067 猫さんの説得
リハビリギルドで猫さんのネタをゲットした私は、そのまま話をしに行きたかったが、夕食の席に持ち帰った。吟味したかったの。
「うおおぉぉ~。リハビリギルド作ったのネコさんだったのか~」
するとお兄ちゃんが興奮。そういえばお兄ちゃんがいっぱい調べてくれたもんね。これが普通の反応なのかもしれない。でも、マーヤさんとの話のネタにしそうだな。私の病気のことバラしそうだから釘は刺しておきました。
「お兄ちゃんはリハビリギルドの周りにいた詐欺師、覚えてる?」
「ああ。アレはうっとうしかったな~。カノのこと、根掘り葉掘り聞こうとしやがって」
「そいつら、いま、全然いないの。たぶん猫さんが何かしたと思うんだけど……何したと思う?」
続いての話題は、詐欺師。どうやったら消えるかが私には思い付かないから、可能性でもいいから知りたいのだ。猫さんとの交渉材料のために!
「う~ん……ゲーム内でPKしたところで、現実にダメージはないしな~」
「リアルで消したのでは?」
「パパ、そんなことしてたら大事件になってるでしょ」
「あ……あはは。大量殺人になってるな」
お兄ちゃんもパパもママも思い付かないっぽい。でも、猫さんならリアルにも手が届きそうなのよね~。UMAだし。
「運営に通報したってのが、一番無難なやり方なんじゃないか?」
「ああ~。それならアカウントを凍結できるな」
「なるほど。参考になったよ」
正攻法が一番可能性があるね。武器にはならなかったけど、これで答え合わせしてみよっと。
翌日、今日も私は気合を入れて、バグエリアに飛び込んだ。比喩でもなんでもなく、ドリルジャンプで!
猫さんはすぐに見付かったけど、どういうワケか、ドラちゃんの前で物干し竿を低くしたモノの下を、すんごい仰け反って潜り抜けようとしていた……
どういう状況? ドラちゃんの機嫌を取ろうと、猫さんがリンボーダンスしてるってこと? 飼い主の威厳!
「はぁ~~~。猫さ~ん」
「にゃっ!? にゃああぁぁ~~~。失敗したにゃ~」
「にゃしゃしゃしゃしゃ」
猫さん、私のため息まじりの声に驚いて背中を地面につけて、ドラちゃんに笑われる。飼い主、どっちなんだろう……
「まだダークドラゴンの背中に乗れないんですか?」
「そうなんにゃ~。めっちゃ強情なんにゃ~」
「もう諦めては??」
「吾輩が温めていたバハムートのネタを奪われたんにゃから、乗らないことには採算が合わないにゃ~」
「たぶん、向こうも諦めてますって」
諦める前に、単独撃破なんて試そうともしていないと思う。どちらかというと、猫さんが詐欺でプレミアム貸出券を奪ったんだよ。
「あ、そうでした。リハビリギルド作ったの、猫さんだったんですね。聞きましたよ~?」
「吾輩じゃないにゃ~。当時のギルマスの聖女にゃ~」
「建物も資金もリハビリ方法も障害者も、ネロって人が関わっているって聞いたんですけどね~?」
「吾輩の名はネコであるにゃ~」
「他に誰がいるんですか!?」
私にそのおとぼけは通じない。猫さんも諦めて服を着て座ってくれました。正直、裸と着衣、どっちでもいいです。
「今のギルマスににゃんか吹き込まれたにゃ?」
「いえ。聖女様のお孫さんがイロイロ教えてくれたんです。最初、スクショを見せられてネロって言われた時は、すんごい驚いたんですよ~?」
「あっちゃ~。見ちゃったにゃ~」
「ウフフ。カッコよかったじゃないですか」
「にゃろ? イケメンだったんにゃ~。あの頃はモテモテでにゃ~」
「ちょっとは照れたり隠したりしないんですか?」
そっち方面の武勇伝は聞きたくない。でも、あまり武勇伝はなさそう……同じ話を繰り返しているような……
「猫さん、ネロの時代から神出鬼没だったから、本当はモテてないでしょ?」
「うっ!?」
「やっぱりね」
なんて残念な猫。本当にイケメンだったのにもったいない。
「それでお孫さんが会いたいと言っているのですが……」
「にゃんで~?」
「そりゃ猫さんが創始者みたいなモノじゃないですか? イロイロ聞きたいに決まってます。それにスクショを見て一目惚れしたみたいでしたよ」
「……幻滅するから会わないほうがよくにゃい?」
「ですよね~? じゃない!?」
ダメダメ! 猫さんの見た目のせいで間違えたじゃない!!
「聖女様も元気な内に会いたいと言ってるみたいですよ?」
「あぁ~……まだ60代じゃなかったかにゃ? 最後に会った時に、時間ができたらボディビルの大会に出たいとか言ってたようにゃ……」
「元気すぎますけど~~~!!」
ダメだ。猫さんを説得する材料、まったくない。聖女様がムキムキになってどうするのよ~。
「ま、久し振りに会おっかにゃ~?」
「会うんか~~~い!! ゲホッゲホゲホ」
「さっきから叫びすぎにゃよ?」
誰のせいで咳き込んでると思ってるんだ。私は喉が落ち着いたらもう一度ツッコンだのに、「会わないとは言ってないにゃ~」と返されたので、2日連続で膝から崩れ落ちるのであったとさ。
猫さんは聖女様と会うのは了承してくれたが、何故か現在のギルマスだけは外すようにと条件を付けられた。
「ギルマスですよ? 会って顔を繋いでいたほうがいいんじゃないですか? これからのこともありますし」
「たぶんまだ聖女の娘がやってるんじゃないかにゃ? 吾輩、めちゃくちゃ嫌われてるから、会わないほうがいいと思うんにゃ」
「あっ! アイのお母さんですか? アイも嫌っているようなことを言ってました」
「ま~だ怒ってるんにゃ~」
それなら外すべきだと思うけど、何があったか知りたい!
「猫さんが何かしたんですよね?」
たぶん、猫さんがやらかしたはずたもの……
「にゃんで吾輩が悪いと決め付けるにゃ~。吾輩はアドバイスしただけにゃよ?」
「どんなアドバイスですか?」
「聖女の跡を継いでギルマスをやるとか言うから、若いんだから奉仕なんてしんどい仕事をするよりも、ゲームを楽しんだほうがいいとにゃ」
意外とまともなアドバイスだと思うけど……
「本当にそんな言い方だったんですか?」
「えっと……ゲームの中で親の跡を継ぐにゃんて、バカにゃの~? と……」
「だからですよ!!」
「さっき言った気持ちで言ったんにゃ~~~」
その言い方では、伝わるワケがない。若い頃の猫さんって、とことん敵を作るワードセンスなんだよな~……




