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第18話 二人だけの戦い(2)

「うじゃうじゃいるな……」


「ほんとに……渋谷のスクランブル交差点みたいですね」


「??なにそれ?」


 街を出て街道をしばらく歩くと、さっそくアンデッドの群れを見つけた。ざっと百頭くらい密集しているだろうか。


 ゾンビだから知能はなく、遠目に見てるとただのろのろと徘徊してるだけ。だけど人が近づくと急に凶暴になって噛みついたり、掴みかかってくるらしい。


 これだけ数がいると、街道を走る馬車も人も、距離を置いて避けるわけにはいかないだろう。危険であることに変わりはない。


「じゃあ、さっそく作戦通り始めますけどいいですか?」


「ああ、よろしく頼む。あの森とかが隠し場所にいいんじゃないかな?」


 エリーゼが指さした森を見ながらうなずく。


 エリーゼが立てた作戦はこうだ。

 彼女によれば、アンデッドは魔力に惹きつけられる習性があるらしい。その習性を利用して、僕が全身に魔力をみなぎらせ、アンデッドを惹きつけて歩く。そのままハーメルンの笛吹きみたいにアンデッドを引き連れて街道から離れ、森の中とか崖下へ誘導し、そこを好きなだけ徘徊させる。


 街道から目が届かない場所に隠してしまえば、少なくとも視察団がアンデッドの大量発生に気づくことはないはず。


 早い話が討伐ではなく、隠ぺい工作だ。


「ハアッ!!」


 気合を入れて魔力をみなぎらせてバフを掛けると、さっそく近くのアンデッドが反応した。


 僕がゆっくり後ずさるとアンデッドたちがゆっくり付いてくる。そのまま森の中へ誘い込む。それからバフを消し、素早くアンデッド達を残した森を脱出して、また街道に戻る。


 これを何度か繰り返すと、街道のアンデッドの数は目に見えて減ってきた。


「おおっ!!うまくいってるぞ!この調子だ!!」


 頬に涙の跡を残したままのエリーゼが、もう笑った。


 言うまでもなく、魔力が無いエリーゼはこの作戦の役にはまったく立っていない。ただの応援要員だ。


「頑張れ!すごいぞカズキ!!さすがカズキ!!」


 何の役にも立たないと思ってたけど、すぐ隣でおだてられると少しいい気分になってくる。よしっ、もうちょっと頑張ってみるか!!



 そうこうして1時間あまり経ったころ、ほとんどのアンデッドを街道から引き離すことに成功した。


 しかし……、どういうわけか僕とエリーゼは小高い丘の上に追い込まれてしまった。麓からは、四方八方からアンデッド達が僕たちに向かって少しずつ迫ってくるぞ。


 なんでだ?いつの間にこうなった?


 エリーゼを振り返ると、彼女もガタガタと震えている。


「どうしてだ?アンデッドには意志がないはずだ。知能も低いし、各自バラバラに徘徊するだけ。こんな組織的な行動をして、わたしたちを逃げ場のない丘の上に追い込むなんて……絶対におかしい」


 さっきまでの光景を思い出してみる。


 アンデットたちは最初まったくばらばらに動いていた。


 そして数が増えてきて森の中に入り切らなくなったから崖の向こうに誘導しようとした。


 そしたら一部のアンデッドは僕たちを追って来たのに、残りのアンデッドは僕たちを追いかけず、迂回して僕らの退路を塞ぐようにゆっくり動き、いつの間にか囲まれていた。


 もしかして、あえて僕たちを崖の上におびき出し、包囲網を形成した?


 どうして?アンデッドは意志を持たずに徘徊するだけじゃなかったの?


「こんな動きをするなんて……もしかして指揮官がいるのかもしれない」


「……そういえば、ソフィアが言ってました。もしかしたらネクロマンサー…?っていうがいるんじゃないかって…」


「ネクロマンサー?そんなの聞いてないぞ!!」

エリーゼが裏返った声で叫んだ。


「まずいんですか?」


「バカッ!!ネクロマンサーは、アンデッドとかスケルトンを操る伝説級のモンスターだ!!つまり、ここにいるアンデッドはバラバラに動いてるわけじゃなく、ネクロマンサーの指揮を受けてるってわけだ」


「へ~っ。そんなのいるんですね。それじゃあこの状況をどうしたらいいんですか?」


「大バカッ!!絶体絶命に決まってるだろ!!」

 怒鳴るエリーゼ。ただその目は完全に泳いでいる。


 エリーゼがこうなってしまうと、僕が冷静になるしかない。


「まずは落ち着いて対策を考えましょうよ。何か策はあるはずです。課長はいい大学を出てるんでしょ?知恵を出してくださいよ」


「馬鹿にするな!わたしはいい大学どころか、飛び級でいい大学院も出てるんだぞ!!まあ、考えてみるか……」


 エリーゼは顎に手を当てて考え始めた。この瞬間にもアンデッドがゆっくり丘を登ってくる。


「まだですか!!」


「焦らせないでよ。こいつらの動きを止めるためには、ネクロマンサーを倒す必要があるんだ。だけど、ネクロマンサーはこの中にはいない。きっとここから見えない場所に隠れてこいつらを指揮してるはずだ」


「見えない場所にいるのに、なんで僕らの動きがわかるんですか?」


「きっと魔力の動きを探知してるんだろうが……いずれにしてもアンデッドに包囲されているんだ。この包囲を突破してネクロマンサーを攻撃することは難しい」


「なるほど……」


 つまり、生き残るためにはネクロマンサーを倒さなければいけない。そうしないと、早晩このアンデッドの包囲の中で食い殺されてしまう。


 だけど、ネクロマンサーを倒すためには、まずこの包囲を突破しなければいけない。


 いったいどうしたら……。


 僕たちはまさに絶体絶命。万事休すの状況に震えていた。


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