071 リハビリギルドの聖女様
アイの祖母は、あまりにも慈愛に満ちた表情をしていたので、私は感動でフリーズ。そんな私を無視して、猫さんは聖女様と握手をしたあとは立ち話になった。
「どう? 私のお婆ちゃん、すっごく美人でしょ??」
私が猫さん達のやり取りに夢中になっていたら、アイがいつの間にか隣に立っていた。
「うん……写真の時より、さらに美人だね。それに優しさが全面に出てる」
「ね~? 私もお婆ちゃんのアバターを初めて見たとき驚いた。あの姿は30代の後半らしいよ」
「へ~。アイも大人になったら綺麗になるんだろうな。いいな~」
「期待されても困るよ~」
アイは満更ではない顔をしているからもっとからかいたい衝動はあったが、今日の出席者が1人増えているからその人物を聞いてみる。
「アイと聖女様に似てるあの人って、ひょっとして?」
「うん。お母さん。そんなに似てる?」
「姉妹みたいだよ」
「うっ……お母さん、サバ読んで20代のアバター使ってるの。恥ずかしい」
「えっと……年齢詐称は血筋なのかな?」
「本当だね……娘としても孫としても恥ずかしい……」
私がアイをからかって……喋っていたら、聖女様に呼ばれたから小走りで席に着くのであった。ちなみにアイの猫さんの第一印象は、かわいいでした。それしかないよね。
丸いテーブル席には、私と猫さんが隣り合わせ。聖女様を正面に、アイとお母さんが両隣に座った。
お茶とお菓子はたぶん猫さんが出したと思われる。紅茶の味が猫さんの味だもん。
「改めましてお久し振りです。ネロ君は覚えているでしょうけど、こっちは娘のユウカ。こっちは孫のアイちゃんよ」
「初めまして。アイです。ネロさんに会えて光栄です。よろしくお願いします」
聖女様の司会で始まった自己紹介。ユウカさんは会釈しただけで猫さんから視線を外してる? アイは猫さんに釘付けだね。人間から猫になってるもん。ちなみに聖女様の名前はノアって、こないだ猫さんから聞きました。
「うんにゃ。よろしくにゃ~。こっちは吾輩の弟子にゃ。お留守番させたら、お孫ちゃんに無理言ってでも同席しそうだったから連れてきたにゃ」
「なっ……会話に困ったら助け船を出してくれと言ってたじゃないですか~」
「アレ嘘にゃ。連れて行けって顔に書いてたにゃよ?」
「なんで私の心の声がわかるんですか~~~」
こんな紹介ある? 聖女様の前で赤っ恥だよ。アイに迷惑かけてでも忍び込もうと思ってたけど……
「ウフフ。カノちゃんよね? アイちゃんから聞いてますよ。ネロ君のことは、あまり考えないようにしなさい。疲れますからね」
「ですよね! じゃなかった。よろしくお願いします……」
ここは同意じゃなかったみたい。猫さんに太股をパシッと叩かれました。興奮してたら話になりませんもんね。すいません。
自己紹介が終わると、私達はお茶を飲んでから猫さんと聖女様の会話を見守る。
「にゃんか久し振りすぎて、にゃにから喋っていいかわからないよにゃ」
「そうですね。猫になった経緯からでしょうか?」
「長くにゃるから、別の話をしようにゃ~」
20年振りに会った人が猫だよ? そりゃ猫が先にくるに決まってるよ。
「それでは謝罪からにしましょうか。ユウカ、言いたいことがあるんでしょ?」
聖女様はユウカさんに話を振ると、ユウカさんは立ち上がって頭を下げた。
「猫になって会いにきてくれた時に、笑って追い返したことを、ここにお詫びします。申し訳ありませんでした」
次は猫さんのアンサーだ。
「別に気にしてるけど、謝罪は必要ないにゃ。てか、殊勝なことされると気持ち悪いにゃ~」
「猫さん!!」
でも、酷いこと言うので私は小声で怒鳴って太股をパシッと叩いてやった。「別に」と言うなら「気にしてない」と言え! ユウカさんも顔が引き攣ってるでしょ!!
「ちにゃみに、にゃんで謝ろうと思ったにゃ?」
「中小障害者支援ギルドのことです。私が頑なにネロさんを拒否したから、あんなことになってしまって……」
どうやらここ最近の中小障害者支援ギルドは目を見張るほど酷かったらしい。それを度々排除してくれていた猫さんに相談していなかったから、ユウカさんは聖女様からも叱られたそうだ。
「まぁ相談してくれてたら、詐欺師があんにゃにのさばっていなかったと思うけど、謝罪は必要ないにゃ」
そもそも猫さんは、時々リハビリギルドの周りをパトロールしていたそうだ。ただ、ここ最近は趣味に没頭していてパトロールをしていなかったらしい……
う~ん……言われなくてもパトロールをしていた猫さんを褒めてあげたいけど、趣味ってコサクのことでしょ? 5個もログハウス建てていたし……素直に褒められないよ~。
「ネロ君が謝罪は必要ないと言うなら、その言葉に甘えましょう。昔からこういう人なんだから。感謝のひとつも受け取ったことがない人ですもの」
聖女様が無理矢理まとめた! てか、ひとつぐら感謝を受け取れ! なんで障害者からひとつも感謝されないで、聖女様が何度もしてるのよ~~~。
私は聖女様が語る猫さんの話を、心の中でツッコミ続けるのであったとさ。




