060 バハムートを1人で倒せた謎
「あぁ~……もうちょっとで死に戻りするところだった」
猫さんのバハムートを取得した証拠を見ただけで笑い死にしかけたローリーさんと私は仲良くポーション飲んでます。マジで、笑ってるだけでHPが減ったの。危なかった~。
猫さんは最初は怒っていたけど、私達が死にそうになっていたから許してくれました。私達が残りのHPに気付いた時には舌打ちしてたけど……
「それにしても、あの噂は本当だったのね。まさか本当にファーストキングダム用のレイドボスだったなんて。大人気ないこと書かれてたし。プッ……」
猫さんの証拠品にスタッフ一同がファーストキングダムにキレている文言が書かれていたのだから、完璧な証拠だ。
「吾輩が一番ファーストキングダムから被害を受けていたのに、酷くにゃ~い?」
「は、はい。プッ……」
確かに猫さんはファーストキングダムの人にサンドバッグにされていたのに、スタッフ一同から「バーカバーカ」とか言われるのはオモロ…かわいそうだ。
「ところでなんですが、ファーストキングダムは運営から嫌われていたのですか?」
「そんにゃ話、聞いたことないけどにゃ~……運営から注意を受けたと聞いたこともないにゃ。ゴウキが隠した可能性は……ないにゃ。馬鹿にゃもん」
「私も噂で聞いただけよ。あの頃のファーストキングダムは強すぎて全てのクランから嫌われてたから、そのせいで何かあったら全てファーストキングダムのせいって言われてたもの」
「言われてたじゃにゃくて、言ってたにゃろ? レア騎獣に出会えないのはお前のせいにゃ~って、直接言ったにゃ~」
「そだっけ? 忘れたわ~」
全てのクランに嫌われていても、ファーストキングダムはそれを覆す力があったなんて、意味がわからない。世界を支配する悪の組織か何かの話ですか?
ローリーさんがファーストキングダムの悪行というか、徒党を組んで襲いかかるクランを撃退していた話をしていたら、猫さんも記憶が蘇ったのか運営に嫌われた予想が浮かんだ。
「そうにゃ。馬鹿クラン共と同じく、ストーリーとかクエストで用意されたボスは、全て力業でクリアーしてたにゃ。アイツらめちゃくちゃにゃ~」
パンゲアヒストリーオンラインでは、多種多様なボスを倒すのは醍醐味のひとつ。単純に強いボスもいれば、謎を解明しないと倒せないボスもいたとのこと。
例えば、大ボスを倒すには4体の小ボスを倒して弱体化させないといけなかったのに、ファーストキングダムの人達は大ボスから挑戦して倒してしまったんだとか……
そういうことが何度もあったので、運営から嫌われていたんじゃないかと猫さんの予想です。私もせっかく準備した物をめちゃくちゃにゃにする人は嫌だな。
「猫さんも協力してたのですよね?」
「いんにゃ。吾輩、ストーリーとかはみんにゃが楽しんで廃れた頃にやってたにゃ。レイドには駆り出されたけど、普通……じゃにゃかったにゃ……」
猫さんの記憶では、ファーストキングダムのレイド戦は脳筋の一言。誰が一番ダメージを与えるかを競っているだけだったんだって。
猫さんはそこには参加せずに、回復役しかしてなかったとのこと。ファーストキングダムでもファーストキングダムの魂がひとつもない猫さんが運営から嫌われているのは、不憫で仕方ないです。
「バハムート戦は、さすがに口を出したにゃ~」
何度も無謀な突撃を繰り返すファーストキングダムに嫌気が差した猫さん。てか、バグ探しを早くしたいから解放されたいってのが一番の理由。
猫さんが回復と補助と指揮を行い、アタッカーしかいないファーストキングダムを手足の如く操れば、バハムート戦は辛くも勝利。
ファーストキングダムは始めて協力する必要性を感じたらしい……脳筋がすぎる。その時点で、何十年やってたんだよ。
でも、この脳筋共をまとめた猫さん、マジ魔王。周回してレアな素材をいっぱい手に入れたと笑ってる猫さんは魔王にしか見えませんでした。
「ファーストキングダムが揃ってやっと勝てるのに、なんでネコは1人で倒せたのよ?」
そこが一番の謎。鬼みたいな脳筋共がまとまって初めて倒せたのに、猫さん1人で倒せるはずがないのだ。
「オッサンが気付いているかどうかしらにゃいけど、バハムート、最初の頃よりちょっと弱くなったんにゃ」
「弱くなった? 最近も戦ったけど、強いままだったわよ??」
「ホント、ちょっとだけにゃ。ファーストキングダムが飽きた頃ににゃ。戦法も複雑だったのが、ちょっとだけ改善されたんにゃ」
「どこがよ~~~」
猫さんの予想では、運営もこのままではファーストキングダムしか倒したことがないボスとなってしまうと思って難易度が下がったとのこと。
ただ、ファーストキングダムを苦しめたバハムートを弱くしすぎると沽券に関わるから、ほんのちょっと弱くしたのではとの予想だ。
「それがにゃかったら、絶対に勝てなかったにゃ~」
猫さんは喋りきったと、お茶をズズズーっと飲んでるけど、私はそんなに落ち着けないよ。
「これ、猫さん1人でファーストキングダムの戦闘力を持っていると宣言してるだけでは?」
「ええ……どうりでクラン総動員してもネコを生け捕りにできないワケよ……」
だって、二十億人の頂点どころか、モンスターの頂点にも君臨してる猫がホッコリお茶すすってるんだもの!
私とローリーさんは顔を見合わせて心の中で会話する。
スタッフ一同の怒りは、猫さんに向けられても仕方がないと……
その後、疲れきった私はモフモフで癒されて、今日のところは手ブラで帰宅。調教スキルがないからプレミアム貸出券使えなかったの。猫さんはダークドラゴンをお持ち帰りしたよ。
「あ、そうだ。猫さん」
別れ際に呼び止めた私は、気になったのに、あの場ではもっと大きな話をしていて流してしまった話を聞いてみる。
「ローリーさん、すっごくいい人で綺麗じゃないですか? それなのに猫さんが嫌っている意味がわかりません。オッサンとか呼んでましたよね?」
そう。猫さんから聞いていた人物像と違いすぎたし、女性にオッサンは暴言でしかないのだ。
「見た目に騙されてるにゃ~。アイツは間違いなくオッサンにゃ。いや、もうクソジジイの年齢かにゃ?」
「いや、女性じゃないですか??」
「だからにゃ。吾輩が初めて会った時は、無精ヒゲの角刈りのオッサンだったんにゃ。いくら整形で顔と体を変えても、その時の記憶があるから女として扱えないにゃ~」
「はい??」
あんなに綺麗な人が、整形美人??
「PHOでは整形できるのですか?」
「うんにゃ。医療系のスキルにマッドドクターってのがあって、無理矢理顔を変えられるんにゃ」
「む、胸は……」
「たぶん、肌の色に合わせたスライムクッションじゃにゃい? 一時期、若い男の間で大流行したんにゃ。理由は聞かなくてもわかるにゃろ?」
「はい……ちなみにどこに行けば買えますか?」
「薬屋に頼めば用意してくれると思うんにゃけど……聞かなかったことにするにゃ~」
「ああっ!?」
猫さんに聞くことじゃなかった!?
急に巨乳になっていたら、使っているのはモロバレ。せめて猫さん以外の人から情報を手に入れたらよかったと思った私だったが、見せる人が猫さんぐらいしかいないことにも気付いたのであったとさ。




