078 アイの相談
バグエリアにアイを連れてきてみたら、猫さんは巨大猫ドラゴンと、本物のドラゴン、ダークドラゴンと一緒に、祭櫓みたいな物の周りをクルクル回って盆踊りしてた……
「ねえ? 猫さんって、いつもあんなことしてるの??」
アイの質問に、私は答えられません。
「ううん。これは初めて見た……てか、いつも変なことばっかりしてるの~~~」
「うん。理解した」
私が顔を手で覆ってしゃがみ込むと、アイは優しく私の肩に手を置いた。初めてが盆踊りじゃ、度肝を抜かれるよね。巨大な猫とドラゴンも立って踊ってるんだもん!
気を取り直した私は立ち上がり、アイと一緒に猫さんの下へ向かった。
「猫さ~ん。きましたよ~。お客がきてるのに、何してるんですか~」
「だから吾輩、ずっと忙しいと返事してたにゃ~」
忙しいって言ってたの、盆踊りのこと!?
「やめたらいいだけでは??」
「ドラゴンが機嫌よくなってるから、やめたらもったいないにゃ~。とりあえず2人も入れにゃ~」
「な、何故??」
「盆踊りは多いほうがいいかもしれないからにゃ。吾輩を助けると思ってやってくれにゃ~」
「「……はあ」」
猫さんが助けを求めているのだ。これからイロイロ相談するなら、これはラッキー。私とアイは深く頷き、盆踊りの輪に加わるのであった……
「意外と楽しいね」
「うん!」
ファンタジーすぎる盆踊りは、私とアイに好評なのであったとさ。
とか思っていた頃がありました……まさか1時間ブッ続けで盆踊りするとは思ってなかったよ! アイなんてスタミナ切れて倒れてるよ!!
「お疲れにゃ~。にゃんか食べたい物あるにゃ?」
「「チョコ!!」」
「う、うんにゃ。そんにゃ鬼気迫るようにゃ顔をしにゃくても……」
こんなワケのわからない展開に1時間も付き合わされたのだ。それぐらいの報酬があって然るべきだ。2人で20個食べてやった。アイは美味しくてまた倒れてました。
「てか、猫さんはいったい何をしていたのですか?」
「ここ最近の延長にゃ。ドラゴンとダークドラゴンを仲良くしてみたらどうなるかにゃ~っと思って、盆踊りをさせてみたんにゃ。まさかドラゴンがこれを気に入って、3時間もブッ通しで盆踊りさせられるとは思ってなかったにゃ~」
「お、お疲れ様です。あと、なんかすいません……」
「にゃ~??」
猫さんも盆踊り被害者だとは、これっぽっちも思ってなかったの。それなのにチョコ奪ったり愚痴ったり、私は最低だ~。
「ま、おかげで2匹とも仲良くなれたみたいにゃ。もうちょっとでダークドラゴンに乗れるかもにゃ~」
猫さんの視線の先には、ドラちゃんとダークドラゴンが仲良くくっついて寝ている姿。どちらも頬ずりしてるけど、微笑ましく見えないこともないけど、不思議な感覚だ。巨大猫とドラゴンだもん。
「ここまでして、まだ乗れないのですか?」
「乗れるかもしれにゃいけど、焦りは禁物にゃ。失敗したら、また一からになるからにゃ~。そういえば、うり坊にエサやってるにゃ?」
「あっ! 今日の分、忘れてた!?」
実は昨日も忘れていたので、うり坊にそっぽ向かれた。また土下座でエサを献上して機嫌を取っていたら、アイに「何してるの?」と呆れられた。
私もわかりません。猫さんがやってたからやってるだけだもん。
「んで……にゃんか相談があったんにゃろ?」
私とアイが猫さんそっちのけでうり坊を愛でていたら、猫さんから呆れたような声が出たので2人で「ハッ!?」としました。
「アイを弟子に……」
「却下したにゃ~」
「ですよね~? だから、戦闘方法を教えてほしくて。アイ、パンチとキックで戦いたいらしいんです」
「リハビリギルドの職員が、格闘家目指すにゃ?」
「「はあ……」」
猫さんが首を捻るので詳しく聞いてみたら、リハビリギルドの職員は基本、こけた患者のHPを戻すために回復職のスキル構成をしているらしい。
アイももちろんお母さんから、回復職のスキル構成を指示され、さらには初期ステータスも賢さとMPに極振りするように言われたそうだ。
「一番の近道は、回復職にゃよ?」
「それはわかっています。でも、ステータスはなんとなく平均値にしましたから大丈夫です!」
「反抗期にゃの?」
「エヘ」
どうやらアイは、お母さんに言われた通りやるのは嫌で、半分は反抗したっぽい。私も反抗してもよかったかな?
「ところでにゃんで格闘家を目指したいにゃ? 見た感じ、そんにゃ野蛮な戦い方しそうにないんにゃけど。テレビとかの影響にゃ?」
アイの見た目は小さくてかわいらしい。モテそうだ……じゃなくて、性格は真面目で、私も人を殴りそうに思えない。
「リハビリギルドの周りに詐欺師がいっぱい居たじゃないですか? あの人達が……」
どうやら詐欺師はリハビリギルドを目の敵にしていたとのこと。その理由は、通りを歩く障害者を勧誘していたら、リハビリギルドの職員が詐欺師だと割って入ることが度々あるかららしい……当たり前だろ。
その逆恨みのせいで、職員は制服を着て外に出れない始末。制服を脱いで外に出ても顔を覚えられた職員は、罵声を浴びせかけらたり足を引っかけられたり水をブッかけられたりしていたそうだ。
「私のこともチビだとかビッチだとか……いつかアイツらの顔をボッコボコのぐっちゃぐちゃにしてやろうと思っていたんです! どうか、私にボコボコにする力を授けてください!!」
「うわっ……」
アイ、ストレスが溜まっていたみたい。私はせめて「戦う力をください」と言えとツッコミたくてもツッコめなかった。ボコボコにする力って言ったもん!
私が顔を青くしていると、猫さんも引いてるかと思ったけど普通の顔だ。
「残念にゃがら始まりの町の中では、暴力行為はダメージ判定がないにゃ」
あ、そういうこと? 復讐できないようになっているから、注意してくれてるんだ。もっと先のフィールドなら街中でPKできる町とかもあるらしいけど、詐欺師はいないんだって。
「そ、そんな……」
「まぁそう悔しそうにゃ顔をするにゃ。ホームに殴り込みかけたらいいだけにゃ」
「ホームとは??」
「ギルドの建物の小さい版みたいなモノにゃ。ホームの初期設定は死亡アリになっていてにゃ、詐欺師達はアホにゃから、死亡ナシに切り替えてないんにゃ~。吾輩、いつもそこで殺してるんにゃ」
「やった~~~!!」
アイは「やった~!」じゃない!!
「猫さん! いたいけなJKに何を教えてるんですか!?」
「……殴り込みの仕方かにゃ?」
「それが悪いことだと言ってるんです!!」
「ゲームの中にゃよ??」
「ゲ……うが~~~!!」
結局はいつもの暖簾に腕押し。猫さんはまったく悪いことだと思っていないので、私は頭を掻き毟るのであったとさ。




