059 バハムートの取得条件
ローリーさんから猫さんの騎獣の取得条件を聞き出せと脅された私は(正確には賄賂をいっぱい貰えると聞いたけど断ろうとしたのに本音が口から出てしまっただけ)、拗ねてるドラちゃんを必死に宥めている猫さんに忍び寄った。
「どうか、ドラちゃんの取得条件をローリーさんに教えてあげてください! お願いします!!」
そしてジャンピング土下座。猫さんを説得する材料なんて持ってないもん。誠心誠意、お願いするしかない。もしくは、JKに土下座させている罪悪感を植え付けるしかないの! プレミアム貸出券のために!!
「にゃ? にゃんなの薮から棒に……」
でも、顔を上げたら猫さんは超嫌そうな顔。まさかJKの土下座が通じないとは!? 巨乳で美人のローリーさんが女を使って失敗した時点で気付くべきだった!?
「何卒、何卒……」
「買収でもされたにゃ? 会員証とかで……」
「はい……あと、プレミアム貸出券3枚で……お願いしますぅぅ」
「プレミアム貸出券ってのは初耳だにゃ。レアな騎獣も貸してくれるにゃ??」
猫さんは騎獣愛護クランがやっていた貸出券自体は知っていたけど、レアな騎獣は借りられないから興味なかったみたい。しかし、プレミアム貸出券は、クランマスターのローリーさんの権限で全ての騎獣を1ヶ月貸してくれる。
レア騎獣まで含まれていると言ったら、まさかの譲歩案が出た! なので一字一句漏らさずに聞き、ローリーさんに伝え、返事を貰って猫さんの下に戻る私。
「プレミアム貸出券は猫さんと私の5枚は了承してくれましたけど、取得条件を先に聞かないと渡せないと、前払いは却下されました」
「前払いが譲れない条件で、それで了承しにゃいと教えないと伝えてくれにゃ」
「はあ……」
何この伝書鳩! すぐそこにいるんだから、2人で話し合ってよ!!
私はプレミアム貸出券が2枚増えたので思っていることは口に出さず、2人の伝書鳩を続けるのであったとさ。
結局のところ、3往復伝書鳩を続けたら、ローリーさんが業を煮やして猫さんに突撃。「ギャーギャー」「にゃ~にゃ~」やりあって、ローリーさんが折れることとなった。
やっぱり私の伝書鳩いらなかったよね?
「さあ、包み隠さずバハムートの取得条件を教えなさい!」
猫さんはプレミアム貸出券を5枚、私は会員証とプレミアム貸出券を5枚受け取ったら、ローリーさんが吠えた。
「その前に予言しておくにゃ。吾輩が取得条件を教えたら、お前は必ず『できるか~!』と叫ぶにゃ」
それなのに猫さんは注意事項をプラス。できないのに報酬を上乗せしたの!? 私は嬉しいから、まぁいっか。
「できるかどうかは、私が決めるわ。いえ、必ずバハムートを手に入れてやるから、さっさと言いなさい」
ローリーさんは自信満々。バハムートを倒せるクラン5組に入ってるんだから、私も不可能ではないと思う。執念も凄そうだし。
「わかったにゃ。バハムートの取得条件は……」
私とローリーさんは、同時にゴクリとツバを飲み込んだ。
「ソロでレイドをクリアーするだけにゃ。そしたらバハムートの卵が手に入るにゃ~」
あ、それだけなんだ~……え? 20億人のプレイヤーがいて、たった5組のクランしかクリアーできていないレイドボスを1人で?
あの、伝説のクラン、ファーストキングダム対策で運営が意地悪した最凶最悪のレイドボスを? それは~……
私が叫びたい衝動に駆られたが、口を手で力任せに押さえながらローリーさんを見たら……
「で……ででで……」
叫びそう。必死に我慢してます。一文字目が何度も出てます。わかる。わかるよ?
「「できるか~~~!!」」
私まで我慢できずに、同時に叫んでしまうのであった……
「ほ、本当に1人でバハムート倒したの?」
しばらく私達は荒れに荒れていたけど、正気を取り戻したローリーさんは猫さんに問い質した。
「うんにゃ。失敗時間はにゃんと千時間超え。成功した時は、12時間もかかったにゃ~」
千時間というと、1日は24時間だから……41日間も!? そして1日の半分も休まず戦い続けたの!?
「そ、それ……証拠とかある??」
「動画は長いから消したかもにゃ……卵を取得した時のメッセージはムカついたから、スクショは今も残してあるにゃ~」
「スクショでいいわ。見せて……」
ムカついたなら消せばいいのに、なんで取ってあるんだろう? 記念かな?? ドラちゃんとの出会いの瞬間なんだから、残すのは当たり前だな。
そんなことを思っている時もありました。私達がスクショを見ると……
『なんで1人で倒せるんだよ! おかしいだろファーストキングダム!? そんなクソムカつくお前には、バハムートくれてやるよ! もうお前ら用のボスなんて用意してやらねぇからな! バーカバーカ!! by、PHOスタッフ一同。P,S,この文言はネットに上げられたら困るから自動的に消去されます』
ブハッ! 苦労してクリアーしたのに、こんな子供みたいなこと言われたらムカつくのはわかりますけど、笑いが止まりません。立ってられません。涙も止まりません。
ローリーさんは息が止まった可能性があります。ピクピク痙攣してます。私も今にもそっちに行きそうです。
「だから教えたくなかったんにゃ~~~……」
私達が悶え苦しんでいたら猫さんの嘆き声が聞こえたけど、たぶんローリーさんも私と同じことを思っていただろう。
墓まで持って行けよ、と……




