095 PVPの受諾
猫さん達の闇取引のせいで、私の緊張はどこへその。ブラックパーティはすぐそこまできていたので、私とアイは走って近付いて行った。
そしてある程度の距離まで近付いたところでストップ。2人して腕を組んで仁王立ち。ブラックパーティの通せんぼだ。
「君達、僕達に何か用かい??」
私達が道を塞いでいると、リーダーのユウヒって名前の若い男が優しく声をかけてきた。猫被ってやがるな。猫さんはもうちょっと猫を被れ。
「あ、そういう演技いらないんで。私達、全部知ってますから」
「ん~? どういうことかな~?」
「マユは私の親友なんです。使い潰しなんかさせません。即刻、返してください」
ユウヒは私とマユを一瞬鋭い目で見たが、すぐに笑顔に戻った。
「いったいなんのことかな? 身に覚えがないんだけど」
「だからそういう演技いらないんで。そもそもおかしいでしょ?」
「何がおかしいんだい?」
「6人いる時点ですよ! ストーリーをクリアーするなら、5人が常識! あなた達、マユとパーティ組んでないでしょ! それすら教えてないんでしょ!!」
私が怒鳴り付けると、ブラックパーティは目の色を変えた。マユは~……知らなかったんか~い。めっちゃ驚いてらっしゃる。
「はあ? それぐらいこいつは理解して俺達に付いてきてんだよ。なあ? マユ、言ってやれよ。俺達に恩があるもんな~??」
急変したユウヒの態度に、アイが噛み付く。
「そんな言い方したら、マユちゃんが怯えるでしょ。それ、DV男のやり方ですよ?」
「DV……はあ~? 俺のどこがDVなんだよ。暴力なんて振るってませ~ん」
「いつの時代の男なんですか? このご時世、言葉や態度でもDV認定されるんですよ。時代錯誤も甚だしいです。小学校からやり直されたらいかがですか~?」
おおう……アイ、言うね~。法律持ち出すなんて、マジ賢い。ブラックパーティも黙っちゃったよ。
「うっ……うっせぇ! ここはゲームの世界なんだよ! 法律なんて通用するか! マユは俺達の仲間だ! それだけが事実だ!!」
ユウヒはブチギレ。煽り耐性なさすぎ。では、私の出番ですね。
「ハッ。力でか弱い女の子を拘束してるだけでしょ。どこが仲間なのよ」
「うっせぇ! 黙れ!!」
「黙りませ~ん。騙した女の子の手を借りなきゃストーリーも進められない男の言葉なんて、怖くもありませ~ん」
「っざけやがって……ブッ殺してやる!!」
言質! いただきました~!!
「あ、PK? PKなの??」
「誰がPKだ!?」
「ブッ殺してやるって言ったじゃないですか~? 正式なPVPもできない小さい男なんですよね~??」
「ふざけるのも大概しろよ……PVPしてやるよ! 死んでも文句言うなよ!!」
「はぁ~い。じゃあ、私が勝ったらマユをいただくね」
「ああ。くれてやる! その代わり、その装備と金を根刮ぎ奪うからな!」
「わぁ~。追い剥ぎだ~。コワイコワ~イ」
「ナ、ナメやがって……さっさと申請受けろ!!」
これだけ煽ればいいだろうとアイを見たら、「やりすぎ」って感じで頭を押さえてた。何故に? その後ろにはお兄ちゃんパーティがドン引きの顔……解せぬ。
とりあえず私は、ニヤニヤしながらPVP申請を受けて準備をしてるフリをするのであった。準備万端できたもん。てか、猫さんの言う通り、アイの装備も奪おうとパーティ用のPVP申請しやがった。バッカだな~……
「カ、カノ……」
私がアイと喋っていたら、お兄ちゃんが青ざめた顔でやってきた。その顔をやめろ。
「どうしたの?」
「ユウヒと本当に戦うのか??」
「うん。そうだけど」
「マジか~……ユウヒ、新人の中では飛び抜けてるヤツだぞ」
「へ? マジで??」
「マジでマジで」
どうやらブラックパーティのユウヒは、けっこう有名人らしい。進捗具合もその理由だが、今のところPVPでは負けナシなんだって。
「へ~。猫さんには楽勝って言われたんだけどな~」
「マジで?」
「10回やったら9回勝てるって。マジでマジで」
「またネコさんか~~~……なんか3人でホッコリ見てるぞ?」
「思い出させないでよ~~~」
今まで猫さんのことを忘れてたのに! なんで怪しいトリオで串団子食べながらお茶すすってるのよ! 仲良しか!?
またしても私の緊張は猫さんのせいでどこへその。私は肩を落として開始場所へ向かうのであった……
「あ~……偶然いた誼で、俺が開始の合図していいか?」
お兄ちゃんがレフェリーに立候補してくれたけど、それは無理があるのでは? 私とも喋っていたでしょ??
「ハルなら構わないぞ。てか、早くしろ」
いいんだ。でも、まだ始められては困る。
「お…ハルさん。これから何が起こっても最後まで手を出さないでね? 最後までってのは、私が勝ったあとのことも言ってるからね??」
「なんかよくわからないけど……」
「わかって。最後まで。いい? ゼロまで」
「はあ……手を出さなければいいんだな。わかった」
本当にわかったのかな~? 心配だ。
「ハッ。俺に勝てるってか。やってみろよ。ブス」
「はあ~? 誰のいも……」
「ハルさん! 早く始めて! 私がブッ殺してやる!!」
「おう! やってしまえ!!」
いつ妹と言うかも心配だ。お兄ちゃんは、私がブッ殺すと言っても背中を押してくれたから、それも心配だ。
でも、今は私のことをブスって言ったこいつを、完膚なきまでにブッ殺したいの~~~!!
という感じで、戦いの火蓋が切られるのであったとさ。




