083 終了×2
「んじゃ、これで拳聖講習は終了にゃ。お疲れ様にゃ~」
私達が猫さんの非道を責めているのに、いきなりの終了宣言。アイの訓練がたった2日で終わりを告げたので、私は猫さんを罵っている場合じゃなくなった。
「まだ2日ですよ? 私の時は長かったじゃないですか?」
「そりゃ弟子とアドバイスは違うに決まってるにゃ~。弟子は断ったにゃろ?」
「そうですけど~。実地研修もないんじゃアイは戦えないですよ~」
「んにゃもんカノがやったらいいだけにゃ。そのために鍛えてやったんにゃよ? 自分でやれにゃ~」
確かに猫さんはピンチに陥った新人プレイヤーに恩を売って仲間に引き入れろとか言ってたけど……言葉にすると、めちゃくちゃ酷い勧誘だな。
私が言いくるめられたというか、呆れて何も言えなくなると、アイが不安そうに質問する。
「スキル構成なんかはわかりましたけど、まだ戦えるほど訓練してないんですけど……」
「みんにゃ、チュートリアルだけでPHOに放り出されるにゃ。あとは自分で調べて考えて強くなるんにゃ。これだけいいアドバイス受けられる人にゃんか一握りにゃよ?」
「うっ……でも……」
「不安にゃのはわからなくもないけど、もう仕上がってるんにゃ。戦技を使わず正拳突きと回し蹴りをやってみろにゃ」
猫さんに突き放されたアイは、言われた通り正拳突きと回し蹴りをやってみたら、風切り音が聞こえるほど見違えていた……
「え……なんで……」
「それがPHOのシステムにゃ。スキルレベルを上げて、戦技を使いまくったら、自然と体が動くようになるんにゃ。あとは新しい戦技も同じように使いまくったり、覚えた戦技をマネして体に叩きこむと、さらに鋭さが増すにゃ。にゃ? 戦い方はもう、アイの体に芽生えているんにゃ」
猫さん、凄い説得力。でも、私には裏があるとしか思えない。リハビリギルドを作ったのも夢バグを直させたのも、全て自分のためだったもん!
「今回も何か裏がありますよね?」
「うんにゃ。吾輩の貴重にゃ時間と、お菓子が奪われてるんだからにゃ……」
「あうっ……そこはオブラートに包んでくださいよ~」
「オブラートにゃんかPHOで見たことも作ったこともないにゃ~……いや、イモがあるから作れるよにゃ? 今度、ポンタンアメでも作ってみようかにゃ? たぶんPHOで作っている人はいないはずにゃし……」
「是非! 味見は任せてください!!」
「オブラートに包んだら食べにくるんにゃ!?」
食べるでしょ。PHO初の食べ物だもん!!
「送ってやるから、レベリングでもしてこいにゃ~」
猫さん、私に呆れ返って追い出す。でも、優しい。でもでも、これも自分のためっぽい。
「ノワール! 成獣化にゃ~~~!!」
「グオオォォ~~~ン!!」
ダークドラゴンの初試乗だ!
「「あわわわわわわ」」
でも、ダークドラゴン、成獣化したら、めっちゃデカイし怖い。20メートルは軽く超えてる怪獣だもん。アイはまた腰砕けです。
私は~……猫さんのほうが怖かったから、大きさにビビってるだけです。いちおう女子っぽく怖がって座りました。
「あぁ~……2人ともレベル足りてないんだったにゃ。最前線のレイドボスにゃんだから当たり前か。これ、持ってろにゃ~。ドラゴン、アイを運んでやってにゃ」
猫さんは私達に御守りを握らせると、恐怖はフッと消える。ドラちゃんはアイの体を甘噛みすると飛び跳ねてダークドラゴンの上に。私は猫さんに首根っこを掴まれてダークドラゴンの上に降ろされた。
私達、猫に猫みたいな持ち方された……
「よしにゃ。ノワール! 離陸にゃ~!!」
「グオオォォ~~~ン♪」
「にゃはは。いい羽ばたきだにゃ~」
私達3人と1匹……いや、猫さんは猫だから、2人と2匹を乗せたダークドラゴンは力強く羽ばたき、優雅に空を飛ぶのであった……
久し振りに空を飛んだ私は、ちょっと怖い。背中の面積は広いけど、ドラちゃんのようなモフモフ感がないから安心感が足りないの。
アイは初の空移動だから、ずっとあわあわしてドラちゃんの前脚にしがみついてる。ちょっとズルイ。
「ね、猫さん? ダークドラゴンってこんなに大きかったのですね……」
「うんにゃ。いつもは幼獣の姿だったからにゃ。騎獣愛護クランの牧場でも、デカすぎて成獣にはしてなかったもんにゃ~」
猫さん曰く、幼獣には強いモンスター特有の威圧感がないから、成獣化すると騎獣愛護クランメンバーでも恐怖に震える人が多いのではとの予想だ。そんな予想ができるなら、私達にも気を遣え。
あと、私達3人だけなら、幼獣のままでもダークドラゴンに乗れただろ。ドラちゃんを乗せるために大きくしたのですか。ドラちゃんは自力で飛べるのに……
「ところでなんですが、ドラちゃんって幼獣なんですか?」
「そうにゃよ? ダークドラゴンの倍はあるから、成獣化する場所がないんだよにゃ~」
これの倍!? ダークドラゴンの全長は学校のプールぐらいあるんだから、ドラちゃんはプール3個分ぐらいの面積があるの!?
「モフモフの湖で泳ぎたいです~~~」
「そんにゃにデカイと、普通怖がるもんだと思ったんにゃけど……どんにゃ夢見てるにゃ??」
もちろんドラちゃんの背中で無限コロコロとモフモフをしてる夢。
「にゃんかこの子、ヨダレ垂らしてるんにゃけど、大丈夫なのかにゃ?」
「私もまだ付き合い短いので……でも、こんなに幸せな顔してるんですから、大丈夫じゃないですか?」
「吾輩、カノがどんなプレイヤーになるか心配にゃ~」
「あはは。だから猫さんは、カノのこと目が離せないんですね~」
怖くてデカいダークドラゴンの背中にいるというのに、私がトリップしているので、猫さんとアイは心配そうに笑うのであった……




