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神ゲームの最古参~初心者JKの師匠は猫さんです~  作者: ma-no
二章 猫の訓練と卒業

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044 薬屋の決意


 新しい剣を手に入れた私はホクホク顔。魔法剣を使うと耐久値の減りが早いからまだ一手間必要らしいが、木剣を卒業できるからだ。木剣のほうが強いけど……


「あと、この子、チョコ中毒みたいでにゃ。ディスィープル・ドゥ・シャのチョコって密輸してないにゃ?」


 猫さんの聞き方は気になるが、第10フィールドまで行かなくては販売されていないチョコが手に入るなら、ジャンキーと呼ばれるぐらい我慢する。

 ちなみにディスィープル・ドゥ・シャってのは店名らしいので、私の頭に深く刻み込みました。


「へっへっへっ。ちょうど昨日、いいブツが手に入ったところだ。だが、お上に賄賂配りすぎたせいで少々値が張るがな」


 ロッコさんまで喋り方が変わった。あ、ロールプレイってヤツか。知り合いの前でやるのって恥ずかしくないのだろうか。

 そんなことを思っていたら、ロッコさんはテーブルの上にアタッシュケースを乗せ、開いて中身を見せる。


「にゃ~……このピンクの新作かにゃ?」

「ああ。イチゴから取れる新種のヤクが、女共を興奮状態にするんだ」


 2人はチョコの話をしています。7種類のチョコが1列ずつ並んでキラキラ光ってるので、私には宝石箱みたいに見えます。


「んじゃ、吾輩(わがはい)は全種類3個ずつ貰うにゃ~」

「さすがトッププレイヤー。目利きが違うねぇ」


 私も買おうと口を開こうとしたら、たっか……猫さんが私に提示した額の10倍!? ディスィープル・ドゥ・シャの3倍って!! 猫さんは札束を無造作に投げるし!?


「ちょ、ちょっとロッコさん、これは高すぎるんじゃないですか?」

「さっき言っただろ。このヤクを密輸するのは命懸けなんだよ。んなこともわからねぇケツの青いガキはけぇれけぇれ」

「んなっ……猫さ~~~ん」

「こういう設定にゃんだから、まともに受け取らなければいいだけにゃ~」

「設定言うな。冷めるだろ」


 悪意ある言葉に私が涙目になると、猫さんがキチンと値段設定を教えてくれる。そもそもこのチョコを販売しているディスィープル・ドゥ・シャとは、PHOトップショコラティエがやってるお店で、1年待ちの順番待ちが発生してるとのこと。

 その人気が転売に繋がり、ロッコさんの手元に届いた時には元値の倍以上になっていたらしい。つまり、賄賂発言は、転売のことだったんだね。


「てか、初めてのお客にゃんだから、サービスしてやれにゃ~」

「チッ……ネロが目を付けてるなら上客になるか。今回だけだぞ? 好きなのみっつ選べ」

「あ、ありがとうございます!!」

「へっ。こんな副作用の強いブツを使うヤツは、定期的に大金を落としてくれるからな。礼なんていらねぇさ」


 チョコの話です。猫さんに聞いて、食べたことのない味をみっつ選びました。猫さんは新作を研究して再現するらしいです。味見に呼んでもらうつもりです。



「そんじゃあ、こんにゃもんかにゃ?」


 薬屋で普通に売っているヤク……じゃなかった。補助アイテムも若干の割り増し価格(並ぶ時間の節約料を上乗せした適性価格)で私が買うと猫さんは立ち去ろうとしたが、ロッコさんから待ったがかかった。


「にゃんか面白いネタでもあるにゃ?」

「ああ。とっておきのデカイネタだ。これはまだ誰も知らねぇぞ」


 ロッコさんがニヤリと笑うと、猫さんは慣れたように腰を下ろして札束を3個テーブルに置いた。いつもこんなやり取りしてるんだろうね。てか、ステータス画面から送金できるのに、なんで現金でやり取りしてんだろ?


「今年いっぱいで店を閉めることにした」


 私、たぶん、驚愕の表情をしてると思う。PHO最古の薬屋が目の前で閉店宣言しているのだ。新人の私が聞いていい話ではないはずだ。


「あ、そうにゃの?」


 それなのに猫さんは軽い。軽すぎるよ。


「ちなみに理由はにゃに?」

「最近、記憶がな~……完全蘇生薬もレシピを見なくちゃ作れなくなってしまった。レシピ見ながらでも失敗する日が来るとは……」

「にゃはは。ボケたんにゃ。それはご愁傷様にゃ~。にゃははは」


 そして笑うなよ。酷すぎるでしょ。


「ま、そういうワケだ。キッパリやめる」

「うんにゃ。お疲れにゃ~」


 猫さ~ん! 1回ぐらい引き留めようよ!


 このままでは猫さんは帰ってしまうと悟った私は、黙ってられずに話に入る。


「あの、何も知らない私がこういうのはなんですけど、お店は残せないのですか? あんなに行列ができるのですからもったいないと思うんです。そうしたら、ロッコさんも時々様子を見にログインとかできると思うんですよね」

「残したいのは山々なんだが、弟子がいない。こんなことなら、ネロみたいに弟子を仕込んでおくべきだったな」

「弟子がいればいいのですね? 生産者ギルドの人に相談してみてはどうでしょうか?」

「それは俺も考えた。だが、コンセプトを引き継いでくれるかどうか……次はやってくれるかもしれねぇが、その次はどうなるか……」


 どうも生産者ギルドの人は、歴代のギルドマスターで方針が変わるらしい。ここもリアルと一緒なんだね。プレイヤーファーストの人もいれば、銭ゲバの人もいるんだ……


「変なヤツに引き継がれるよりは、閉めてしまったほうが後顧の憂いもないだろ?」


 ロッコさんは私の質問に答えたが、目は猫さんに向けている。私も猫さんに助けを求めるように見た。


「にゃ? 吾輩に意見求めてるにゃ??」


 誰がいるんだ。ズルッとこけたじゃない。


「なんとかしましょうよ! 猫さんの人脈に生産職の人はいないんですか? 猫さんの知り合いなら、凄い人いるでしょ??」

「そりゃいるけど、変人ばかりにゃよ?」

「普通の人でいいんですよ~~~」


 猫さんの知り合い、ちょっと興味有り。ロッコさんだって変人だし……


「てか、残したいにゃら残せばいいじゃにゃい?」

「だからですね。残すには人がいないって話をしてますよね?」

「だからにゃ。人間じゃなくても残せるじゃにゃい?」

「……どういうことですか?」

「そんな方法あるのか?」

「PHOの退会手続きに書いてるにゃ~」


 全員でステータスボードを開いて退会手続きを読んでみると、最後のほうに本当に書いてある!

 その方法とは、プレイヤーのアバターの相続関連と、寄付と買い取り。相続は弟子にお店やアイテムを引き継ぐことだから今は関係ない。


 必要な情報は寄付と買い取り。それなりの功績を残したプレイヤーなら、NPCノンプレイヤーキャラクターとしてPHOが続く限りアバターを残せるんだって!!


「てっきりこれを読んだ上で閉めると言ってると思ってたにゃ~」

「いや、普通のヤツは、こんなところまで読み込まないぞ?」

「そうにゃの? 普通、暇潰しで読むものだと思ってたにゃ」

「普通、必要に迫られてだと思います……」


 猫さんとロッコさんの情報網にも、NPCになったプレイヤーはいないということは、誰も読んでなかったんだね……

 あ、10年前に変更があったんだ。つまり猫さんは、何回か読み返しているってことか……


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