061 話し相手
騎獣愛護クランに行ったその日の夕食は、私は騎獣を借りられると嬉しそうに語って……
「猫さんの新しい情報手に入れたよ!!」
いや、あんなに欲しかった騎獣よりも、猫さん。バハムートを単独撃破した話は、お兄ちゃんの目からビームが出たかと思ったぐらい眩しかった。
それとは逆に、パパとママはドン引き。昔戦ったけど、勝てる見込みすらなかったそうだ。
「へ~。そんなに強いんだ」
「ああ。何をしてもあっという間に全滅になった」
「私も2回戦ったけど、すぐに諦めたわ。ファーストキングダムしか勝ったことがないんじゃ仕方ないってね」
「俺達は10回かな? アレはファーストキングダム用に作られた化け物だと噂してたな」
「その噂、事実だったよ」
パパ、ナイスアシスト。猫さんのスクショ話を披露だ!
「「「「あはははははははは」」」」
よし。大爆笑。堪えきれずに笑いながら喋っても、この破壊力。私も死にかけた甲斐があるってものだ。
全員、お腹を押さえて食事が止まってしまったので、しばらく無言でモグモグ。誰かが思い出し笑いで吹き出すから、いつもの倍は食事に時間がかかりました。
「それにしても、猫さんは災難だったな」
パパがお茶を飲みながらそんなことを言ったが、どのことを言ってるのかわからずにみんな首を傾げた。災難が多すぎるのよ。
「ほら、バハムートはファーストキングダム用のボスだったんだろ? それなのにいつも一線引いていた猫さんだけが1人で倒して、スタッフ一同の恨みを1人で背負わされたじゃないか?」
「「「あっ!?」」」
「ひょっとしたら、猫の呪いの話、実は逆なんじゃないか??」
猫の呪いとは、皆の嘆願のおかげで社長が感銘を受け、ネロさんが永久に猫になったいい話風のお話。これが逆ということは、嘆願を逆手に取って、ファーストキングダムの一員のネロさんに運営が恨みをぶつけたことになる。
あの文言からもキレっぷりは異常。バハムートを1人で倒したからには、ファーストキングダムのマスターはお飾りで、本当は猫さんがメンバーを裏で操っていたのではないかと思われたんじゃないかと、家族の邪推が止まりません。
たぶん事実。じゃなかったら、たった1人だけを特別扱いにしないよ。こっちの話のほうが腑に落ちるもん。
「あ、そうだ。私、騎獣愛護クランの会員証貰ったんだ~。ふふん」
続いての話題は私の自慢。やはりみんな知っていて、羨ましそうだ。勝ち組だな。
「もう騎獣手に入れたのか?」
「ううん。調教スキルもまだだし。でも、期間限定でレアな騎獣も借りられるようになったの~」
「マジか……どうやったら会員になれるんだ!?」
猫さんを売ったとしか言えなかったので、そのまま言ったら「猫さん騎獣だったの?」と予想外の返し。そうだ。猫だった。面倒くさいな。
なので情報を売ったと言い直したら、「恩人を売るなんて」と引かれました。うん。言い直すんじゃなかった。それでも人身……猫身売買で引かれるか。
「騎獣愛護クランか~……あそこのマスター、美人なんだよな~」
パパは会ったことがあるのか、とんでもないことを言い出した。ママが睨んでますよ?
「残念ながら、あの人、中身はオッサンだよ?」
「へ~。性格は男勝りなんだ」
「いや、だから、オッサン。猫さんに昔のスクショを見せてもらったけど、正真正銘、角刈りのオッサンだったの」
「か、角刈りの、オッサン……」
「うん。ヒゲもボーボー、毛皮を着てたから、原始人かと思ったわ」
「原始人に、俺は!?」
続きはなんだろう? ママが怖いから、私は撤退しま~す。ごちそうさま~。
後日聞いた話だと、夢を砕かれた上にママにこっぴどく怒られたんだってさ。
翌日も私はパンゲアヒストリーオンラインにログイン。最初は乗り気じゃなかったのに、なんだかんだでハマってしまって皆勤賞だ。
今日の予定は、第2フィールドで調教スキルのゲット! 牧場にいるNPCにお願いしてみると、餌やりとか小屋の掃除させられた上にお金を取られた……こき使っておいて、それはないわ~。
でもでも、これでモフモフを借りられる! スキップで騎獣愛護クランに突撃だ。1人で入るのは緊張したのでモフモフを堪能していたら、ローリーさんが走ってきてくれたけど忙しくないのかな?
「あれ? ネコはどこ? ネコの匂いがした気がするのに……」
「えっと……今日は猫さんと会ってませんけど……」
え? この人、猫さんの匂いがわかるの? そういえば、猫さんもどうして自分がきてるのがわかったのかと叫んでいたな……は? これって、私から猫さんの匂いがしてるってこと!?
「あの……私、猫クサイですか?」
「ええ。プンプンするわよ?」
「うそ!? このゲームって、洗濯とかお風呂とか入らないとダメなんですか!?」
「ああ~……匂いというか、オーラというか、ま、そゆことよ。洗濯とかはしなくても大丈夫だからね。じゃ、私は新しい子に踏まれてきま~す」
変態だ……猫さんが言ってた通りの人だった! あんなに遠くから意味がわからない方法で猫さんの存在に気付くなんて!?
ローリーさんは猫さんがいない私に興味はないのかさっさとどっか行ってしまったので、私はモフモフを堪能しながら騎獣探し。
正直、全部欲しい。騎獣愛護クランに入ろっかな~? でも、マスターが変態か……他のメンバーに聞いてみたら、マスターが変態でキツイと言われました……もうちょっと悩もう。
ということで、今日のところは騎獣だけゲット。猫さんに自慢しにきたら、ドラちゃんとダークドラゴンに挟まれて、どちらも機嫌を取っていた。
「猫さ~ん。きましたよ~?」
「またきたにゃ~??」
卒業してから2日休んで2日バグエリアに出勤してるから、またと言われても致し方ない。猫さん離れがなかなかできないの。
「見てください! 騎獣、借りられました!!」
「にゃ~……結局うり坊にしたんにゃ」
「はい! さっき成獣にして走ってみたんですよ~。さすが騎獣愛護クランですね~。強いのなんの。ダンプカーみたいにモンスターを轢き殺していましたよ~」
私は自慢しまくるが、猫さんはいつも通りのテンションだ。
「まぁそのタイプのは古いから、レベルはマックスにゃんだろうにゃ。でも、頼りすぎはダメにゃ~」
「頼りませんよ~。かわいがってるだけです」
「かわいがるのもほどほどにしにゃさい」
「ええ~? こんなにかわいいのに~??」
「騎獣ばっかり構ってたら、人間の友達ができないにゃ~」
「あっ……」
猫さんの言葉で、現実が戻ってきた。
「てか、卒業してから4日経つけど、話し相手ぐらいはできたにゃ??」
「1人もできてませ~~~ん」
ボッチという事実を……
だって忙しかったんだもん!!




