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第2話 女が優位のこの世界

 ここはどこだろう?


 トラックに轢かれそうになったところまでは覚えている。でも、その後がわからない。


 さっきまで僕が歩いていたのは、コンビニの近くの国道。田舎だけど、それでも沿道にはファミレスや量販店が建ち並んでいたはずだ。


 だけど、今歩いている場所は、国道なんかじゃない。足元の道は舗装されておらず、土がむき出しだ。


 道路沿いに建ち並ぶのは石造りの建物。まるでヨーロッパの古都のようだ。


 それに薄暗い。いつの間に夜になった?


 しかも左右の石造りの建物からは酔客の嬌声や馬鹿笑いが聞こえてくる。


 繁華街?近所にこんな場所はなかったはずだ。なんで僕はこんなところを歩いているのだろう?


「君、どうしたの?」


 急に後ろから声を掛けられてビクッとした。振り向くとさらに驚いた!!


 そこにいたのは、赤毛に真っ赤な瞳のスレンダーなお姉さま。どう見ても日本人じゃない。欧米人?

 

 いや、それよりも違和感があるのはその服装だ。セパレートタイプの革の鎧に真っ赤なローブ。むき出しのお腹とスラリと伸びた肢の白さが蠱惑的だ。


「あっ、いや……あの…」


 肌色の面積が大きすぎて直視できない。


 近くで国際コスプレ大会でもやってるのか?

 そんなの聞いたことないけど。


「このあたりは治安が悪い。か弱い男が一人で歩くような場所じゃない。迷い込んだのならさっさと家に帰ったほうがいい」


 その赤毛のお姉さまの声は凛として美しかった。

 だけど、その声よりも彼女の言葉に少し引っかかる。


 か弱い男?


 確かに筋肉ムキムキの屈強とは言えないけど、か弱いなんて心外だ。


 もしかしたら間違って夜の街に迷い込んでしまった僕を心配してくれたのかもしれない。


 だったら、助言通り早く立ち去った方がいい。

 

 僕は「ありがとうございます。すぐ帰りま~す」と言って、小走りにその場を立ち去った。


 でもやっぱりおかしい。もうちょっと様子を見てみよう。


 少し歩いたところで立ち止まり、あたりを見回すと、ちょうど道路沿いの店から出て来た、別のお姉さま二人と目が合った。


 思わず、僕の視線が釘付けになる。この二人が色違いのビキニアーマーを着ていたからだ。さっきの赤毛のお姉さんより、さらに肌の露出が多い。

 しかも露出されているお腹は、見惚れるような見事なシックスパックだ。


「おっ?兄ちゃん、どうした?」


「わたしたちと一緒に遊びたいの~?」


 お姉さま達が、いかにも酔っ払いというようなとろんとした視線を向けてきた。


「あっ、いえ。すみませんでした」


 慌てて目を伏せて立ち去ろうとしたが、それよりも早く、二人のうちの一人、栗毛で金色のビキニアーマーのお姉さまに腕を掴まれた。


「かわいい顔してんじゃ~ん。どこの店の子?そこで飲み直そっか?」


 逃げようとすると、もう一人、銀色の短髪で、銀のビキニアーマーを着たお姉さまが立ちふさがる。


「こんなうぶなんだから、お店の子じゃないでしょ?かわいいな~。じゃあ、お姉さんたちの宿で一緒に飲もうか~」


 酔っ払いに絡まれてしまった。逃げよう。

 そう思って掴まれた腕を振り払おうとしたけど、びくともしない。


「や、やめてください……離してください」


「遠慮しなくていいって。おごってやるから一緒に飲もうぜ」


「こんな美人のお姉さま二人をはべらせて飲めるんだ。不満なんかないでしょ?朝まで付き合ってもらうよ~」


 掴まれた腕を振りほどくどころか、そのままずるずると引っ張られてしまう。まったく抵抗できない。


 この女の人、こんなに華奢そうなのに、どうしてこんな力が出せるんだ?


「や、やめてください!そんなつもりじゃ……」


「いいっていいって、遠慮するなって、ギャハハッ~」


 二人はまったく聞く耳をもってくれない。まずい。このままだと宿屋へ引きずり込まれてしまう。


「た、たすけて~」僕がそう叫んだ時だった。


「ナディア、サンドラ!!何をしている!!」


 すがるようにその声の方を見ると、さっきの赤毛のお姉さまが腰に手を当てて立っていた。


「ソ、ソフィアさん……」


 僕を引っ張っていた二人がピタリと動きを止め、明らかに怯えた表情をしている。


「そいつはどう見ても商売男じゃない。素人だろうが。ナディア!手を離せ!!」


 ソフィアと呼ばれた赤毛のお姉さまの一喝で、ナディアと呼ばれた栗毛のお姉さまがやっと僕の腕を放してくれた。


「男と遊ぶなら、ちゃんとプロと遊ぶことだ。サンドラ、受け取れ!!」


 ソフィアは、二人の方に小さな革袋を投げ、二人組のうち、サンドラと呼ばれた銀の短髪の方がそれをキャッチした。


「ありがとうございます。ソフィアさん」


「すみませんでした、それでは失礼します」


 二人組はペコペコと頭を下げて、そそくさと去り、その場にはソフィアと僕だけが残った。


「君も気を付けなよ。こんなところをフラフラ歩いてるからこんな目に会うんだ。これに懲りたらさっさと家に帰りな。と、言ってもまた変なのに捕まるかもしれないな。あたしが家まで送ってあげよう。君の家はどこだ?」


「は、はい……あの……」


 ここがどこかわからない以上、家の場所もわからない。


 いや、この状況を見ると、間違いなく僕は別世界に来てしまっている。そうするとこの世界に僕の家なんてない。


「遠慮することはない。この街を男一人で歩くのは危険だ」


 そう言われても僕は目を伏せることしかできない。


「……もしかして、君は宿なしか?」


「はい…。気づけばここに迷い込んでしまっていて……」


「ふ~ん……そうか~」


 ソフィアは顎に手を当てて目を閉じ、思案顔になった。


 いったい何を考えているのか?そう思う間もなく、彼女はまた目を開けた。


「じゃあ、うちにくるか?家のことをしてくれたら、飯くらいは食わせてやる」


 この彼女の一言で、この新世界での僕とソフィアの生活が始まった。


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