094 急展開
猫さんのPVP指導を受けて3日……日曜日となった。
今日はブラックパーティがストーリーの攻略を再開する日。マユを奪うなら、一番ダメージを受ける日にかっさらってやろうと計画していたのだ。フフフ……
本当は猫さんのアイデアです。私達にはそんなあくどいこと思いも付きませんでした。本当だよ? JKだもん。
始まりの町のポータルで待ち合わせしていたアイと合流した私は、意気揚々と町を出た。
「あれ? お兄ちゃん、こんなところで何してるの?? マーヤさんまで……」
始まりの町の門には何故かお兄ちゃんとマーヤさんの姿。他にも3人の男女がお兄ちゃんとお喋りしていた。
「きたか。昨日、ネコさんが急に俺の前に現れてな。カノがヤバイパーティと PVPするから、危なくなったら助けてやれと言われたんだけど……本当にPVPなんかするのか??」
「するけど……ええ~。お兄ちゃんが付いてくるの~?」
「そんなに嫌そうな顔するなよ。ネコさんに頼まれたんだから。パーティメンバーも集めてやったんだぞ」
「うぅ……その猫さんは?」
「忙しいからこれないとか言ってたけど……」
「昨日は行けたら行くって言ってたのに!」
「たぶん嘘だな……」
お兄ちゃんに保護者を頼むぐらいなんだから、嘘なんでしょうね!
「マーヤさん。巻き込んでゴメンなさい」
「ううん。パーティメンバーの妹は身内みたいなものよ。みんなも協力したいって。案外お兄さん、人気者なのよ?」
「うっそ……」
「なんでマーヤには謝って俺には疑惑の目を向けるんだよ」
お兄ちゃんだからです。パーティメンバーには満面の笑顔で挨拶しました。みんないい人そうです。こんな兄のどこがいいのでしょうか……
ひとまず私はマーヤさんに、アイの紹介と謝罪。2日前に料理教室で会う予定だったけど、訓練で忙しかったからキャンセルするしかなかったの。マーヤさんは「気にしないで」と言ってくれました。やっぱり優しいお姉ちゃんだ。
わざわざ私達のために集まってくれたのにマーヤさんとばかり喋っているワケにもいかないから、歩きながらお兄ちゃんのパーティメンバーと喋る。
なんということでしょう。全員、お兄ちゃんと野良パーティを組んで、普通に仲良くなったそうです。私にはできない芸当です。でも、信じられません。兄ですから!
ちなみにパーティ名はプラネットセイバーというらしい。惑星の救世主なんて、お兄ちゃんが付けそうな名前だ。妹として恥ずかしい。あ、みんな気に入ってるのですか。そうですか。
みんないい人だから和気あいあいと喋りながらやってきた場所は、始まりの町から西にある洞穴型ダンジョン。ストーリーを進めると、2番目に必ず通る場所らしい。
ただ、レベリングだけをする人も少なからずいるので、私達が洞穴の入口付近で座って喋っていると、何組ものパーティが中に入って行った。
そろそろマユから聞いた、ブラックパーティの攻略時間。私は立ち上がって始まりの町がある方向を見ていたら、6人組の人影が近付いてきた。
「たぶんアレだね」
「だね。緊張する~」
1人多いってことはマユ達だ。私はアイの手を握り、お互いの緊張を解していたら、黒い獣がブラックパーティを追い越して行った……
「モンスター??」
「いや、たぶん騎獣だろ。この辺にあんな強そうなモンスターいないし」
「ねえ? おっきな鳥もこっちに向かってきてるよ??」
「本当だな。たぶんアレも騎獣だと思うけど……」
お兄ちゃん達ですら知らない謎現象×2。たまたま強いプレイヤーが待ち合わせしていたのではないかとの結論に至った頃に、騎獣は私達から少し離れた場所に集まった。
「なあ……あの小さいプレイヤーって……」
その中心には、見たことのあるフード付きマントを着た子供。お兄ちゃんも昨日見たから、誰かはわかったみたい。
「猫さんだね……」
きてくれたのは嬉しいよ? その登場の仕方はどうなの? なんか黒塗りの騎獣に乗ってきた怪しい人と喋ってるし~~~!!
「誰と喋ってるんだ?」
「猫さんの知り合いなんて……あ、あれ、ロッコさんかも?」
「ロッコさんって、最古の薬屋の??」
「うん……ギャングみたいな見た目だから、たぶん合ってると思う」
「うお~。初めて見た~。店に行っても顔を出さないんだよな~……あっちの黒ずくめのは誰か知ってるか??」
「さすがにわからないや……いや、なんか見たことあるかも? う~ん……あっ! 闇ギルドのギルマスかも!?」
一瞬でも、あの黒ずくめは忘れない。殺すと言われたもん!!
「闇ギルドのギルマス?」
「ほら? 私が『たぶん怖い人』に会ったと言ったら、パパが『それは本当に怖い人』って言ってたヤツ」
「はあ? そんなワケのわからない人とネコさんは知り合いなのか!?」
そういえば、この話してなかったね。てか、闇ギルドすらお兄ちゃんが知らないってことは、本当に闇なんだね……
「その闇ギルドの人に、ネコさんお金渡してるみたいだけど……」
「み、見なかったことにしよう……」
「ロッコさんには、なんかアタッシュケースを渡してるんだけど……」
「み、見なかったことに……できるか! なに怪しい取り引き、こんなところでしてるのよ!!」
今日は私の大事な日。そこで闇取引なんかする~?
「カノ、カノ……もうマユちゃん達、すぐそこなんだけど……」
「もう! 猫さんのせいで緊張台無しじゃない!?」
私が怒鳴ると、お兄ちゃんはアイの言った人物に引っかかる。
「カノ……マユちゃんってなんだ? もしかして、マユちゃんもPHOやってたのか??」
「もう! 猫さんはちゃんと説明しといてよ! あとで話すから、お兄ちゃんは黙ってて!!」
急展開。本当は急展開になんかならないぐらいの待ち時間はあったのに、猫さん達が闇取引なんかするから余裕はなくなったので、私は慌てて走り出したのであったとさ。




