093 猫さんのPVP指導
マユからブラックパーティの情報を得て、猫さんの目を盗んでツリーハウスのリビングでアイと作戦会議をしていたら、すぐに見付かって追い出されそうになった。てか、いつからいたんだ。入ってくるなら音を立てろ。
私とアイは家具や柱にしがみついてテコでも動かない構え。猫さんも諦めたのか、ため息吐いて椅子に座り、テーブルの上に乗っていたノートを手に持ちペラペラと捲る。
これは許されたんじゃないかと、私とアイは目配せして、元の席に着いた。
「てかにゃ~……」
猫さんはノートを開いてテーブルに置くと、トントンとノートを人差し指で叩いた。何かアドバイスしてくれるのかと、私とアイは耳を傾ける。
「吾輩が紙を作ってるの知ってるにゃろ? これ見よがしにノートを見せびらかすにゃよ~」
「「ズコーッ!!」」
アドバイスじゃなかった。あまりのことに、2人でずっこけたじゃない!
「50年ぐらい前のノリだにゃ……マジでJKにゃの?」
「「JKです!」」
「アドバイスじゃなかったのですか!?」
「邪魔するなら出てってください!!」
「吾輩のツリーハウスにゃんだけど……あ、はい。黙ってにゃす」
2人で噛み付く仕草をしたら、猫さんが折れた。ライオンにでも見えたのかな? JKだよ!
ノートも奪い返したら、さっきまでのやりとり。ああだこうだ言ってると、猫さんは人数分お茶をいれてズズズーっと飲んだ。
「てかにゃ~……あ、今度はまともなアドバイスにゃよ? 歯を剥くにゃ~」
私達が「グルルゥゥ」と唸りながら睨むなか、猫さんは続ける。
「頭でっかちすぎるにゃよ?」
「「頭でっかち??」」
「実践にゃ。吾輩が相手になってやるから、外に出ろにゃ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「声に出して会話しろにゃ~」
私達が目で語っていたことは、「何か裏があるのでは?」と「ツリーハウスから追い出すのが目的では?」だ。そうじゃないと猫さんが付き合ってくれるとは思えないもん。
「いいにゃら別にいいにゃよ? 外で焼きイモ焼いてたんだけどにゃ~……」
「「お願いします!!」」
「食べ物絡むとチョロすぎるところ、直したほうがいいにゃよ?」
「「あっ……あはは」」
焼きイモはまだ少しかかるらしいのでPVPからだって。チェッ。
「さっきノートで見た敵の情報通り戦ってやるから、1人ずつかかってこいにゃ。全員と戦っておけば、本番でも予期せぬことにも対応とかできるからにゃ」
「じゃあ、私から行きます! マユの仇~~~!!」
「その気合は本番まで取っておけにゃ~」
「カノ……マユちゃんは死んでないよ?」
私の気合のかけ声と、猫さんとアイのため息まじりのツッコミと共に、実践訓練が始まるのであった……
「「ゼーゼーゼーゼー……」」
戦い初めて30分。私達は交互に猫さんが扮したブラックパーティと戦ったが、掠りもせずにご臨終。猫さんが焼きイモが焼けたと持ってきたら飛び起きた。
「もっと手加減してくださいよ~」
「ふたりして1回も当たらなかったです~」
「いい攻撃の時はヒットと教えてやったにゃ~……聞こえてなかったにゃ?」
はい。ムキになって、まったく聞こえてなかったです。
「カノの勝率は、リーダーの剣士は9割、盾役は8割、残りは問題なかったにゃ。隙もちゃんと狙えていたからにゃ」
「それでも負ける可能性はあるのですね……」
「当たり前と言いたいところにゃけど、盾役の時、ムキになって盾の上から叩いてたにゃろ? もっと頭を使って戦わにゃいと、ラッキーパンチ喰らって負けるにゃよ?」
「うぅ……堅い守りって初めてで……」
猫さんから軽く助言をいただいたら、焼きイモをパクリ。アイへの助言もちゃんと聞く。
「アイの場合は、リーダーと盾役は2割、アサシンは3割、後衛は5割の勝率ってところだにゃ~……」
「はい……全然、歯が立ちませんでした。これではヒーラー1人も倒せません……」
「速攻狙いにゃから、それを完璧にしなきゃだにゃ。ちょっと作戦変更は視野に入れたほうがいいんじゃにゃい?」
「と言うと??」
アイが焼きイモを少し齧ったけど、猫さんはそのまま続ける。
「カノがタイマンで勝つにゃろ? そのあとゴチャゴチャ喋って向こうが攻撃するってのを待つことにしてたのを、カノが勝った瞬間にヒーラーを襲うんにゃ」
「汚い……けど、それぐらいやらないとダメかも……」
「まぁ、対人戦は慣れにゃ。慣れたらもう少し勝率は上がるにゃろ。今は頭にだけ入れておけにゃ」
「はいっ!」
焼きイモをお腹に入れたら、訓練の再開。ちょとずつよくはなっているらしいが、猫さんに一切攻撃が当たらないので、自信はまったく付かない私達であった……
翌日……
「もうね。猫さん強すぎなんだよ~」
学校でマユに私の愚痴を聞いてもらっていた。
「そんな強い猫と戦うだけで、作戦は上手くいくの?」
愚痴しか言ってないから、マユは不安っぽい。
「いちおう猫さんがマユのパーティのマネして戦ってくれてるんだけど……前衛だけじゃなく、後衛も全てこなしてくれてるから大丈夫」
「よくわからないけど、普通って、得手不得手とかあるもんじゃないの? そこを突いたらなんとかなりそうに思うんだけど……」
「猫さんに得手不得手なんてないの。料理も裁縫も木工も最高峰の実力なの」
「何その神様みたいな猫……今更だけど、実在してるのよね?」
こんなに毎日喋っているのに、マユには眉唾物らしい……でしょうね。
「実在はしてるけど、ツチノコ並みにレアなの……」
私も同じ気持ちだもん。
「それってUMAというのでは……」
「うん。UMAなの~。PHOで最強で凄い人と顔馴染みなのに、誰にも知られてないんだよ~?」
「どうやったらそんな猫が存在消せるんだろうね……」
「裏で暗躍してるからだと思う……」
「やっぱりその猫から離れたほうがいいんじゃない??」
マユ救出に頑張っているはずなのに、今日も私が心配される謎現象になってしまうのであったとさ。




