081 アイの訓練2日目
猫さんはアイのことは弟子にしてくれなかったけど、訓練はしてくれるので、それで折れるしかない。このままゴネたら逃げる可能性もあるもん。
アイは涙目で戦技の正拳突き。気持ち、怒りがこもっているのか、さっきより力強い気がする。
私は暇なので、錬金でMP消費。アイ用の初級ポーションを大量生産だ。猫さんは~……ドラちゃん達と戯れてます。私もそっちに入ろっかな~?
そんなことを考えていたら、アイのSPがゼロ。今度は回復魔法でMP消費しろってさ。相変わらず効率的でつまらない指導だ。
MPもなくなれば、休憩。回復するまでおやつの時間だ。ひゃっほう!
「んっ! 美味しい! このクッキーも猫さんが作ったのですか?」
「うんにゃ。暇潰しににゃ~」
「プレイヤーのお店でも、こんなに美味しいのないのに暇潰しって……」
「アイ、猫さんのやることを考えちゃダメ。普通じゃないのよ」
「憧れのネロさんがこんなに普通じゃないなんて……」
「幻滅したにゃろ? にゃしゃしゃしゃしゃしゃ」
「自分で言うなよ」
何が面白いんだ。JKの夢を砕いたことか? なんて心のない猫なんだ。
「こんなに美味しいの作れるなら、私も料理スキル取ろっかな~?」
「あ、それいいね。私、スキル取って料理教室通ってるの」
「本当? 私も一緒に通いたい。スキル取っていいですか?」
「どれぐらいポイントあるかによるかにゃ~?」
アイが残りのポイントを告げると、猫さんは即刻許可。訓練に必要な分は楽々あったみたいだ。
「んじゃ、新しい戦技覚えてるにゃろ? キック系のヤツにゃ。それも入れてSP消費にゃ~」
この日はひたすら、SPとMPを消費するだけで訓練は終了するのであった。
翌日も2人でバグエリアにドリルジャンプ。アイはまだ慣れていないので、のたうち回っていました。スキルレベル低いと痛いもんね。
「カノも同じように着地してるんだね……」
「うん。猫さんみたいにできないもん」
「え? 猫さんはコロコロ転がらないの?」
「そうなの~。あの猫、体操選手より華麗な動きで着地決めるのよ~」
アイに教えてあげたいけど、マネなんてできません。でも、ムーンサルト宙返りぐらいできるのでは? ……アウチッ!?
「アハハ。無理しちゃって~」
「ここならなんでもできるって言われたからいけると思ったの~」
「猫さんはプレイヤースキルも大事みたいなこと言ってたじゃない」
今日の私は飛び込み前転で背中から落ちたダメージをプラス。いつもよりHPを減らしてから猫さんを探したら、猫さんはドラちゃんとダークドラゴンの上で反復横跳びしてた……
「猫さ~ん。きたよ~? 今度は何してるんですか~??」
「こんにゃちわ~。ダークドラゴンに乗る最終確認にゃ~。ドラゴン、怒ってないにゃ~?」
「なんか小馬鹿にしたような顔してま~す」
「にゃっ!? ドラゴン! 吾輩のこと馬鹿にしてたにゃ!?」
「にゃしゃしゃしゃ」
どうやらもう、猫さんがダークドラゴンに乗る許可は出てたっぽい。飼い猫にからかわれる猫って……てか、ドラちゃん賢すぎない?
猫さんは「いっぱい遊んでもらえるから、スネた振りをしてた」とか言ってたけど、後ろ後ろ! ドラちゃん、なんか指差して悪い顔で笑ってるって!!
猫さんの飼育法方、マネしてもいいのだろうか? 私のうり坊も、いつかこんなに性格悪くなるのかな~? あ、借り物だった……返したくない!!
猫さん達のことは置いておいて、今日もアイの訓練は戦技のSPと回復魔法のMPを消費することから。全てなくなったら、猫さんはアイに初期ステータスの宿題を提出させた。
「う~~~ん……よくできてるほうかにゃ~?」
「何をそんなに悩んでるのですか?」
「今のステータスとたいして変わらにゃいから、ゴッドハンドする必要もにゃいかな~っと」
「やってあげてくださいよ! あと私もおかわりプリーズ!!」
「しれっとにゃに言ってるにゃ?」
あの天国が忘れられないの。ひとまずアイは、猫さんのお勧めステータスを聞いてみたら、アイが準備したステータスの微調整程度。拳聖は肉弾戦と回復をするのだから、そりゃ平均的になるか……
それから猫さんはステータス画面を開いて、体に触れることに関する誓約書にアイのサインを貰おうとしたら、アイは助けを求める目を私に向けた。そりゃ誓約書なんて怖いよね。でも、大丈夫だよ~?
アイが私を信じてサインを書いたら、準備完了。
「な、何このモフモフムニュムニュ天国……いっくぅぅ~~~!!」
ゴッドハンドの施術中です。巨大猫のモフモフベッドと小さな猫の肉球に挟まれたから、アイはだらしない顔でヨダレを垂らしているだけです。
「どこにもいくにゃ!?」
猫さん、大慌てです。だってアイは高1なんだもの……私もあんなに酷い顔をしていたのか……犯罪だなこれは。もう一度マッサージしてほしいから言えないけどね。
アイがモフモフの海に溶け込んでしまって……猫さんのステータス改変が終わってから私はまたしれっと頼んでみたけど、猫さんは「怖くて未成年にはもうできない」とか言ってた。
何が怖いんだか……BANされることですか。周りの目も怖いのですか。私のことは怖がらなくても……女子高生がそんなはしたないことを言うなと叱られたのは解せぬ。確実にはしたない顔になるけど……
アイは骨抜きにされて立てないみたいなので、ドラちゃんがお腹から落として猫さんがキャッチ。女子高生を高いところから落とすのはいいのね。
おやつブレイクとSP等の消費が終わると、次の授業を始めるらしい。
「今は正拳突きと回し蹴りしかやってないけど、格闘家っていうのはこういう動きとかもあるからにゃ。しっかり見ているようににゃ」
「はいっ!」
「はぁい」
「……」
アイの返事には猫さんは頷いたのに、私はなんか邪魔そうな目をされた。関係ないと言いたいんだね。パーティメンバーなのにね~?
私とアイがヒソヒソ喋っていたら、猫さんの演武というモノが始まる。
「「わっ!」」
猫さんの正拳突き、アイの比じゃない力強さ。猫さんの拳に押し出された空気が私達の全身をビシッと叩いた。
そこからは、舞うような動き。洗練されたパンチやキックは無駄がまったくない。まさに蝶。攻撃する時は蜂だ。
猫さんは飛んだり跳ねたり攻撃を繰り返すなか、私達は息を吸うことも忘れて見入ってしまうのであった……
「ま、ざっとこんにゃもんにゃ」
猫さんは丸い拳で木を殴り、その木が折れて奥に倒れ行くと、振り返って笑顔を見せた。アイと私は大きく息を吸い込むと、大興奮だ。
「すっごく綺麗でした! そんなにチンチクリンなのに凄いです!?」
「だよね! チンチクリンなのに綺麗すぎるよね!?」
「チンチクリンは褒め言葉じゃないにゃよ? 聞いてるにゃ? もう、チンチクリンしか聞こえないにゃよ??」
私達、興奮しすぎて語彙力がなくなるのであったとさ。




