




