089 私達のPHOライフ
始業式に登校した私。同じクラスで小学校からの親友のマユとずっとお喋りしていたからか、クラスメイトに話し掛けられても昔の感じで返せたと思う。やはり親友は頼りになる。
帰りはどうしようかと話し合い、ファーストフード店に寄り道だ。不良とかではありません。ちゃんとお互い、保護者に許可を取ったもん。
「それで貴重な体験って?」
ハンバーガーを乗せたトレイを持って席に着いたら、マユは胸がテーブルにつくくらい前のめりに問い質した。おっきくっていいな~……
「その前に、話をしておきたいことがあるんだけど……」
マユとは違い、私はコーラを一口飲んでから背筋を伸ばす。喉渇いてたの。
「話って……」
「うん……1学期の終わり、私、態度悪かったでしょ? 夏休みは家にずっといるから会えないとか言って……いつも優しくしてくれてたのに、突き放すようなこと言ってごめんなさい。できれば、マユとずっと親友でいたい……許してくれるかな?」
私が頭を下げて、すぐに上げると、マユは微笑んではいたが、目には涙が浮かんでいた。
「なに言ってんのよ。私とカノはずっと親友でしょ。ちょっとぐらい嫌な態度取られても、私は離れないんだからね……グスッ」
「うん……ありがとう……グスッ」
「なに泣いてんのよ。もお~」
「マユが泣くからでしょ~」
今日のポテトの味は、いつもより塩辛かった。そのとき私は、「猫さんならもっと美味しいポテトを作れるのかな~?」と考えてしまい、マユより早く涙が引っ込んでしまうのであった……
「もういいよね? 貴重な体験、早く聞かせて!!」
私のほうが早く泣きやんだので、マユは照れ隠しで声が大きくなってるね。
「絶対に信じられない話なんだけど……」
「もったいぶらないでよ~」
「PHOって、人間のアバターしかないじゃない? いじれるのは年齢と顔を少しと髪の毛ぐらいじゃない??」
「どれだけもったいぶるのよ~」
もったいぶっているんじゃなくて、ただの確認だ。
「私、猫のアバターの人に弟子入りしたの」
「ね、猫? 猫に弟子入り??」
ほら? 首がもげそうなぐらい傾げてる!!
「そう。その猫さん、PHOの初期からやってる古参でね。ファーストキングダムの元メンバーでスパルタスのランキングにも名前が載ってるの。私も、すっごく強くしてくれたんだ。あとあと、最古の薬屋さんや騎獣愛護クランのマスター、リハビリギルドの聖女様とも会ったの。もう、猫さんといると、驚きの連続だったよ~」
たぶん、私、猫さんの情報を喋りすぎた。その結果マユは……
「猫が師匠??」
最初のカミングアウトに逆戻りしていたのであったとさ。
「えっと……本当に本当? 猫が師匠??」
「何回戻るの!?」
ハンバーガーもドリンクもすっからかん。何度猫さんとのPHOライフを説明しても、マユは振り出しに戻るだ。
「いや……もうこれ、神話を聞かされてるような感じだから……」
「だから信じられないような貴重な体験してると言ったでしょ。猫さん、何かと規格外なの」
「まぁ……その猫さんの規格外のせいで、カノは昔に戻った感じかしら?」
「昔って??」
「よく喋って、辛辣なツッコミを入れたり……感情豊だったんだけど……」
「辛辣なツッコミってなに!? 猫さんにはツッコミが上手いって褒められたんだけど!?」
「たぶんオブラートに包んで言ってたんじゃない?」
「またオブラート~~~」
「え? なにそのツッコミ??」
私はこないだ猫さんに言われたことを伝えたら、マユは呆れた顔になった。
「オブラートに包めと言ったら、オブラートに包んだポンタンアメを作ってきたと??」
「うん。美味しかった」
「その猫、すっごく変!!」
「でしょ~? やっと伝わった~」
「さっき美味しかったと言ったカノも変だからね?」
「ね、猫さんの変なところが移ったのかも……」
間違いない。私は常識人だもん。猫じゃないもん!!
「それにしても、カノは楽しそうでいいな~……」
「マユはPHO楽しくない?」
「最初は楽しかったんだけどね……お兄さんも楽しんでやってるの?」
「うん。好きな人もできたみたい。その人とパーティ組んでるんだよ。たまに話すとデレデレ」
「いいな~……うちのパーティ、私だけ浮いてる感じだし……」
「……そこが嫌ならうちにこない? マユだったら歓迎するよ??」
「ううん。今は抜けられないし……イロイロ教えてもらったし……」
マユは喋りたくなさそうだったが、しつこく聞いたらマユのPHOライフを教えてくれる。
どうやらマユはアバターメイキングに失敗していたそうだ。初心者では難しい弓スキルを取り、自分の攻撃力が上げられるからと付与スキルを取る。しかし、戦闘に出てみたら弓矢は全然当たらない。
誰かに教えてもらおうと意を決してヌイーダの酒場を訪ねたら、怖いスキンヘッド野郎に絡まれたらしい……またアイツか!
そこを助けてくれたのが、今のパーティメンバー。優しく声をかけ、親身になって話を聞いてくれたそうだ。
スキルや戦い方を教えてくれて至れり尽くせり。でも、優しかったのは最初だけ。次第に横柄になり、弓は封印させられて、戦闘になったら付与魔法しか許してくれなくなったそうだ。
さらに早くストーリーをやりたいからって、マユの予定は聞き入れられず。リアルでどうしても外せない用事があるから1日休んだだけで、「お前のせいで予定が数日狂った」と皆に責め立てられたそうだ……
「何そいつら……そんな人達、離れちゃいな。ね? てか、スキンヘッドのほうがたぶん優しかったよ!」
マユの話を聞いた私はムカムカ。でも、マユは恩を感じているのか、私の怒りは伝わらない。
「カノ……スキンヘッドの人は、怖かったわよ?」
「あっ!? 間違えた……」
私がスキンヘッド野郎を出したせいだったかも?




