063 マーヤさんとお喋り
料理教室は少し失敗したけど、マーヤさんのおかげで楽しく終了。同じテーブルの人と別れの挨拶をしたら、料理人ギルドに併設されているカフェでマーヤさんと一服だ。
「う~ん……大量生産の味」
「あはは。意外と厳しいのね」
ここはプレイヤーが作りすぎたお菓子とお茶を安く出してくれるらしいけど、あまり美味しくない。
「たぶん、師匠にいい物を食べさせてもらっていたから、口に合わなくなってるんです」
「へ~。師匠さんは料理も得意なんだ」
「料理どころじゃないんです……」
猫さんのことを喋る約束をしていたので、ちょっと緊張して喋り始める。
「実は、師匠のことはネットに上げないことやプレイヤーには喋らないと約束して師事を受けているんです。私達が無理矢理頼んだので約束を破れません。というより、私が約束を破って師匠に会えなくなるのが嫌なんです。だから、詳しいことを言えなくてもいいですか?」
私が注意事項を述べると、マーヤさんは軽く頷く。
「うん。わかったわ。カノちゃんは師匠さんのこと、大好きなんだね」
「大好きですけど、彼氏にしたいとかそういうのじゃないですよ? ぬいぐるみを愛でる感じです」
「そんなにかわいいなら会いたくなっちゃうじゃな~い。ウフフフフ」
たぶん私の気持ちは伝わったと思うけど、猫さんごめんなさい。ぬいぐるみにしか見えないの。
「会うのはたぶん無理ですね。私達も偶然見付けただけなので。師匠になってくれたのも奇跡ですから。たぶん人に見付かったら、姿を消すはずです。それでもう、誰にも見付けられません」
「えっと……師匠さんって、UMAなの??」
「本当にUMAなんですよ~~~」
マーヤさん、正解。我が家ではUMA扱いで喋ってます。
「ちょっと前に、この辺りで猫騒動があったの知らないですか?」
「あったわね。みんなこぞって猫、猫言ってたわ」
「それが師匠と私達の出会いです」
「え? あれ、師匠さんだったんだ……空を飛んでるスクショ見たことあるよ?」
「それは師匠の騎獣ですね……たぶん、私達も乗ってました……」
「本当に猫が飛んでたんだ……」
わかります。翼もないのに猫が飛ぶんだもん。バハムートと言いたいけど、これは言えないな。広がったら猫さんに怒られる。
「それで私が出せる師匠の情報なんですけど……」
ちょっと間を置いて、私は切り出す。
「師匠の姿は事故のようなモノです。それがあって、立って歩く猫のアバターになってしまったみたいです」
「凄く貴重なアバターね……」
「はい。中身も恐ろしく希有な存在です。マーヤさんはファーストキングダムって知ってますか?」
「うん。私がPHOを始めたって言ったら、お父さんからファーストキングダムと人斬り以蔵には気を付けろと言われたから。出会った人に聞いたら、恐れられていることはわかったわ」
マーヤさんの父親はファーストキングダムと人斬り以蔵に殺されたのかも知れないね。
「そのファーストキングダムはすでに解散していて、最後に残ったのが、私の師匠こと、ネコさんなんです」
爆弾発言っぽく言ってみたけど、世代じゃないからいまいち響いてません。驚いてほしかったな~。
「ふ~ん……強くて怖い人ってことかしら?」
「その認識で合ってますけど、猫さんはすっごく優しいですよ。あと、なんでもできます。料理も美味しくて、ガディバ風のチョコも作れるんですよ? 私の装備も猫さんに作ってもらいました」
「凄いわね~。ガディバ風のチョコは凄く気になる。どこかで買えたりするの?」
マーヤさんはガディバ風のチョコに食い付いた。私も好きだから、仲間だね。
「第10フィールドにお店があるんですけど、そこに辿り着いても1年待ちらしいんですよ~」
「それじゃあ猫さんに頼むしかないのね……」
「いちおう第1フィールドに密売人がいるんですけど、本店の3倍も高いんです」
「密売人? カノちゃん、大丈夫? 危険なことに巻き込まれてない??」
「師匠に紹介してもらったので……こんな言い方したら、師匠が元締めみたいに聞こえる!?」
最古の薬屋のことも喋りにくいので、全部猫さんのせいにしてもいいかな?
「師匠は古参なんで、古参の知り合いが多いんです。だから貴重なアイテムを売っている店も知ってるんですよ。ちょっとクセが強い人ばかりなんですけどね。さっきまで普通に喋っていたのに、密売人みたいに演技したりとか」
「あ、ロールプレイってのね。1回だけ見たことあるけど、王子様って設定でナンパしてきたのよ~」
「許せませんね。なんか今の時期はナンパ男が多いみたいですから、マーヤさんも気を付けてください」
「あはは。ハル君が助けてくれるから大丈夫だよ」
「お兄ちゃんが一番信用なりません。何かやらかしたら、パーティから追放していいですよ?」
こんなに素敵な女性が、お兄ちゃんとパーティを組んでいることが信じられない。騙されてるとしか思えない。
なので私はお兄ちゃん批判をするけど、マーヤさんから「メッ!」ってかわいく叱られたので、メロメロになる私であったとさ。
それからも猫さんの出せる情報を喋り、お兄ちゃんの愚痴を織り交ぜて楽しい時が流れていたけど喋りすぎた。もうけっこうな時間だ。
「あ、そうだ。カノちゃんはハル君とパーティは組まないの? うち、まだ空きがあるから、入ってくれたら嬉しいかも??」
「お兄ちゃんとはちょっと……」
「そうだよね。家族とはやりにくいよね。無理言ってゴメンね」
「いえ。マーヤさんと一緒ならいつでもウェルカムですよ」
「それはいいね。今度、一緒に遊ぼっか」
「はい! 楽しみにしてますね」
マーヤさんとはフレンド申請をして、料理教室は同じ日を予約して別れた私であった。
ついに友達が1人できた~。うふふん……あれ? お兄ちゃんのパーティーメンバーで4歳上って、友達と言えるのだろうか?
でも、友達にカウントしていいのか悩む私であったとさ。




