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肝試し、呪いの舘3

第一章最終話です。決戦とかオチとか謎の会話とか詰め込んだら今まで最大の長さになりました。

「ハァッ…!」


怨霊の放つ黒い珠を避ける。そのまま相手を見据えて、「《祓え!》」『退魔』を放つ。


怨霊は避けることもせず…


「グワッ!」


倒れる……と思いきや……まったく効いていないのか、少し体勢を崩しただけですぐに立ち直った。

対不死者相手に『退魔』ほど有効な魔術は無い。それはどんな不死者にも少なからずダメージを与えられることの裏返しだ。


「《祓え!》」


もう一度試みる。しかし結果は同じだった。


「ふふふ、どうして私を倒せないかわかるかい?」


「そんなの…知らない!《祓え!》」


閃光が走る。


「まったく…まだわからないのかい?私にその魔術は効かないということだよ」


閃光を受けても怯みもしない怨霊。


「なら…これならどうだ!」


詠唱を開始するアズラ。「《ストーン!》」そう、宣言する。

小さな石が現れ、飛ぶ。人間が頭にでも受ければ即死の可能性すらある魔術。しかし相手は霊体。当たる訳もなく……


「ふんっ!つまらないな…」


怨霊はそう呟くとアズラの足元に黒い沼のような物を作る。


「!?」


とっさに跳んでかわすアズラ。空中でも沼から腕のようなものが伸び、襲ってくる。ナイフで切りつけてなんとか地面に着くと、「《クイック!》」詠唱を終了して魔術を発動する。術式3のクイック、速度上昇の魔術だ。


地を駆け、腕をかわすアズラ。


「ハハハッ、もう逃げの一手かい?」


笑って余裕を見せる怨霊。


(何か…、何か必ず、弱点があるはずなんだ…)




「《祓え!》」

「《祓って!》」


襲いかかってくる大量の霊を祓い続けるテムダとカティ。すでに一人五十体は倒している。


「おかしいわね…」


「何がだ?」


「わからない?すでにかなりの回数魔術を使ってる。でも私たちにはまだまだ魔力が残っている。どうしてかしら?」


「《祓え!》…そうだな…確かに魔力は残ってる、いや、余ってる気さえする」


「この場所じゃ…《祓って!》魔力を使っても減らないの?これじゃ相手に何もメリットは無いじゃない」


「まぁ、やられなくて済むんだ。ありがたいと思うが?」


「そうね…何か裏がないといいんだけど…」


そう言って霊を撃退し続ける二人。それが間違いとも気付かず……。




「ほぅ、あの二人、なかなか頭が良いみたいだな。私のカラクリに疑問を感じるとは」


まだまだ余裕の怨霊。


「どういう…ことだ」


対するアズラはボロボロで、倒れる一歩手前だ。持ち主の危機を感じたのか霊石の欠片が光る。


「そうだな…この世との別れの前に教えてやろう。私は怨念の集合体、彼らは私の管理している空間の中でひたすら霊を倒している。つまり、彼らの倒した霊が私の力となる。

だから私は消えないのだよ!」


怨霊は勝ち誇った笑みと共に言う。


プロテクターを握りしめるアズラ。それを見た怨霊は、


「ここでは一切の転移魔術は使えない。プロテクターでは帰れないぞ?」


絶望的な状況を告げる。




「聞いた?テムダ?」


「あぁ、要するにしばらく守りに専念すればいいんだろ?」


アズラの霊石が光ると同時に、二人の霊石も光っていた。その直後から怨霊の話が聞こえていた。


「アズラ!聞こえる!?私たち、幽霊を倒すのやめるから!早くそいつを倒して!」


「《ソリッド!》」


テムダが硬質化の術式を宣言する。


「《守って!》」


相手の攻撃に合わせて護法を行う。




「このっ、ふざけた真似を…!」


いらだちを隠せない怨霊。怒りは黒い炎となりアズラを襲う。


「があっ!」


プロテクターで防ぐが限界は近い。


「ふん、その魔力では私にとどめをさすことなど出来まい……」


しかし、アズラは最後の魔力を振り絞って魔術を使う。


「《祓…え…》」


声に相応しい弱い光が飛ぶ。


「はははっ、その程度では傷一つつかんわ!」


余裕を見せる怨霊。


しかし光は怨霊に向かわず、怨霊の後ろにある紅い石に向かう!


「なにっ!?」


意図に気付く怨霊。しかし時すでに遅し。光を受けた石は……


「うわあああぁ……」


除霊の光を四散させて消えた。

紅石――魔力を拡大し、ばらまく石。


「ふう…終わった…」


一息つくアズラ。舘からは幽霊の気配は消えたようだ。






「みなさん、大丈夫…「「《祓え(って)!》」」《防いで!》…みたいですね…」


心配して損したという顔をする教師。


「す、すみません先生!ちょっと、癖になってしまって…」


謝るカティ。


「仕方ありません。一晩中幽霊屋敷だった場所に閉じ込められていたのですから…。それより…出て来なさい!」


誰にでもなく怒鳴る教師。その声に…


「ひっ!ご、ごめんなさい!」


姿を現す女生徒。


「はぁ、またあなたですかマフィナ…『異世術』はあなたには出来ないと何度言ったらわかるのですか!」


異世術――『この世』とは違う世界とつながり、魑魅魍魎を使役する魔術。上級魔術で卒業生の30%しか扱えない魔術だ。


「だ、だってどうしてもやりたいんだもん!」


「今まではあなた一人の問題でしたが、今回は他人を巻き込みました。今後一切異世術の履修及び使用を禁止します!」


「そ、そんなぁ…「わ・か・り・ま・し・た・ね!」はいっ!わかりました!」


教師の気迫に思わず了承するマフィナ。


「ふう、あなたたちは大変でしたね…ここから学園まではそれほど遠くありませんが、送りましょう」


そう言って教師は空間を斬り裂き、学園への道を作った。

空間干渉――異空間への扉を作る魔術。上級魔術だ。






「そういえば先生はサクヤたちが呼んでくれたんだよね?どうしてそんなに遅かったの?」


「え!え〜っとなんでだろ?」


「…ロックソルジャーとサクヤだけが延々と殴り合いしてた…なんとか自分が起きたから倒せたけど…」


「エ、エンカが気絶しちゃうから悪いんじゃんか〜!」


「…サクヤをかばっただけ…」


「そもそも、サクヤはあいつらの対処法知らなかったの?」


「え!え〜っと、習った?」


「ハウルが言ってただろうが。で、それから?」


「…学園に戻っても先生が全員寝てて…朝まで待ってた…」


「だから…そんなに遅かったのね…」


ハァとため息をつく三人。もう解散にした。




「深紅の舘の問題は解決しました。まったく…マフィナには困ったものです…」


「ご苦労でした。問題はあなたが解決したのですか?」


「いえ、私は後始末を行っただけです。解決したのは確か……アズラという生徒でした」


「アズラ……。わかりました、もう戻って結構です」


「はい、失礼しました」


深紅の舘に来た教師は部屋を出た。




「…アズラですか…。流石はトリストの息子、レイカの弟といったところですね…。また、『あの時』には活躍してくれるのでしょうか……?」


そう、教頭は呟いた。

名前の出たマフィナさん、出番はこれで終わりです。

…アクセス解析出来ないのがとても辛いです…。どれくらい読んでくれている人がいるのかわかりません…。早く治って欲しいです…。

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