079 アイのプレイスタイル決定
アイは猫さんに格闘家になりたいと相談にきたはず。それなのに詐欺師をボコボコにする話になるとは思いもしなかった。
猫さんは猫さんで、どうしてこんないたいけなJKに詐欺師をボコる助言をする。悪の道に引き摺り込まないで!
「ま、ホームの殴り込みはやめておけにゃ。特に今は、吾輩が減らしまくったから警戒してるからにゃ。ボディーガードとか殺し屋を雇っているから、素人には無理にゃ」
「そんな~~~」
私の願いが通じた!
「そのかわりと言ってはにゃんだけど、素人でも街中で殺せる方法を教えてやるにゃ」
「どうやるんですか!?」
通じてませんでした! アイにも通じてません!?
「落下ダメージってのがあってにゃ。これはどこでも平等なんにゃ。レベリングもしてない詐欺師にゃんか、3階から落とせば即死にゃ~」
「なるほどです!」
「あと、大通りでも頭から地面に叩き付けたら、7割方死ぬにゃ」
「やってみます!!」
いやいやいやいや……やっちゃダメでしょ。
「アイ……猫さんにPKの相談しにきたんじゃないでしょ? 目を覚まして!!」
「あっ!?」
「猫さんも猫さんで、安易に悪の道に進ませないで!!」
「詐欺師撲滅は正義の行為のはずにゃ~」
「猫さん……ロールプレイを楽しんでPKしてるでしょ?」
「うんにゃ~」
「ちょっとは申し訳なさそうにする!!」
アイは目を覚ましてくれたけど、猫さんは夢の中の住人。覚める気配はこれっぽっちもない。私の言い分はまったく通じないのであったとさ。
それでもアイが目覚めてくれたので、話は戻る。みんな何の話をしていたか、探り探りで話をしてました。
なんとか思い出したのは、アイの初期ステータスやスキル構成。初期ステータスは平均で回復職のスキル構成だから、このままでは格闘家にコンバートは時間がかかる。
「まぁどっちみち格闘家にゃら、ステータスいじらないとにゃ~……リハビリギルドにゴッドハンドも格闘の基礎を教えてくれる人もいるから、そっちを頼れにゃ」
「ゴッドハンドですか??」
さっきまで話が弾んでいたのに、猫さん、時間がかかりそうなことは相変わらず自分でやりたがらない。そしてアイはゴッドハンドを知らないらしい……
「にゃ? いるにゃろ? ステータスを変更できるヤツにゃ」
「たぶんいません……」
「ほら? あのババアにゃ。名前は~……ババアにゃ~」
「お婆さん自体が職員にいないんですけど……」
「あっちゃ~。引退しちゃったにゃ~? ババアがいなくなったのも報告しろよにゃ~」
「で、その人の名前は??」
「……………ババアだったはずにゃ」
「「ウソつけ」」
それだけ考えて出てこないなら、嘘にしか聞こえないに決まってるだろ。てか、口が悪いのよ。お婆さんと言え。
「チッ……聖女かギルマスに、ゴッドハンドスキルの取り方、教えに行かないとにゃ~。今回は吾輩がやってやるから、ステータスは宿題にゃ。次回までに考えてこいにゃ」
でも、こういうところは優しいのよね~。
「あの……できれば回復魔法も使いたいんですけど……そういう格闘家ってのはいるのですか?」
「いるにゃよ。一番前でボスと防御無視で殴り合う格闘家とかにゃ。回復しながらにゃから、一歩も下がらないんにゃ。ま、戦闘狂の中でもとびきりのバカがやる戦い方だにゃ」
だから口~~~!! やりたいって言ってる人にそれはないでしょ!
「もうちょっと言い方、なんとかなりません?」
「本当のことにゃもん。そのかわり、めちゃくちゃ早くボス戦終わるにゃよ? 早期決戦をやりたい時は、重宝するヤツにゃ」
「なんだ~。メリットもあるじゃないですか~」
「邪魔だからデメリットも大きいけどにゃ」
「どっちなんですか!?」
ツッコンだものの、私でもわかる。ボスの目の前にいたら、めっちゃ邪魔。デメリットのほうが多そうだ。
「ほ、他に戦法はないんですか?」
「やってるヤツは見たことないけど、避けながら戦えばいいだけにゃろ。隣にアタッカーもいるんにゃから、2、3人のHP管理はできるにゃ。難しいけどにゃ」
「ね、猫さんはできるのですか?」
「当たり前にゃ。暇潰しに拳聖とか名乗って遊んでたにゃ~」
アイは頑張って聞き出していたが、この猫は……
「アイ……猫さんは先に難しいと言ったでしょ? 本猫は遊びと言ってるけど、これ、相当難しいことだと思う。猫さんは異常なほど戦闘慣れしてるから、どんな戦闘方法でも軽々こなしちゃう猫なの」
「軽々じゃないにゃよ? 相手の戦い方を見て、ちょっとずつマネして、その戦闘中に完コピするんだからにゃ」
「ほら! 私、できると思えない! アイもそんなことできないでしょ!?」
「う、うん……」
私の説得、勝訴。戦闘が終わってから時間をかけて真似るならできる人もいるだろうけど、途中で完コピするな。それは人の技じゃなくて、猫の技だ。
「う~ん……でも、回復はできたほうがいいと思うんだけどな~……」
私が猫さんの口を塞いでいたら、アイはまだ回復魔法を捨てきれないみたいだ。
「絶対に難しいよ? 私も魔法剣士、最初は難しくて凄く後悔したもん」
「それはわかるけど、しばらく2人でやるとなると、回復役は必要になるんじゃない?」
「あぁ~……アイテムで回復するのは一手間かかるね。私は楽になるかも知れないけど……」
「たぶん、しばらくは足を引っ張ることになると思うし……回復役ぐらいはさせてほしいかな?」
確かに今はレベル差があるから、アタッカーは私中心になるのは目に見えている。それも猫さんに鍛えられたから、新人プレイヤーのトップクラスだし……
「うん。そうだね。アイが前に出られるようになるまで、私が前で頑張るよ。もちろんアイには、早く前に出られるように頑張ってもらうけどね」
「うん! すぐに追い付いてみせるよ!!」
アイのプレイスタイルは、拳聖に決定。私達は共に協力し合うと約束して、固く握手を交わした。
「……」
横目にチラッと見えた猫さんは軽く頷いたような気がしたけど、何を思っていたのだろうか……




