084 ダークドラゴン騒動
バグエリアから飛び立ったダークドラゴンは優雅に空を飛び、第2エリア近くで円を描きながら着陸。私とアイは、ダークドラゴンの背中から猫さんにポイポイッと投げ捨てられた。
でも、なんか風のクッションが受け止めてくれたから、痛くありませんでした。猫さんかな? 痛くはないけど、10メートル以上の高さから落とされたから怖かったんだからね!!
「んじゃ、吾輩は世界一周してくるからにゃ~。ノワール、頼むにゃ~」
「グワ~ン♪」
猫さんはそれだけ告げると、ダークドラゴンとドラちゃんと共に飛び去って行った。
「アイ、逃げるよ!」
「逃げる??」
「周りに何組かいる! 質問攻めにされちゃう!!」
「わ、わかった!!」
馬鹿みたいに見上げている場合ではない。他パーティがダークドラゴンを見て腰を抜かしている内に逃げなくては!
私達はすたこらさっさと逃げ出し、岩場まで走ってきたら、辺りを確認してから洞穴に入った。
「はぁ~……レベリングしろって、あんな目立つので降りたらできるワケないでしょ」
「本当に……ラスボスが第1の町に現れたようなモノよ~。猫さん、凄い騎獣持ってるのね」
「あれ、騎獣愛護クランの借り物よ。そしてドラちゃん、中身はダークドラゴンより強くて大きなバハムートってドラゴンなの~」
「え? ドラゴンが猫の着ぐるみ着てるの??」
猫さんには驚かされてばっかりなんだ。喋っちゃえ。アイはパーティメンバーで同じ猫さん被害者なんだからいいよね?
ついでに猫さんがリハビリギルドを作った本当の理由を教えてあげたら、「聞くんじゃなかった……」と後悔してた。喋りすぎたな~。
「騎獣愛護クランって、どこにあるの?」
アイ、リハビリギルドの成り立ちを考えたくないみたいで、真実に蓋をしちゃった。
「第2フィールドよ。私、会員証持ってるから一緒に行く? モフモフできるよ??」
「行きたい! 行きたいのは山々だけど~~~」
「あ、そか。まだフィールドボスも倒してなかったね。レベリングを兼ねて倒しちゃおう!」
「えぇ~? 私、ド新人だよ~??」
「ダイジョブダイジョブ、私、1人で勝てるもん」
こうして私達のパーティ活動が始まったのであった……
「うっ……クイーンボアは倒せない……」
「大丈夫? カノ、本当に強いんだよね??」
まさかの2連続レアボスだったので、うり坊の恨めしそうな顔が浮かんでアイを不安な顔にさせる私であったとさ。
うり坊さえいなければ、キングボアは楽勝。私が借りてるボアと違って顔が怖かったから、まったくの別物だもん。アイも後ろからパンチやキックを何度も入れたから、かなり経験値が入ったと喜んでいたよ。
調子に乗って周回していたら、またいらないことに気付いちゃった。猫さんがここで私達を降ろしたのは、私ならアイを第2フィールドに連れて行くと思ってだ。周回してレベリングするのもお見通しだったんだろうね……
また猫さんの肉球の上でコロコロ転がされてしまった私は、騎獣愛護クランの牧場で怒りのモフモフ。一瞬で怒りは消えました。
「次はどの子をお持ち帰りしよっかな~?」
「え? ここの子、持って帰れるの?」
「私、プレミアム貸出券持ってるの~。シューちゃんも借りてるのよ。いいでしょ~?」
「カノだけズルイ~」
どうやって手に入れたのかと聞かれたから、誇らしげに語ってあげたら引かれた。猫さんを売ってお零れで手に入れたんだから、私の手柄はひとつもなかったの忘れてた。
交渉上手の猫さんが私にも2枚足してくれてたんだね。全て猫さんのおかげでした。ドヤ顔してすいません。
アイの私を見る目が痛いので、次の騎獣はアイに選ばせてあげよう。いっぱいモフモフがいるから悩むよね~?
アイとはモフモフの趣味も合うので、私のPHOライフはさらに楽しくなるのであった。
それから3日後、今日の私は料理教室にきていた。
「あのドラゴン騒動って、猫さんのせいだったんだ」
「あれ? お兄ちゃんから聞いてないのですか?」
今日はアイじゃなく、お兄ちゃんが狙ってるマーヤさんと一緒。ダークドラゴンに乗った話をしてみたが、お兄ちゃんは猫さん絡みだったから喋っていなかったみたいだ。
「あのおっきなドラゴン、第1フィールドでも凄かったけど、各地でけっこうな騒ぎになっているみたいよ」
「そうなんですか?」
第1フィールドでは、ダークドラゴンパニック。ハルマゲドンの前兆とか言われていたらしいが、それは昔、もっと凄い規模だったよ……
マーヤさんも割と近くでレベリングしていたらしく、お兄ちゃんが「倒しに行こうぜ!」と息巻いていたらしい……私、聞いてません。きてたら絶対にチビってたはずだ。
他のフィールドでも度々目撃例が有り、空を飛ぶ真っ黒なドラゴンのスクショがいっぱい掲示板に載っているとのこと。
そのダークドラゴンは果物が好きなのか、複数の果樹園を襲ったと噂されていた。
「猫さんが借り物を我が物顔で乗り回してる……」
「ウフフ。ホントね。でも、猫さんの情報はひとつも出てないわよ? おっきな猫が乗ってたとはあるけど」
「みんなダークドラゴンとドラちゃんに目が行ってたんでしょうね。猫さん小さいし」
「なるほど。果樹園は本当に襲われたのかな?」
「たぶん、みかんを買いに行っていただけです。最後に会った時に、ポンタンアメを作るようなことを言ってましたから」
「こんな騒ぎを起こしながら? 猫さん、隠れてたんじゃなかったの??」
「ダークドラゴンにやっと乗れるようになったから、テンション上がったのかと……」
こんな子供っぽい師匠で恥ずかしい。でも、自分だけは気を付けているのは猫さんらしい。だからUMA扱いされるんだよ。
「最後に会った時って言ってたけど、最近、会ってないの?」
「そうなんですよ~。ここ3日、いつもの場所に行ってもいつもいないんですよ~。縄張り変えたんですかね~?」
「そこまで猫なの? 中身、本当に人間なのよね??」
「たぶん……自信はありませんけど」
規格外すぎるんだもの!
猫さんの出せる情報のみで愚痴ってみたら、マーヤさんはますます猫さんの中身が気になるのであったとさ。




