075 猫さんの仕事
猫さんの仕事を聞こうとしたのに、何故か私の仕事の相談になっていたので、作戦変更。というか、私には遠回しに聞くなんて無理だ。
「ちなみに猫さんって、リアルではどんな仕事をしてるのですか?」
なので直球勝負だ!!
「そういう個人情報に関する質問は、仲がいい人でもやらないほうがいいにゃよ? 自分の病気のこと言えるにゃ??」
「言えません……」
でも、大人な対応でかわされてしまった……
「参考までに聞きたかったんだけなんです。すいません……」
「参考と言われても、吾輩の仕事は女子高生には参考にならないからにゃ~」
私に参考にならないということは、そういうこと?
「やっぱり後ろめたい仕事なんですね!?」
「にゃんで決め付けるにゃ~……まぁ後ろめたいけどにゃ」
きた! 間違いない!!
「私が当てたら、正解と言ってください!」
「たぶん当てられないにゃよ?」
「やってみないとわかりません! ヒントだけください!!」
「当てる気満々だにゃ~」
猫さんは自信があるのか、子供のお遊び感覚で付き合ってくれるみたいだけど、チャンスは3回までって、厳しいわ~。
「ヒントは~……ま、大盤振る舞いにゃ。吾輩の仕事はギャンブルみたいなモノにゃ」
ギャンブルみたいなモノ? 普通に考えたら、賭博!?
「わかりました! 一文字目が『ヤ』から始まる、人を埋めたり沈めたりする職業ですね!!」
「にゃんでクイズ形式の答えにゃの? 吾輩が出題する側だよにゃ??」
「合ってますよね!?」
「違うに決まってるにゃろ。にゃんで吾輩がヤクザなんにゃ。吾輩の仕事は、世界中で合法にゃ~」
世界中で合法で後ろめたいということは……
「わかりました! 1文字目が『マ』から始まる、クスリを販売したり人を販売する職業ですね!!」
「マフィアとヤクザは同類にゃろ。そしてクスリも人身売買も世界中で違法にゃ。どうしても吾輩を反社会性のある人物だと言いたいみたいだにゃ」
マフィアでもないだと……ということは、国際的にヤバイ仕事で合法……って、なんだろ? スパイとか殺し屋?
「もういいにゃ。教えてやるにゃ。このままでは政府に密告されてややこしくなりそうにゃし」
「てことは、他国の!?」
「スパイでもないにゃ。どんだけ想像力豊かなんにゃ。はぁ~~~」
猫さんは長いため息を吐いたあとに、守秘義務を何度も確認してから答えを告げる。
「一介の投資家にゃ」
「投資家ってことは~……お金持ち??」
「JKではそんにゃ反応なんにゃ……」
「エヘヘ。よくわからなくて」
「会社の株とか、円とかドルとかを勝ったり売ったりして利益を上げる人のことを投資家と言うんにゃ」
「なるほど~」
なんとなくわかるけど、あまりよくわかりません。
「それが事実だとして、後ろめたい職業と言うのは何故ですか?」
「投資するお金ってのは、全世界で量は決まってるんにゃ。そのお金が負けた人から勝った人に移動するだけなんにゃ。勝った人はいいにゃよ? 負けた人は悲しいにゃろ?」
「はい。あ、パチンコでお金なくした人みたいな?」
「その認識で間違いないけど、規模が違うにゃ。何百万、何千万。個人でも何十億と無くす人もいるにゃ。んにゃの返せないにゃろ? 自己破産するか、首を吊るか……そんにゃ人がいるから、吾輩は誇れる職業と言えないだけにゃ」
なんということでしょう。猫さんは真っ当な猫でした。ヤクザなんて疑ってすいませんでした!
「な~んだ。あの人、嘘ばっかりついて」
心の中で謝罪をした私は、独り言をポツリ。その声を猫さんが拾う。
「誰かに嘘を吹き込まれたにゃ?」
「はい。誰だかわからないんですけど、猫さんは化け物で素性を調べることもできない猫だと言われたんです」
本当は私とアイで、ヤクザだと盛り上がっていたけど、『たぶん本当に怖い人』に罪を全て被ってもらおう。
「昨日にゃ? どこで会ったにゃ? 詳しく説明しろにゃ」
「えっと……猫さんと別れたあとに、広場のベンチでですね……」
珍しく猫さんが真面目な顔をするので、『たぶん本当に怖い人』の情報を全て喋った私。口止めされていたけど、知らない人だもん。
「チッ……撒いたと思っていたけど、そっちに行ってたんにゃ……」
「はい?」
「怖い思いさせて悪かったにゃ。あの時、誰かに見られていたのはわかってたから、急いで離れたんにゃ」
「はい??」
猫さんの話、チンプンカンプン。昨日、空飛んで逃げたの、私の追及をかわそうとしたんじゃなかったの??
「君に接触したのは、おそらく闇ギルドのギルマスにゃ」
「はひ????」
そんな怖い人が真後ろにいたの!? パパの言う通り、『本当に怖い人』だった!?
「あの野郎……また締め直さないとダメだにゃ……今度はにゃにしてやろうか……」
もっと怖い猫が目の前にいたよ!?
「あ、あの……その人、猫さんの素性がわからないからって、私に注意するように言っただけなんですけど……」
「そうにゃの?」
「はい。えっと……あの人はいったい何をしている人なんですか??」
「情報屋みたいなもんにゃ。昔、ここではしゃいでいてにゃ~」
どうやら闇ギルドのギルマス、PHO内のプレイヤーの個人情報を握って脅して回っていたそうだ。そりゃ子供の私に言えないワケだ。マジ物の犯罪者だもん。
と言っても、PHO内だけ。PKクランが殺して奪う組織なら、闇ギルドは脅して貴重なアイテムを巻き上げている組織だったらしい。
そこに立ち向かったのが、我らが猫さん。これ、何回目だ? PHOの闇で戦いすぎじゃない?? だから有名人になれないんだよ。
そんな疑問は置いておいて、猫さんは弟子から相談があったから、「それ、面白そう」と首を突っ込んだらしい……
「理由~~~!!」
「思いのほか大きにゃ組織だったから、潰すの楽しかったにゃよ?」
「簡単に潰しすぎ~~~!!」
猫さんの潰し方は、いつものアレ。1人ずつ死ぬほどのトラウマを与えて、PHOから排除。ギルマスは使えそうだから、拷問してから残したそうだ……
「悪者どっち!?」
「前から思ってたけど、いいツッコミだよにゃ~。昔からにゃ?」
「最近です!!」
私のツッコミが鋭くなったのは、猫さんのせい。それまでは~……心の中だけだったはず。ウンウン。間違いない。




