048 始まりの町散策
ロッコさんと話をしたことで、昨日の怒りというかモヤモヤも収まった。今からが私の伝説の始まりだ。
嘘で~す。友達作って楽しくワイワイしたいだけで~す。お洒落なカフェでお喋りしたいな~。やっふぅ!
というワケで、どこに行こう? ヌイーダの酒場が一番手っ取り早いけど、どこにあるかわからない。料理人ギルドのお料理教室も覗いてみたいけど、どこにあるかわからない。
私、PHO、もう1ヶ月近くもやってるのに、始まりの町のことすら何も知らないよ!?
猫さんに聞きに行こうかと思ったけど、昨日卒業したばかりなので会いづらい。それに元々1人が好きなんだから、今ごろ羽を伸ばしてコサクしてるはずだ。しばらく猫成分は我慢。
ロッコさんに聞くにも、さっき別れたばかりだから聞きにくい。今日の予定は町の散策に決めた。
足取り軽く、ログイン場所に戻ってきた私は、そこでキョロキョロ。次々と人が湧いてきて、1人で歩いて行く人や、待ち合わせをしていた友達と合流している姿がそこかしこにある。
普通の人はどこに向かうのかと眺めていたら、大きな広場がある方向。そこは露店が多く集まっているから、私もよく利用する。とりあえず、女性パーティの跡を付けてみた。じゃなくて、同じ方向に向かってみた。
広場に着くと、活気のある声。プレイヤー同士が喋る声や商談する声が聞こえる。
ここでもキョロキョロ。歩いて食べられるリンゴアメをゲットしたけど、お財布がヤバイ。先に金策を考えなくては。でも、売れる物、ヤバイ物しかないのよね~……生産者ギルドなら、目立たないように買い取ってくれるかな?
目的変更。でも、生産者ギルドもどこにあるかわからない。ガックシ肩を落としたところで、私に救世主が現れた。
「無料案内所?」
広場の端のほう、やや目立たない場所に、ピンクや黄色を使った看板が目に入ったのだ。私はこれ幸いと、そのテントに入った。
「らっしゃっせ~……女? あ、アルバイトしたいのかな~? 君ならナンバー1も夢ではない! 給料もわんさか稼げるよ~??」
そこには、ロッコさんぐらい怪しいサングラス男。入るなりスカウトされたけど、なんだこいつ?
「あの……案内所って看板があったのですが……」
「あぁ~……そっちか。よく間違われるんだよな~。俺たちが案内するのは、そういう店だ。若い女がくる場所じゃねぇ。ま、働きたいなら、いつでも歓迎するぞ。これ、チラシと名刺だ。連絡待ってるな」
「はあ……」
どうやら私は場違いな場所に入ったらしい。なのですぐに出て、近くにあったベンチでチラシを読んでみた。
「あう……そういうことか……そんな所に入ったなんて恥ずかしい……」
チラシには、性的なサービスのお店が載っているのだから、追い出されるのは当たり前。てか、しつこくされなかったから、あのサングラス男はいい人だったのだろう。
ちなみにサービス内容は、膝枕したりおんぶされたり狭い個室で隣に立つだけだったり。元々ゲーム内コンプライアンスで性的なことはできなくなっているから、ギリギリを攻めてるんだとか……
給料はいいんだけどね~……ダメダメ。ママに怒られる。
チラシをよく見ると、地図付き。生産者ギルドが目印として書かれていたのでラッキー。とか思ったけど、今いる場所の反対側じゃん!
そちらにトコトコと歩いて行くと、大きな建物に大きな看板。私の目、節穴だった……何度も目の前通っていたよ!
自分が悪いのにゲームのせいにしたら、持ち物の確認。第4フィールドの物を売るのだから、言い訳も準備だ。
「あの~……買い取りってしてますか?」
「はい。承っております。ご案内は必要でしょうか?」
「あ、はい。お願いします」
中に入ると広いエントランス。早々に目的の場所を探すのを諦めて、受付のお姉さんに聞いてみた私。あ、この人、NPCだ。まさか過去のプレイヤーだったり?
受付NPCは私がジロジロ見てもニッコリ微笑むだけ。凄く丁寧な口調だから、なんか負けた気分になる。私も社会に出たら……
「買い取りカウンターはこちらになります。プレイヤーの方をご希望でしたら、あちらへ。NPCをご希望でしたら、あちらとなります」
「え? えっと……プレイヤーとNPCとかって、どう違うのですか?」
「NPCの場合は、現在の相場で買い取りを行い、プレイヤーの場合は交渉可能となっています。貴重な素材をお持ちの場合は、プレイヤーがお勧めですね。在庫が少ないと買い取り価格が上がりますから」
「そうなんですね。ありがとうございます」
受付NPCに礼を言ったら、私は買い取りNPCの下へ。ここは一択でしょ!
案の定、第4フィールドの素材を見せても驚きも詮索もされない。1個辺りの単価は高いから、全部売れば10万ゲアを超える。私、なんて場所でレベリングしてたんだろう……
いくらNPCでも足が付きそうなので、3分の1を売却。儲かったと笑顔で振り返ったら、男性プレイヤーが私の全身を舐めるように見てきた。
「あ、あの……何か御用でしょうか?」
近い。近いしなんか言え。黙ってると怖いんだよ。
「あ、いや、悪い。NPCに買い取りカウンターを教えてもらっているのに、なんで第4フィールドの素材なんて持ち込んでるのかと気になってな~。装備もプレイヤーメイドなのにたいした素材使ってないし……君、どうなってるんだ?」
どうやら私、怪しかったみたいです。今まで怪しいと思った人達、謝罪します。




