Snipe(3)
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この島の中心部にある、100階建ての全面ガラス張りのタワービルディング。硝子の塔と名付けられた、この島のシンボルとなる建物だ。
89階のフレンチレストラン。ワンフロアまるまるレストランになっている店内に、座っているのは一席だけ。
この一組が、この店を貸切にしたのだ。
ミケランジェロが創った彫像のような横顔の青年は、口元を綻ばせていた。
「見てよ、めっちゃ綺麗」
青年が見ているのは、ガラスの向こうに広がる、澄んだ青空とエメラルドブルーの海の境界線。
うっとりとした溜め息混じりに、見つめていた。
青年の向かいには、同じ背格好で顔の細部のパーツだけが異なる男が立っている。
景色に眼を輝かせる青年と同じ髪型、同じ髪色の男。
だが、眼の形は青年より細く、虹彩は深緑色。鷲鼻で、そのせいか青年よりも歳上に見えた。
「先月オープンしたばかりって言うから、そりゃ綺麗だよ。このタワーひとつで、ホテル、オフィス、テナント経営までできるんだから、ここはいい物件」
鷲鼻の男は、青年が発した「綺麗」という言葉を建物に対してのものだと思ったらしく、噛み合わない返事をした。
「この島自体が、すごく良くない?」
青年は、目の前にいる男の言葉は否定せず、やんわりと風景を褒めてみる。
「この辺の島って、どこもこんな感じじゃ? リゾート開発されてる中に、現地民の生活エリアも混ざってて。なんか、ごちゃごちゃしてる」
男はわずかに眉間に皺を寄せ、鼻で笑う。
青年は、嫌味たっぷりの言葉に、苦笑いしてしまう。
青年はテーブルの上のグラスを手に取る。青年の動きにつられ、男もグラスを取る。
注がれているのは白ワインだった。
「こういう、整理されてなくて統一感のない街並みってさ」
そう言いながら、目の前の男越しに見える島の風景に、眼を遣る。
「大好き」
「大嫌い」
青年の言葉と、男の言葉はぴったり同時に重なる。
言いたいことを言うと、お互いが手にしたグラスを目の高さまで上げ、乾杯した。




